ストレスという言葉は私たちにとってなじみ深いものになりました。しかし、そのストレスにどう対処するかを知らないという人は少なくありません。この記事では特に職場で受けるストレスとその対処法について解説していきます。
【主なトピック】
【こんな方におすすめ】
ストレスという言葉自体はよく聞きますがストレスの定義について考える機会は少ないのではないでしょうか。最新の傾向ではストレスとはある出来事をプレッシャーと感じそのために精神的あるいは身体的ストレス反応が起きるといった一連の過程をいうことが多いようです。ストレスを構成する要素は
の3つがあります。それぞれについて詳しく説明します。
ストレスを構成する1つ目の要素であるストレッサーとはストレスの要因となる出来事のことを指します。特に自分でコントロールできない出来事はストレッサーとして強く認識されます。
ストレッサーは3つに分類できます。
人間は特に心理的・社会的ストレスが大きいとされています。特に職場におけるストレッサーの例としては
等があります。
近年多いストレッサーとその原因として
等が挙げられます。変化が激しい現代社会、ストレッサーとなる要因は増えていっている傾向にあり職場全体での対応が求められます。
ハッスルとは日常生活の厄介な出来事を指します。トラウマになるような出来事がストレッサーになることもありますが、ハッスルのような日常生活の小さいいらだちや腹立たしいことがストレッサーになっていることも少なくありません。
ストレスを構成する2つ目の要素の認知的評価とは、あるストレッサーを脅威と認知(判断)する心の働きを表します。1984年にラザラスが提唱した心理学的ストレスモデルではストレッサーに対する主観的な判断として一次的評定と二次的評定という2種類があります。
一次的評定とはその事柄が自分にとって脅威かどうかを判断する段階です。一次評定には「無関係」「無害ー肯定的」「ストレスフル」の3種類に区別されます。出来事がどれに属するかはその出来事によって自分が「脅かされるか」が基準となります。
出来事をストレスフルな状況だと判断した場合にはさらに以下のように3つに分類します。
一次評定はその出来事が脅威であり挑戦であるというように脅威と挑戦の評価が同時に下される場合があるという点で特徴的です。また、評価者が直面している問題を克服できる自信がある場合は「挑戦」の評価を、ない場合には「脅威」の評価を下しがちです。
二次的評価とは、個人が直面している状況を「ストレスフル」と評価した場合に、その状況にどのように対処するかを検討する過程を指します。「いつ行動するべきか」「何をするべきか」「その方策が最善か」等が検討されます。このようなストレスに対して起こす行動を「コーピング」と言います。コーピングについては後の章で詳しく説明します。方略の影響を常にチェックし、必要に応じて柔軟に対処法を変更することでストレスに適応しやすくなるといえます。
ストレス反応とは自分にとって「害ー損失」「脅威」だと認識した出来事に対して心や身体に起きる変化のことです。ストレス反応には精神的ストレス反応と身体的ストレス反応の2種類があります。
精神的ストレス反応とはストレス反応の中でも思考や心に関するものです。精神的ストレス反応はHSCLという症状調査票によって①心身症状②強迫③対人関係過敏④不安症状⑤抑うつ症状の5つに分けることができます。それぞれについて説明します。
このような精神的ストレス反応が起きると物事に集中できなくなり、論理的に考えをまとめられず、仕事の質や効率が低下してしまいます。精神的ストレスによる感情の高まりが全ての状況で有害であるわけではありません。それぞれの状況に適した感情の高まりがあります。適切な程度の感情の高まりを超えてしまった場合鎮める必要があります。その方法については「コーピング」の章で詳しく説明します。
身体的ストレス反応とはストレス反応の中でも体や身体的健康に関するものです。身体的ストレス反応は急性のものと慢性のものがあります。
このように、ストレス反応によって健康を害したり、精神的に不安定になることで仕事の質や効率が悪化したりします。
働く人というのはストレスを多く抱えがちです。厚生労働省の提供する「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』」では年齢別に会社で受けやすいストレッサーを紹介しています。
新しい職場環境に慣れ、仕事を覚え、人間関係を構築することが必要で、こうした課題に伴うストレスを自覚することが多くなります。また、仕事の適性に関する悩みが多いのもこの時期の特徴です。
職場環境や人間関係にも慣れ、職業生活も軌道に乗る頃で、周囲からの期待もしだいに大きくなってきます。これに伴い、仕事の忙しさや量的な負担についてストレスを感じる労働者が多くなるのがこの時期の特徴です。
周囲からの期待がさらに大きくなり、より高度な内容の仕事を求められるようになります。管理職などの立場で部下や後輩の管理業務を任される機会も多くなることから、仕事の質についてストレスを感じる労働者の割合も増えてきます。このほかにも、上司と部下との間での「サンドイッチ現象」によって人間関係のストレスを感じる労働者も少なくありません。
組織の中での能力や立場の差が顕著になってきます。会社や組織の中で中心的な役割を求められる労働者がいる一方で、そうでない労働者も出てくることから、人間関係で悩む人が少なくありません。
このように、会社での人間関係や役職に与えられた責任がストレッサーになることは避けられず、ストレスとうまく付き合っていく方法を身につけることは社会人に必要なスキルだということが分かります。
(参考)1 ストレスとは:ストレス軽減ノウハウ|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
ではストレスにうまく対処し、適応するためにはどうすれば良いのでしょうか。ここで役に立つのが「ストレスマネジメント」という概念です。「ストレスマネジメント」とは、ストレスを把握・管理することです。ストレスマネジメントは「セルフモニタリング」と「コーピング」によって構成されます。ストレスを感じている人の中には精神的ストレス反応に気づいていなかったり、気づいていてもどう対処すればいいかわからない状態の人も多いでしょう。以下ではストレスマネジメントの詳しい方法を解説します。
セルフモニタリングとは自分の行動や他者に与えている印象を客観的に観察するという意味の臨床心理学の用語です。ストレスマネジメントの第一歩は自分が何をストレスに感じているかを把握することです。自分を客観的に見てストレッサーに気が付くことで初めて対処法を考えることができます。ここではセルフモニタリングのフローを説明します。
1. ストレスを感じた出来事を特定する 2. その時の思考について書き出す 3. その時の精神的ストレス反応を特定する 4. その時の身体的ストレス反応を思い出す 5. 自分がどのように対処したか(もしくはしなかったか)を羅列する
このように自分が受けたストレスを分析することによって自分の思考の癖が分かる、対処の仕方の再検討ができる等の利点があります。
コーピングとはストレスによって生じる苦痛を軽減するために行う対処のことを言います。コーピングはストレス反応とは違い、意識的に行われるものを指します。 全てのコーピングが良い結果をもたらすわけではないので、行っているコーピングが適切なものかどうかを常に判断する必要があります。 ストレスに対するコーピングには対処する焦点による分類と対処法の特性による分類という2種類の分類の方法があります。ここでは2種類の分類法それぞれについて解説します。
対処を行う焦点による分類は心理学者カーンらによって基礎が作られたものです。彼らによれば、コーピングには
問題焦点型コーピング
問題自体に対処することでストレスをなくそうというコーピング法
(コーピング例)
・問題解決に向けて情報収集をする
・計画を立てる
・ 具体的に行動する
情動焦点型コーピング
問題によって発生した情緒などのストレス反応に対して対処しようというコーピング法
(コーピング例)
・ 問題の捉え方を変える
・ 問題から目を背ける
の2種類があると言います。
対処法の特性によって分類する分類方法はストレスの対処を3つのカテゴリーに分けるものです。
「認知ー行動」カテゴリー
「コントロール(積極)ー逃避(回避)」カテゴリー
「社会ー孤立」カテゴリー
このようにコーピングを分類することで、自分がどのコーピングをしがちなのかが分かると同時にコーピングについての視野が広がります。一つのコーピングだけではなく、様々なコーピングを組み合わせることによってストレス反応を低減させるという研究結果もあります。
「逃避(回避)」に分類されるコーピングに比べて「問題焦点型コーピング」や「コントロール(積極)」に分類されるコーピングが常に良いと言えるとは限りません。なぜなら問題が大きすぎて自分の力では解決できない場合(上司や職場環境等)がある他、問題解決自体が大きな負担となり新たなストレスになってしまう可能性もあるからです。
以上のようにストレスマネジメントは「セルフモニタリング」と「コーピング」の2つで構成されています。とにかく自分を客観的に見つめなおすことがストレスマネジメントの肝となります。
「ストレス反応」の章でも述べた通り、精神的ストレス反応によって注意力がなくなり論理的な思考ができなくなることによって仕事の質や効率が低下します。また、身体的ストレス反応が生じると会社を休まなくてはならないこともあるでしょう。このように従業員のストレスは業務に悪影響を及ぼします。職場でストレス対策を行うことで従業員の健康を保持増進するだけでなく、労働の質の向上や職場の活性化にも繋がります。
職場におけるストレスマネジメントとしてとれるアプローチには「組織志向アプローチ」と「個人志向アプローチ」があります。それぞれについて解説します。
組織志向アプローチとは職場環境に焦点をあてたストレスマネジメントです。組織志向アプローチに分類される取り組みとして職場環境の改善と管理監督者(上司)教育の2つが挙げられます。
職場環境の改善には職場の物理的な環境だけでなく、勤務形態、労働時間、人間関係や職場組織等の社員の心の健康に関連する全てが含まれます。職場環境の改善におけるストレス対策は主に
の3つに分類することが出来ます。
職場環境について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
職場ストレスの程度は上司によってある程度左右されます。また、上司は部下の精神的不調の早期発見におけるキーパーソンでもあります。上司がメンタルヘルスの方針・体制を正しく理解し必要な知識とスキルを習得することで、職場でのストレッサーが低減され、サポートが充実することが期待されます。 厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において管理監督者が学ぶべき内容として以下の11項目を挙げています。
(参考) 労働者の心の健康の保持増進のための指針平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示
個人志向アプローチとは従業員個人を対象としたストレスマネジメントを指します。個人志向アプローチとして代表的なものに認知行動トレーニング、ストレス調査とフィードバック、リラクセーション・トレーニングの3つがあります。それぞれについて解説します。
認知行動トレーニングは認知行動療法を自分で行えるようにするトレーニングです。認知行動療法とは気持ちが大きく動揺したときに陥ってしまう思考に目を向け、それがどの程度現実と食い違っているかを検証し思考のバランスをとるというものです。
詳しい面談内容は厚生労働省のうつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアルをご覧ください。
ストレス調査は基本的にはアンケートで行われます。ストレスチェックとも呼ばれ、厚生労働省の定めたストレスチェック制度によって大企業では特に普及していると言えます。 ストレスチェックについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
ストレスチェック後には個人にフィードバックを行い、特に高ストレス者と判断された場合フォローアップ面接を行うとより効果的でしょう。
リラクセーショントレーニングとは、緊張したり気分が高ぶっているときに心を落ち着かせる方法を学ぶトレーニングです。代表的なリラクセーション技法として挙げられるものには以下があります。
このように会社全体へのアプローチと従業員個人へのアプローチを同時に行うことによって従業員の心の健康が保たれ、組織としても高い生産性が期待できます。
ストレスマネジメントは幅の広い概念でありいろいろな側面からアプローチ出来るものです。この記事を読んでもっとよくストレスマネジメントについて知りたいと思った方は以下の3つをおすすめします。
研修を受けるのは知識を得るうえで一番手っ取り早い方法だといえるでしょう。ストレスマネジメントの研修を受けることのできるサイトを紹介します。
ストレスマネジメントについて学べる本は様々ですが、ここでは実践的なものと理論的なものを紹介します。
これらの本を読むことによってストレスマネジメントでは具体的にどのような対策をとればいいのかが分かります。
これらの本を読むことでストレスの仕組みや学術的な見解を知ることができます。
従業員の感じているストレスは外から見ても分かるものではありません。しかし、ストレス調査にはコストがかかるほか、従業員が非協力的だったり正直に答えてくれない場合効果的なものにはなりません。
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