人材育成には欠かせない「育成計画」。若手、中堅、管理職…役職だけでなく多種多様な人材が集まって組織は構成されています。効果的な人材育成を行うには、これまでの経歴もスキルも違う一人一人に対して必要なスキルを身につけてもらうためのプロセスをしっかり可視化し、計画性を持って進めていくことがカギになります。本記事では、メンバーの成長を促すために適した育成計画の作り方を解説。実践に役立つ計画表のテンプレートも、ぜひご活用ください。
本セミナーでは、急成長ベンチャーの人事・経営層・マネージャーの皆様を対象に、組織全体でメンタル不調を予防しフォローする仕組みづくりをサポートすべく、「急成長を導くマネージャーの型」の著者兼、株式会社EVeM代表取締役CEOの長村禎庸氏をお招きし、メンタルヘルスが落ち込んでしまったメンバーや、ストレス負荷が高まっているメンバーとの対話の「型」を解説します。
【こんな方におすすめ】
人材育成計画とは、従業員を育成するにあたっての目標を設定し達成するまでの育成プランのことです。
育成計画に落とし込まれているべき主なポイントとして以下が挙げられます。
【人材育成計画4つのポイント】
1.経営戦略に基づき「目指す人物像」を定義づけること
2.「中長期的な視点」で計画されていること
3.今時点での人材スキルに合致していること
4.「5W1H(いつ・誰に・何を・なぜ・どのように)」が整理されていること
計画を立てるにあたって軸となる【目指すべきゴール】を設定する必要があります。人材の育成計画においては「目指す人物像」がそれにあたると考えてみましょう。従業員に最大限の能力を発揮してもらい、将来的に企業としての業績をあげていくことが人材育成の本来の目的となります。そのためには「目指す人物像」は経営戦略に基づいている必要があります。
具体的には、中長期(3~5年)先まで見据えたうえで、「企業にとって必要な人材」を具体的に定義していくと良いでしょう。しかし、先を見据えて今時点での人材のスキルに見合わないような大きな目標を設定しても、目標達成が難しくモチベーションが低下してしまう可能性があるため注意が必要です。
実際の計画においてはもう少し短いスパンで区切りながら、「5W1H(いつ・誰に・何を・なぜ・どのように)」を整理して、現実的な計画を立てることが重要です。
※5W1H…「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」をまとめて表現したビジネス用語前項のポイントを押さえ、人材育成計画をどのようにして立てればよいかを見ていきましょう。
まず、計画のベースとなる現状把握をすることから始めましょう。
【目指す人物像を設定する】
長期的あるいは中長期的な経営戦略から、企業が目指す方向性とズレのない「自社にとって必要な人材」を明確にします。例えば、社内報などで発信されている経営者のメッセージを見直し育てる人材の土台となる「目指す人物像」を具体化していきます。
経営層の考えだけでなく、チームの管理職やメンバーへのヒアリングをして現場の課題感も把握するようにしましょう。管理職には1~2年程度の企業目標と現状のギャップ(不足点)などをヒアリングすると良いでしょう。メンバーには感じている課題感をフラットにヒアリングをすることで今組織としての課題がどこにあるのかを把握します。それによって、育成計画の中で短期的な目標をどこに置くべきかが見えてきます。
【育成する人材のスキルや思考を把握する】
目指すべき姿だけではなく、育成する人材=育成ターゲットの現状のスキルを把握することも大切です。現状のスキルによって育成計画に入れるべき項目やスケジュールが変わってくるからです。
忘れてはいけないのは育成する人材が目指したい将来像やどのような思考の持ち主かということを把握することです。本人の目指したい将来像と育成計画の目標に大きな乖離があるまま、ただ「この目標を達成しろ」と言われても、モチベーション高く取り組むのは難しいでしょう。
実際に育成計画の目標を達成するのは、育成担当ではなく育成ターゲット本人であることを念頭に、育成計画で目指す姿が「将来役に立つことである」と納得感を持って取り組めるようにしっかりとコミュニケーションをとることを心掛けましょう。
次に、現状と理想をどのようにして埋めるかを考え、実施する育成プランを策定します。
STEP1で定義した「目指す人物像」になるために必要なスキルを洗い出し、現状の育成ターゲットとの差分を埋めるために何をするべきかを考える工程です。
目指すスキルを具体化するにあたっては、社内で成果をあげている先輩社員をモデルケースにするのも良いでしょう。モデルケースとなる先輩社員に、どのようにして今のスキルを身につけたのかをヒアリングすると、取り組むべきことが考えやすくなります。
育成方法は研修・e-ラーニング・OJTから部署異動まで様々です。補いたいスキルを身につけるために適正な方法を選び、実行準備を進めます。
STEP1と2で集めた情報をもとに、人材育成計画を立てていきます。
目指す人物像と今時点で育成ターゲットのギャップをどれくらいの期間でどのようにして埋めていくかを考え計画を策定します。その際には中長期(5年)→中期(2~3年)→短期(1年)というように長期的なプランを先に立てて、その後少しずつ期間を遡りながら具体的に実行可能な計画に落とし込んでいくようにしましょう。実行する計画は、「5W1H(いつ・誰に・何を・なぜ・どのように)」を整理することで、「何のために何をするか」が明確になり、スムーズに育成を進めていくことができるでしょう。
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人材育成計画を失敗しなく進めるためには育成計画書を作成し活用するのがおすすめです。本項では、育成計画書とは何かとその活用方法について解説します。
育成計画書(人材育成計画書)とは、プランニングした人材育成計画の全体像を書き記し、進捗管理や成果の測定に活用するためのものです。
人材育成はただ決めた計画に沿って一方通行で進めるのではなく、成果や状況に応じて臨機応変に計画の改善をしながら実行していくことも大切です。計画した育成プランによって育成ターゲットの理解は深まっているのか、スキルアップできているのかなどの成果を適宜振り返り、PDCAを回していくことで、育成ターゲットの着実な成長をサポートするようにしましょう。
※PDCA…「Plan:計画」「Do:実行」「Check:評価」「Action:改善」の頭文字を取ったビジネス用語1.育成計画の全体像を把握する
前述のように育成計画は長期的なプランとなる想定なので、短期で終了するものではありません。スタート時点では、育成する側・される側双方で確認した全体像も、通常の業務が忙しいと目を向けなくなってしまうことも十分に考えられます。育成計画書に、当初設定した全体像を書き記し目指すべきゴールを可視化しておくことで、定期的に内容を見直すことができます。
2.人材育成計画の進捗を確認する
人材育成に限らないことではありますが、計画通りに実行できているかの進捗確認はプロジェクト管理の基本と言えます。特にOJTでの人材育成においては、当初計画していた計画通りに進まないこともあり得るため、育成ターゲットのスキル・状況に応じた計画変更をするためにも、なるべく頻度高くPDCAサイクルを回すのが望ましいと考えられます。スケジュールを含めて、進捗管理をしやすい育成計画書を準備しておくことで、通常業務の合間にも進捗状況をリアルタイムで確認しやすくなります。
3.育成ターゲットの成長にあわせて計画を改善する
「必要なスキル」に対して「現状評価」「育成方法」「成果の測定方法」「振り返り時の達成度」を育成計画書に落とし込み、振り返りにあたって項目を埋めることで、育成計画の実施にあたっての成果が目に見えやすく、育成段階での現状把握やそれに対しての計画改善に役立ちます。
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人材育成は通常の業務遂行と並行して長期的に進めていくものなので、いつ・誰が見ても理解しやすいように項目を精査し、ストレスなくPDCAサイクルを回し、進捗管理ができることが重要です。ここでは、目的別に3つのテンプレート例を紹介します。
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育成計画を立案・遂行するにあたっては育成する側にも必要となるスキルがあると言われています。
【育成担当に求められる3つのスキル】
1.現状を把握するスキル
2.計画を策定するスキル
3.コミュニケーションスキル
これらはいずれも大切なスキルですが、目的から逆算して育成計画というアウトプットを出す必要があるため、つい計画を策定することに目が向いてしまいがちです。
しかし、企業に必要な人材を育てるという本来の目的に沿った育成計画を立てるためには、経営層の考えから現場のメンバーの課題感、そして育成ターゲットの現状のスキルや思考まで正確に現状を把握することが重要なポイントになります。
そして、現状を把握するためにも、立案した計画を実行し長期的に育成対象のメンバーを育てていくためにも相手の立場を考慮したコミュニケーションは必要不可欠です。成長のスピードは学ぶ本人のやる気にも左右されます。育成するメンバーと会話の時間を持ち相手の得意なこと・苦手なこと、将来目指したい姿などをヒアリングして相手を知り、育成プランに対する動機付けをすることから始めてみましょう。
特に育成されるメンバーは業務に慣れるまでは不安なことも多く、どうしてもストレスを感じやすい環境にいるということを理解したうえで、育成計画の遂行のみに気を取られないように、配慮しながら成長のサポートをしてあげたいですね。
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ダイバーシティの影響もあり、より人材の多様化が進んでいくことが予想されます。今後は人材育成においても画一的な計画ではなく、メンバー個々の個性を活かせるような育成計画を考える場面が増えてくるかもしれません。マネジメント層はどうしても忙しくなりがちではありますが、一人一人のメンバーと向き合っていけるような組織体制を整えていきましょう。
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