社員の健康は業務の生産性との相関関係があります。社員に健康でいてもらうために、セルフケアの推奨とメンタルヘルスケア対策を行いましょう。
とくに、社員自身でセルフケアを取り組んでもらえれば、健康経営に取り組むための企業側の負担が軽減できます。一体、セルフケアとは何なのでしょうか?どのように取り組むものなのでしょうか?
今回は、セルフケアについて詳しく解説します。
セルフケア(Self Care)とは、自分自身をケアすることを意味します。
厚生労働省が定めている「労働者の心の健康保持増進のための指針」では、セルフケアはメンタルヘルスケア対策の1つだと述べられています。
社員自身がストレスに気づき、緩和するための知識や対策方法を身に付けることにより、健康が維持できるのです。
公益社団法人 日本看護協会によると、ストレスによる反応として以下が挙げられています。
・心理面
不安や抑うつ(気分の落ち込み、興味・関心の低下)、イライラ、意欲の低下、集中力の低下
・身体面
入眠障害(寝付きが悪い)、中途覚醒(夜中に目が覚める)などの不眠、易疲労感、頭痛や肩こり、腰痛、目の疲れ、めまいや動悸、腹痛、食欲低下、便秘や下痢
・行動面
飲酒量や喫煙量の増加、食欲亢進(ドカ喰い)、ひきこもり、欠勤や遅刻の増加、仕事のミスの増加、ヒヤリハットの増加
企業は社員にセルフケアの重要性を伝えて、どのように実践すべきかを身に付けてもらう必要があります。
社員にセルフケアの重要性を伝えて身に付けてもらう必要があると述べましたが、企業側にどのような効果があるのでしょうか?次に、セルフケアの重要性について解説します。
社員がセルフケアに取り組めば健康が維持できて、生産性の向上が見込めます。社員の健康と生産性の相関はmedibank社の調査で証明されています。 同社の調査報告書によると、健康に問題がある社員の病欠の連絡の頻度は、問題のない社員の9倍にも上がります。
身体が健康であれば、仕事が早く効率的に働けますが、頭痛や眩暈などの症状を抱えていれば業務に集中できません。これは精神的疾患を抱えている場合も同様です。体調不良になると業務に集中できなくなり、生産性が低下してしまうのです。
生産性向上のためにも、社員にセルフケアに取り組んでもらい、健康を維持してもらう必要があるのです。
社員自身によるセルフケアを疎かにすると体調不良になり、離職に繋がってしまいます。貴重な戦略となる人材を失うことは、企業にとって大きな損失です。一般的に、社員が早期退職すると年収の半分程度の損失が出ると言われています。採用コストや教育コストがムダになってしまうため、社員にセルフケアに取り組んでもらい、体調管理してもらう必要があるのです。
社員にセルフケアに取り組んでもらい、各自で健康管理ができるようになれば、経営リスクが下げられます。
社員がセルフケアを疎かにして体調不良に陥ると、事故やトラブルを起こしてしまうかもしれません。
例えば、危険物を取り扱う業務を担う社員が体調不良になると、周囲の健康をも脅しかねません。最悪の場合は事故が起きてしまうでしょう。
社内で事故が起きた場合は、企業側の管理不足が疑われて、損害賠償請求や民事訴訟に繋がる恐れがあります。このような経営リスクを下げるためにも、従業員にセルフケアに取り組んでもらう必要があるのです。
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社員にセルフケアに取り組んでもらう必要があると伝えましたが、どのような方法があるのでしょうか?実践してもらうために、セルフケアの方法を覚えておきましょう。
適度な運動をすれば、健康を維持できます。その理由は、身体を動かせば血流が良くなり、気分が落ち着くためです。
職種によっては、職場で同じ姿勢で働き続けることがあります。長時間、同じ姿勢でいると血流が悪くなり、身体に大きな負担がかかるため注意しなければいけません。
椅子に座って身体を捻るストレッチや、通勤時に駅まで歩くなど気軽に取り組める運動を勧めてみましょう。
健康を維持するためには、睡眠時間の確保は欠かせません。JPHC研究の報告書によると、理想的な睡眠時間は7時間~8時間と述べられています。この時間よりも、短くても長くても健康リスクが上昇すると記載されています。そのため、仕事が忙しい時期でも、意識的に睡眠時間を確保してもらうように促しましょう。
健康のために簡単に取り組めるのが、口角を上げて笑うことです。笑うことでNK細胞が活性化されて免疫力が向上するという説もあります。
さらに、新陳代謝が高まり、食べ物の消化が良くなるという効果も期待できるのです。
これは、作り笑いでも効果があると言われています。そのため、意識的に口角を上げて笑い合ってみましょう。
仕事から解放されて、趣味を楽しむ時間を持つと気分転換ができます。
仕事とは異なる、趣味で知り合った人間関係を作ると生活にメリハリが出ます。趣味友達と話せば、ストレス軽減も期待できるでしょう。
趣味には、スポーツや映画鑑賞、カラオケなど日常生活で気軽にできるものがあります。また、旅行など日常から離れて過ごせる趣味は気分転換になります。そのため、社員が趣味を楽しめる時間を与えるようにしましょう。
マインドフルネスとは、瞑想を意味します。欧米の企業で採用されており、注目を浴びているセルフケア方法です。
世界的に有名なGoogle社でも瞑想が取り入れられており、従業員の創造性を開発し、生産性向上につながるとGoogleのマインドフルネス革命(著者:サンガ編集部)にも記載されています。
その理由は、マインドフルネスの瞑想を行うことで余計な雑念が消えるためです。集中力を高める効果の他、不安やストレスから開放される効果も期待できるとされています。そのため、体調不良を訴えかけている社員にマインドフルネスを薦めてみましょう。
ストレスを軽減する方法として、紙に気持ちを書き出して整理するのも効果的です。紙に書き出して、気持ちを整理すると得られる効果は2つ。
1つ目が、抱えている悩みを客観的に把握できて、落ち着いて考えられるようになることです。2つ目が、悩みを解決するための選択肢に気付けるようになることです。このような効果が期待できるため、気持ちの整理をしてみることを勧めてみましょう。
社員から、紙に気持ちを書き出すのが面倒だと言われたら、スマホやパソコンを使用することを勧めてみてください。大切なことは、自分の気持ちをありのままにアウトプットすることです。
ストレスを抱えているときは、自分自身の欠点に目が行きがちです。悩みの種となっている箇所以外は、上手くやれているのに、自分自身を褒められなくなっていることも珍しくありません。
このような状況に陥っている場合は、なりたい姿を描かせましょう。社員に「こんな人になりたい」という理想のイメージを描くことで、理想に近づくための努力ができるようになります。
理想のイメージを描く場合は、小さな目標を立てておくことが重要です。1つ1つの目標をクリアできたら、自分を褒めてあげましょう。
このように取り組むことで、自身喪失した気持ちを回復させていくことができます。
病気にならないために、1人で悩みを抱え込まないということも重要です。
会社の同僚や先輩、上司や、プライベードで付き合う友人など相談相手は誰でも構いません。
信頼できる相手に話すことで、自分の中で状況の整理ができたり、自分では考えつかなかった視点で物事が捉えられるようになったりします。そのため、悩みを抱えている社員を見かけたら、声をかけて相談に乗ってあげましょう。
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社員自身によるセルフケアで健康を維持するだけでなく、企業側もメンタルヘルス対策を実施して、健康経営に取り組んでいきましょう。ここでは、企業が取り組みたいメンタルヘルス対策のやり方をご紹介します。
まずは、社員自身がセルフケアに取り組めるように教育する場を設けます。セルフケアやメンタルヘルスケアに関する以下の情報を提供して、啓発活動を促しましょう。
[情報の内容]
・セルフケアの重要性
・セルフケアの方法
・ストレスへの気づき方
・ストレスの予防方法
・ストレスの軽減方法
・メンタルヘルスケアに関する企業の方針
・メンタルヘルスケアに関する基礎知識
・企業内の相談先に関する情報
上記のような内容を理解してもらうための、研修を実施すると高い効果が見込めます。研修内容や実施方法など分からないことがあれば「産業保健支援センター」に相談するとアドバイスがもらえます。
次に、社員の健康を保つために安心して働ける職場環境を作ります。社員がストレスを感じる原因は、多岐に渡ります。
職場の空調や照明、レイアウトなどの物理的な要因によりストレスが起きるケースもあるのです。また、職場の人間関係の悪さや長時間労働などもストレスになります。
このような問題は、以下のような手順で解決していきましょう。
どこから取り組めば良いか悩んだ場合は、職場のレイアウト変更など取り組みやすいところから改善していきましょう。
社員が1人で悩みを抱え込まないように、相談しやすい雰囲気を整備しましょう。
また、上司の立場であれば、以下のような部下の異変に気付き、声をかけて話を聞いてあげることも大切です。
相手に話を聞いてもらい、アドバイスをもらうことで、気持ちが整理できたり解決方法が得られたりします。
しかし、相談しにくい悩みを抱えている場合もあるでしょう。このような場合は、産業保健支援センターの相談窓口を推奨してみてください。
[部下の異変の例]
・遅刻や早退、欠勤が増える
・休みの連絡がない
・仕事の能率が悪くなる
・業務の報告をしてくれなくなる
・職場での会話が極端に少なくなる
・表情が乏しくなる
・不自然な言動が目立つようになる
・仕事のミスや事故が目立つ
・服装が乱れるようになる
従業員が体調を崩したら、症状が悪化しないように休ませなければいけません。その際に、体調回復後に復職できる環境を整えてあげて、安心させてあげる必要があります。
そのため、企業が取り組みたいメンタルヘルスケアの1つとして、職場復帰支援プログラムの策定が挙げられます。厚生労働省の手引きによる職場復帰支援の流れは下記の通りです。
[職場復帰支援プログラムの流れ]
職場復帰プログラムを認知してもらえば、体調不良になった社員でも復職できるようになります。
このようなプログラムを用意しなければ、体調不良で休職していたことに嫌悪感や後ろめたさを感じてしまうかもしれません。そのため、職場復帰プログラムを認知させ、復帰できることを知らせましょう。
職場復帰プログラムの策定方法が分からない場合は、産業保健支援センターの支援を受けてみてください。
職場復帰プログラムで復職をさせるだけでなく、復帰後は経過観察をするようにしましょう。
社員の体調不良を把握している医師と連携を取りながら、病気が再発しないように努めることが大切です。手厚いフォロー体制を整えておけば、社員も安心して働けるようになるでしょう。
復職をした社員のフォローは、長期的な目で見ることが大切です。気長に付き合う心構えを持つことで、相手に安心感を与えられます。
企業側がメンタルヘルスケア対策の1つとして取り組みたいのが、ストレスチェックです。
定期的にストレスチェックを実施することで、社員の健康状態が把握できます。それだけでなく、社員自身が自分のストレス状態を客観視する習慣にもなります。
ストレスチェックを実施する方法は2つ。
1つ目が、厚生労働省が提供している「ストレスチェックシート」を活用する方法です。2つ目がデジタルツールを活用して、インターネット上で集計を取る方法です。
デジタルツールを活用した方が、データ分析の精度が上がります。1人1人の社員の健康状態だけでなく、部署間の状況なども把握できます。そのため、メンタルヘルスケア対策に取り組みたい方は、デジタルツールの導入を検討してみてください。
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今回は、社員に取り組んでもらいたいセルフケアについて解説しました。
社員自身にセルフケアに取り組んでもらえば、健康を維持できるようになります。企業側の負担が少なく、健康経営が実現できるのです。
しかし、企業側も社員が安心して働けるようにメンタルヘルスケア対策を実施した方が良いです。
この記事では、セルフケア方法やメンタルヘルスケア対策をご紹介しました。ぜひ、社員の健康を維持するために、取り組んでみてください。
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