見える化とは?組織の業務改善・環境づくりのために取り組むべきこと

最終更新日 : 2023/01/27
職場環境リモートワークマネジメントマネジメントコミュニケーション

ビジネスシーンでよく使われる「見える化」という言葉。 目に見えないものを、目に見える状態にするという意味では、「可視化」と同義であるように思われますが、厳密には異なる目的で使い分けられていることが多くあります。
この記事では、組織として業務を「見える化」することの意味や得られるメリットから、「見える化」を実現するための手順、そして実践のヒントとなる導入事例まで“見える化とは何か?”をわかりやすく解説します。

本記事のサマリー

  • 「見える化」とは、仕事における課題や業務内容・業務指示を明確に目に見える状態にし、業務遂行の仕組みを作ることである
  • 「見える化」の目的は共通認識を持つことによる業務効率化だが、「可視化」の目的は現状把握であり「見える化」の前段階で行うことである
  • 見える化することは、幅広いビジネスシーンにおいて業務の効率化や業務改善につながる
  • 組織として「見える化」を実現するには、メンバーのイニシアチブを取りながら準備を進めることが重要である
  • 組織内の共通認識や仕組みを根付かせるためには、「わかりやすさ」にこだわり「現場の作業負荷をあげない」よう配慮することが大切である
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目次

「見える化」とは?言葉の意味

「見える化」の言葉の意味

「見える化」とは、仕事における課題や業務内容、または業務指示を明確に目に見える状態にすることを表わす言葉です。

古くはトヨタの自動車製造ラインの現場で実施されている“目に見える”生産管理が「見える化」の言葉の起源と言われています。まずは、トヨタで実施されている「見える化」を活用した、有名な生産管理方法の事例を2つご紹介します。

アンドン方式

トヨタの製造ラインでは、異常が発生すると「アンドン」と呼ばれる電光表示盤に表示され、関係者が迅速にトラブル対応にあたることができるようになっています。

機械が異常などで停止した時には「赤」、工具交換や品質確認が必要である時には「黄」、機械の調整操作中には「白」、というように機械の状態により「アンドン」には異なる色が点灯します。点灯する色を見れば、関係者は皆、機械の稼働状況や必要な作業が一目でわかるという仕組みです。

かんばん方式

トヨタでは、“何の部品が、いつ、どれだけ必要か”を記す「かんばん」という管理ツールが活用されています。

後工程が前工程へ部品を“引き取りにいくタイミング”と“引き取る数量”が明記された「引き取りかんばん」、“生産量”や“生産時期”が明記された「仕掛けかんばん」など、次工程への指示を札に記載し生産ライン上での各工程で回していきます。

そうすることで、生産の停滞や無駄を防ぎ、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ造る/必要なだけ運ぶ」というジャスト・イン・タイム生産を実現しているのです。

このように、トヨタで昔から実施されている「見える化」の仕組みは、決して複雑なものではありません。むしろ、作業者が業務にあたるうえで必要な情報がひと目でわかることに重きが置かれていることがわかると思います。

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「見える化」と「可視化」の違い

「可視化」の言葉の意味

「見える化」とよく似た言葉に「可視化」という言葉があります。

「可視化」とは、人の目には見えない事象・現象を、映像や表などにして分かりやすく目に見える形にすることです。英語で視覚化の意味を持つ「ビジュアライゼーション(visualization)」という言葉を使われることもあります。

ビジネスシーンにおいては、「顧客ニーズ」「顧客満足度」「組織課題」のほか「従業員のモチベーション」などが可視化の対象として挙げられます。これらはあくまでも一例ですが、ビジネスシーンで「可視化」をする目的は、現状把握のためであることが多いでしょう。

例えば、漠然と「メンバーのモチベーションをあげたい」と思っていても、どのような打ち手が有効なのかはわかりません。“メンバーのモチベーションの源はどこにあるのか” ということを可視化することで、現状不足しているモノ・コトを補うためにどんな打ち手を打つかを決めることができるのです。

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「見える化」と「可視化」は何が違う?

目に見えないものを、見える状態にするという意味では「見える化」と「可視化」に違いはありません。しかし、ビジネスにおける多くの場面では、「見える化」と「可視化」は、異なる目的のために実施します。

可視化の目的
→現状を把握し課題の打ち手を考える

見える化の目的
→共通認識を持つことで業務を効率化する

このような目的を果たすためには、準備するべきものが異なります。
「可視化」においては、課題を洗い出して打ち手を考案できる状態にできるかが重要なポイントであり、「見える化」においては、現場の人間が迷いなく動けるかが重要なポイントになります。

前述のトヨタの事例にあるように、「見える化」とは仕組みを作ることです。「可視化」は「見える化」の前段階であり、可視化するだけで何も対策を講じなければ、問題解決をすること(負の解消)も生産性をあげること(現状の向上)にも結び付きません。

業務を「見える化」するメリット

メリット1.組織の生産性をあげることができる

業務を進める中でやるべきことや問題点を、組織全員の共通認識として落とし込んでいくことで、特定の誰かが一人一人に細かく指示を出さなくても、作業者が業務を遂行していくことができます。

また、「いつ・誰が・何を・どうする」という指示を明確にしながら業務を回す仕組みを作ることで、作業者間の連携がスムーズになります。「何を伝達するか」を決めることで、連携のためのコミュニケーションにかけていた工数の削減ができるケースもあるでしょう。

メリット2.ミスやトラブルの抑止をすることができる

作業者間での連携がスムーズになるということは、伝達の行き違いによるミスやトラブルの抑止効果にも期待できます。

業務内容・業務プロセスを担当者しか把握していないと、担当者の作業ミスに周囲が気付きにくいというリスクがあるほか、担当変更や担当者の不在時の代理対応などのタイミングでミスが起こりやすくなります。
個人ではなく組織として、複眼での作業チェックをすることで仕事の質をあげていくことにつながるのです。

メリット3.属人的な業務を減らすことができる

「見える化」をしていない組織では、業務内容を把握しているのが担当者のみといういわゆる属人化が進みやすくなります。業務が属人的になると、必要なタイミングで担当者が休みをとることができない…という事態にもなりかねません。

組織内で各担当の業務内容をしっかりと共有することで、何かがあったときの代理対応が可能となります。 もし、異動や退職などで担当者が変更となる場合でも、スムーズに引継ぎを行うことができるでしょう。

メリット4.人材育成に役立てることができる

作業者によって業務のやり方・進め方が違う場合、どうしても個人差が起きてしまいがちです。

例えば、こんなことはないでしょうか?
・AさんはBさんよりも作業が早いが、少々正確性に欠けるところがある
・BさんはAさんよりも作業内容が正確だが、少々時間がかかりすぎる

つまり、AさんはBさんよりも効率的に作業を進めるコツを知っており、BさんはAさんよりも的確に作業を進めるコツを知っている、ということです。

実作業者が業務で行っている作業内容を「見える化」し、それぞれの良いところを採用し標準化することで、業務の質を均していくことができ、人材育成にも役立ちます。

メリット5.公平な人事評価に活かすことができる

従業員の仕事ぶりを評価し、昇給・昇格・賞与などの処遇を決める「人事評価」は、主観ではなく、公平性のある評価が求められます。

メンバーにとって、自分の働きのどこが良かったのか、どこが足りなかったのか、明確な評価を得ることが仕事へのモチベーションアップにつながります。逆に言えば、それらが明確でないと評価に納得感が持てずに、モチベーションが下がってしまう可能性があるということです。

「見える化」でメンバーの業務プロセスが把握しやすくなれば、客観的で公正な「人事評価」がしやすくなります。

このように「見える化」を進めることは、幅広いビジネスシーンにおいて業務の効率化や業務改善につながると考えて良いでしょう。

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組織で見える化を実現するための5ステップ

見える化の進め方

それでは、組織として業務の見える化を実現するためには、どのように進めていけばよいのでしょうか?ここでは5つのステップに分けて説明をしていきます。

ステップ1. 見える化導入後の目指す姿を掲げる
ステップ2. 目指す姿の実現に向けて必要なことを明確にする
ステップ3. いつ・誰が・何を見るか。自然と目に入る仕組みを作る
ステップ4. 見るべきものをツールに落とし込む
ステップ5. 実作業の中で適切な仕組みに整える

ステップ1.見える化導入後の目指す姿を掲げる

最初に、組織として「どうありたいか」「どうあるべきか」という目指す姿=目標を掲げます。

目標は、可能な限り組織のメンバーみんなで話し合って決めると良いでしょう。仕組み化するということは、これまでやらなくても業務を遂行できていたのに、やらなければいけないことが増えるという側面を持ちます。そのため、実作業を行うメンバーが「なぜそれをやらなくてはいけないのか?」ということをしっかりと理解した状態でスタートすることが大切なのです。

「仕事が進めやすくなることで、メンバーの業務負荷を軽減したい」
「一人一人がスキルアップをして、業務ミッションを達成したい」
「個人の頑張りだけでなく、組織としてミスを防ぐための対策をしたい」
など、実業務の中で叶えたいことをみんなで話し合い、組織として目指すべき姿を定義します。

ステップ2.目指す姿の実現に向けて必要なことを明確にする

目指す姿を具体的に決めたら、その目標の実現に向けてどうすればよいかを検討しましょう。

検討の手順としては、現状の業務プロセスを可視化したうえで、現状の問題点を洗い出します。この際に、現状の業務プロセスを可視化することなく、一足飛びで問題点を考えてしまわないように注意しましょう。

現状の業務内容を振り返ったうえで、「目標を達成するために邪魔になっているモノ・コトは何か?」「今行っている業務プロセスの中で不足していることは何か?」といった問題点と必要な打ち手を絞っていきます。

ステップ3. いつ・誰が・何を見るか。自然と目に入る仕組みを作る

現状の問題点と必要な打ち手が特定できたら、それを業務プロセスに“仕組み”として取り入れます。仕組み化するには、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」見るかを具体的に決めて、ある程度の強制力を持たせることがポイントです。

ここで、前述のトヨタの例を再度復習してみましょう。「アンドン」の例では、機械に異常が発生したら光が点灯するため、関係者はわざわざ何かをチェックしなくても異常の発生を視認することができました。次工程への指示を札に記載して生産ライン上で回す「かんばん」の例でも、引き取る部品や生産などの必要な情報が自然と作業者の目に留まるように工夫されていましたね。

このように、業務遂行の流れの中で「頑張って確認する」のではなく「自然と目に入る」仕組みづくりをすることで、仕組みを形骸化させずに現場に定着することができるのです。

ステップ4.見るべきものをツールに落とし込む

どのタイミングで誰が・何を見るかを決めたら、業務プロセスの中で使うツールに落とし込みましょう。

「見える化」を導入するにあたり、活用されるツールには以下のようなものがあります。

・業務フロー:業務遂行の流れを見える化する
・業務マニュアル:業務の手順を見える化する
・チェックリスト:業務遂行にあたり見るべき項目を見える化する
・課題管理シート:業務遂行にあたっての課題・問題点を見える化する
・業務報告書:メンバーの抱えている業務量を見える化する

このようなツールを作り、業務の流れの中に組み込むことで仕組みとして運用しやすくなります。ただし、あまりにも、ツールの数を増やし過ぎてしまうとメンバーの作業負荷が高くなってしまうこともあるので注意が必要です。

ステップ5.実作業の中で適切な仕組みに整える

業務フローやツールを新しく作りリリースした後には、必ずその結果がどうだったのかを振り返るようにしましょう。

どんなに検討に時間をかけても、実務の作業の中では想定外のことが起こりうるものです。また、ツールの導入により、作業が複雑になり効率を下げてしまう可能性もゼロではありません。

「業務フローを決めたら、それで終わり」ではなく、やりづらい点はないか?情報・準備に不足がないか?を現場に確認し、より適した仕組みとなるようチューニングをすることが重要です。

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見える化の実践事例4選!

事例1.目標の数値を「見える化」する

営業目標として訪問件数や受注件数などの目標数値を設定し、「見える化」します。

このようなKPIを数値化することで、途中の進捗で遅れがあった場合に組織内で適切なフォローを実施することができるため、目標達成の可能性を高めることができます。

事例2.メンバーのタスクを「見える化」する

タスク管理表などで組織内のメンバーが抱えているタスクを「見える化」します。

一人のメンバーにタスクが集中した際に、別のメンバーにタスクを振り分けるなどの業務バランスのコントロールやタスクの進捗管理にも役立ちます。

事例3.組織課題を「見える化」する

課題管理シートなどで、メンバーが日頃の業務遂行の中で困っていることを「見える化」します。

粒度を問わず現場の声を拾っていく仕組みを作ることで、リアルタイムでメンバーフォローを実施することができるほか、風通しの良い環境づくりにも一役買ってくれます。

事例4.従業員のエンゲージメントを「見える化」する

目には見えにくい、従業員のエンゲージメントを「見える化」します。

従業員が属する企業に対する愛着心や貢献意欲を表すエンゲージメントを見える化することで、メンバーのモチベーションの把握やメンタル不調の早期発見などのマネジメントに活かすことができます

エンゲージメントについては、
▶︎こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

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まとめ

「見える化」にあたって大切なことと注意点

見える化を進める上で大切なのは、共通認識と仕組みを根付かせることです。そのためには、わかりやすさ現場の作業負荷をあげないということを念頭に置いて仕組みを作ることが成功の明暗を分けるカギを握ります。

そのためにもツール選びにおいては、自動化できることは自動化し、人の手を動かさずに「見える化」できないか?を検討するようにすると良いでしょう。

特に、いかに組織状態の改善のためと言っても、直接の業務改善から一歩離れた組織サーベイ、社員サーベイなどに時間を取られることを負担に感じるメンバーもいるという声を聞くことも少なくありません。

何か新しいことを始めるときには、新たな仕組み・作業を導入するというプラスの動きだけでなく、実業務の遂行に集中できるように、メンバーにかかっている作業負荷をマイナスにする動きも同時に検討することも、快適に働ける環境づくりのひとつの方法として覚えておきたいですね。

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