近年、あらゆるシーンでウェルビーイングという言葉を聞く機会が多くなりました。政府による働き方改革の推進の影響を受け、ビジネス界でもウェルビーイング経営という用語が普及しました。この記事ではウェルビーイングを構成する要素の説明をはじめ、ウェルビーイング経営のメリットや事例などをご紹介いたします。
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【主なトピック】
【こんな方におすすめ】
ウェルビーイング(Well-being)とは、広義には身体・精神・社会との関りが持続的に良好な状態であることを意味する概念です。ウェルビーイングという言葉が始めて使用されたのは1946年の世界保健機関(WHO)設立時です。前文の「健康」の定義を説明する際にwell-beingという言葉が使われ、普及し始めました。もともとウェルビーイングは、社会福祉・医療・心理などの野で使用されている用語だったのですが最近では政府による働き方改革の推進や価値観の変化などを背景にビジネス界でも用いられることが多くなりました。
ただ、ウェルビーイングには定訳がなく、国際的に著名な心理学者マーティン・セリグマン博士によると厳密には、ウェルビーイングとは「構成概念」だそうです。ウェルビーイングは、それ自体が実存することはなく後述する五つの要素、PERMAを測定することによって表すことができます。
「構成概念」は、普段馴染みのない言葉なので少し分かりづらいかもしれないので、気象学の「天気」を例にして考えてみましょう。天気はそれ自体、自ずと実存するものではありません。天気には気温、湿度、風速、気圧などの測定可能な要素が関係しており、これらの各要素を測定することによってのみ、全体像を把握することができます。
ウェルビーイングも天気と同様に、単体では表現することはできず、紐づいている要素の値を測定することで測定します。
ウェルビーイング理論における、天気でいう気温や湿度などの役割を果たす5つの要素は以下の通りです。
エンゲージメントについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
これら五つの要素は頭文字を取って「PERMA(パーマ)」と呼ばれています。どれも重要な要素に見えますが、どれ一つとしてそれ単体でウェルビーイングを定義することはできません。人生の選択はこれら五つの要素を最大化することによって決まると言われています。
セリグマン博士によると、ウェルビーイング理論においてポジティブ心理学が目指すところは「自分の人生と地球上の持続的幸福の量を増やすこと」だそうです。一時的な個人の満足度の値が重要視される従来の幸福理論とは異なり、ウェルビーイング理論では持続的(Flourished)な幸福を追求します。
PERMA理論以外にもウェルビーイングを構成する要素は存在します。アメリカに本社を置く世論調査企業のギャラップ社は世界150カ国における調査の結果、PERMAとは異なるウェルビーイングの5つの要素を導き出しました。その内容は以下の通りです。
これらの5つの要素は、国籍や信仰、文化などのバックグラウンドを問わず当てはまると言います。前述したPERMAとは利用目的が異なるので単純比較することはできないので注意しましょう。
ギャラップ社の世論調査は 世界幸福度ランキング(World’s Happiness Report) にも利用されています。世界幸福度ランキングとは、2012年から国連の持続可能な開発ソリューションネットワークSDSNが米国ギャラップ社の収集データを元にまとめているレポートです。各国の① 一人当たり国内総生産(GDP)、② 社会保障制度などの社会的支援、③ 健康寿命、④ 人生の自由度、⑤ 他者への寛容さ、⑥ 国への信頼度 の6項目基準に幸福度を数値化しています。
レポートによると、2020年度の日本の幸福度ランキングは62位でした。日本のランキングは2018年は54位、2019年は58位、2020年は62位と年々後退傾向にあるのがわかります。一方で1位はフィンランド、2位はデンマーク、3位スイスと上位は北欧諸国が多く並んでいます。
ただ、こちらのランキングだけをみて一概に日本のウェルビーイングが低いとは判断できません。例えば、日本で評価が低い項目は「寛容さ」なのですが、寛容さは1ヶ月以内に寄付をしたかどうかが設問になっており、寄付する習慣があまりない日本では加点しづらいです。他にも評価軸に主観満足度があげられますがこちらは、セリグマン博士が指摘していた通り、一時的な感情に影響されやすいので正確とはいえないという意見も存在します。
単一で持続しないその瞬間の幸せを意味する「ハピネス」と持続的な幸せを意味する「ウェルビーイング」の定義をきちんと区別する必要がありそうです。
ウェルビーイングについて深く学びたい方に向けてウェルビーイングに関する本をご紹介します。
本書は、先ほどご紹介した国際的に著名な心理学者のマーティン・セリグマン博士の著書です。前述した、PERMAの概念を提唱したのもセリグマン博士であり本書は 持続的な幸せを手に入れるために役立つ1冊 だと本人が言っています。
セリグマン博士によると従来の幸福理論は幸せに対して最低限の意味しか付与しない「明るい気持ち」や「エンゲージメント」などに偏りすぎているので不備があると指摘しています。また、その瞬間の「気分」によって大きく左右される「人生の満足度」が幸せを測定する際に特別扱いされすぎていることも指摘しています。
それを踏まえたうえで同氏は前述したPERMAを提唱し、持続的幸福度を増大させることをポジティブ心理学の目標 としています。
【参照文献】『ポジティブ心理学の挑戦 “幸福"から“持続的幸福"へ 』マーティン・セリグマン (著)
本書はウェルビーイングを実現するためのテクノロジーのあり方や向き合い方を考える際に役立つ1冊となっています。著者は心という数値化できないものをITがどのように扱えばよいのかと疑問に思う者にヒントを与えてくれます。
近年ではスマホ中毒などの問題が深刻化し、デジタルウェルビーイング という言葉も話題になっています。デジタルウェルビーイングとは個人がウェルビーイングな状態を達成するためにテクノロジーを使用するということです。Android端末は「デジタルウェルビーイング」機能搭載が必須になったりと、GoogleやAppleなどの大手IT企業を筆頭にデジタルウェルビーイングを実現する取り組みが盛んになっています。
本書では、技術者たちが人のウェルビーイングを高めるテクノロジーを設計する際、基盤となる考えを、心理学・神経科学の研究結果をもとに提示しています。ウェルビーイングを高めるための技術設計や開発を行うポジティブ・コンピューティングの分野に携わる技術者にとっては必読書でしょう。
【参照文献】『ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術』ラファエル・A・カルヴォ&ドリアン・ピーターズ(著)
他にも以下のようなウェルビーイングにまつわる本を参考にしてください。
ウェルビーイングの意味や背景がある程度理解できてきたのではないでしょうか?ここからは ビジネスでウェルビーイングの概念を導入するウェルビーイング経営(健康経営) についてご説明いたします。
ウェルビーイング経営(健康経営)とは、戦略的に従業員等のウェルビーイングを保持・増進する取り組みが企業の収益性を高める投資であると捉える 考え方です。
では、一体なぜウェルビーイング経営(健康経営)に力を入れることが会社にとって良い影響をもたらすのでしょうか?
200以上の論文をレビューしたアメリカの論文では、幸福度が様々な観点の「成功」に繋がっていることを示しています:
他にも、バランスト・スコアカードを使用したウェルビーイングと経営目標の関係性について説明した下の図をご覧ください。
出典元:川上 憲人, 「ここからはじめる 働く人のポジティブメンタルヘルス」, 大修館書店, 2019/5/25
この図から、ウェルビーイングは全ての経営目標の根幹に位置しており、全ての経営目標に影響を与える事がわかります。ウェルビーイング経営を取り入れることで従業員のモチベーションやチームワークが向上し、顧客満足度 (Customer Success) や収益の向上に繋がるという点は注目に値します。
従業員をウェルビーイングな状態に保つことの重要性は理解できたかと思います。ここではウェルビーイング経営がうまく取り入れられている企業の事例をご紹介します。
企業のウェルビーイングに対する投資の代表例として挙げられるのが、「働きがいのある会社」ランキング1位を二度(2021年度2位)獲得している セールスフォース・ドットコム です。同社のマネジメント層は「いまからエンプロイー・エクスペリエンスに投資しなければ、10年20年先はもっと深刻な人材不足に陥り、投資しない企業は淘汰される」と指摘しています。
クラウドアプリケーション及びクラウドプラットフォームの提供をするセールスフォース・ドットコムは一般的に企業で人事部に位置する部門を「エンプロイー・サクセス部門」として設置しており、カルチャーとテクノロジー を上手に使いメンバー一人一人のウェルビーイングを高い水準で保つ取り組みがなされています。同社のアメリカ本部の採用ページを見てみると一番上に “You’ll change jobs. Will the job change you?”(あなたは会社を変える(転職する)、会社はあなたを変える?)という力強いキャッチコピーが表示されます。ここからわかる通りセールスフォース・ドットコムは従業員のウェルビーイングを第一に考えて経営していると見受けられます。
例えば、新入社員のオンボーディングの際はカルチャーやコアバリューを理解するためにかなりの時間を割くそうです。90日間の導入研修の最後には必ず「Becoming Salesforce」というボランティア活動に参加します。ここでの活動は社会貢献につながるだけでなく、チームビルディングにもなりますし、なにより幸せな気持ちになれるそうです。これはPERMAでいう「ポジティブ感情」や「関係性」、「意味」などを高めている良い例です。
他にも、テクノロジーであらゆるデータを可視化することで信頼関係を築くことに着力しているそうです。各国の拠点にいる5人以上の部下を持ったマネジャーのエンプロイー・サーベイのデータはすべて公開されており、それぞれがマネージャーとしてどのような評価を受けているのかがわかるようになっています。毎年行われているキックオフミーティングの内容も録画されており、誰でも平等に情報にアクセスできるようになっています。これにより、それぞれの従業員が何故仕事に取り組むのかが背景から理解でき、仕事に対するワクワク感が増え、「エンゲージメント」や「達成感」の向上に繋がります。
このように「働きがいのある会社」に堂々と上位に名を残すセールスフォース・ドットコムはあらゆる方面から従業員のウェルビーイングを向上させる取り組みを取り入れています。
日本の大手総合スポーツ用品メーカーである株式会社アシックスは経営トップのもと、「ASICS Well-being体制」によって従業員のウェルビーイング向上を推進しています。同社は経済産業省と東京証券取引所が主催する「健康経営銘柄2020」に2年連続で選定されました。
株式会社アシックスでは「ASICS Well-being survey(調査)」の結果をもとに課題分析を行い、健康経営にいかしています。たとえばセミナーやイベントを実施した後にデータを数値化し、ウェルビーイングの推移を見える化しています。
同社では在宅勤務の長期化よる健康状態の変化を確認するためのアンケートを実施した結果、回答者の54.4%が「運動する時間/運動量が減った」と答えたそうです。この結果をふまえ、社員限定のSNSコミュニティ「#STAYHOME」を立ち上げ、健康や働き方に関する情報を発信しているそうです。
他にも、自宅でできる簡単な筋力トレーニング動画『ASICS HOME CHALLENGE「在宅筋務」』の紹介に加え、社員向けのオンライントレーニング「ASCオンラインフィットネス」の提供を、4月末から継続的に行っているそうです。
株式会社アシックスは、フィジカルウェルビーイングを中心に健康経営を実施している企業の良い事例 です。身体のウェルビーイングを中心に向上し、結果的にPERMAのレベルも向上 するのでしょう。
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ここまで、ウェルビーイングの定義や構成要素、ウェルビーイング経営の事例などをご紹介してきました。しかし、従業員のウェルビーイングを高める取り組みを実施しようとしても、各従業員のコンディションを定性的に測ることは難しく、対策を打ち出したとしても、それは当て推量であり、打ち手の効果を測ることもできません。
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以上、研究に基づいたウェルビーイングの意味やビジネス界でのウェルビーイングの使われ方などを事例を通してご紹介しました。
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【参照論文】Lyubomirsky, S., King, L., & Diener, E. (2005). The Benefits of Frequent Positive Affect: Does Happiness Lead to Success? Psychological Bulletin, 131(6), 803–855.
【参考文献】ポジティブ心理学の挑戦 “幸福"から“持続的幸福"へ
【参考文献】川上 憲人, 「ここからはじめる 働く人のポジティブメンタルヘルス」, 大修館書店, 2019/5/25
【参照サイト】社員の9割が「知人に勧めたい会社」セールスフォース流、人材投資の全て
【参照サイト】2021年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング|働きがいのある会社研究所(Great Place to Work® Institute Japan)
【参照サイト】 在宅勤務における心身の健康サポートも実施 「ASICS WELL-BEING REPORT 2020(ASICS 健康白書)」を公開 | 株式会社アシックス コーポレートサイト