「対人関係や仕事自体に、強いストレスを抱えてしまう部下が多い」
このような悩みを抱えた管理職の方も、多いのではないでしょうか?
厚生労働省の調査によると、仕事や職業生活に関することで強い不安や悩み、ストレスと感じている労働者の割合は、54.2%となっています。(2020年)
【出典】厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の状況第2-1図」
このような状況の中、企業のメンタルヘルスケアへの取り組みが重要視されるようになりました。中でも、部下のワークエンゲージメントを高めるのに有効な手法が、「リフレーミング」です。
この記事では、リフレーミングを用いてマネジメントに活用する方法と得られる効果について解説します。
ぜひ、部下のモチベーションを上げるための、参考にしてください。
リフレーミングとは、ネガティブに表現されることが多い言動に、肯定的な意味を与え枠づけし直すことです。簡単に言うと、ネガティブな思考をポジティブな思考に変えるテクニックになります。最近ではビジネスの現場でも使われるようになりました。
コップに半分水が入っているとき「半分しか入っていない」と考えるのか、「半分も入っている」と考えるのかという有名な例えがあります。当然「半分も入っている」と考えられるほうが、ストレスを感じさせません。
部下のネガティブ思考を前向きに転換させられると、可能思考で難局を乗り越えるチームへ導かれるでしょう。リフレーミングをうまく活用することで、ワークエンゲージメントが高まるのです。
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リフレーミング2つの種類、「状況のリフレーミング」と「内容のリフレーミング」について見ていきます。
物事や人を違う状況に置き、プラスに転換させるのが「状況のリフレーミング」です。一見不都合に見えることを、状況や環境を変えることで、プラスの性質に転換させます。
例えば、強調性に欠け、周囲から孤立しがちな部下がいれば、正直扱いにくいと感じてしまうでしょう。しかし、単独行動はスピード感を生み出し、仕事のパフォーマンスを高める場合もあります。
例えば、チーム営業は、ノウハウの共有などのメリットがある反面、営業マンの自由度が低かったり、足並みを揃えるまでに時間がかかったりするデメリットもあります。チーム行動が苦手な部下なら、周囲との連携がうまくいかず、営業成績が伸び悩むこともあるでしょう。
仮に、このようにチーム行動が苦手な部下を、単独で営業させるとどうなるでしょう?自分の裁量で、営業先のターゲティングからアプローチ、提案や商談まで効率的にこなし、今まで以上の成果を出すかもしれません。
この事例からも、部下の力が発揮できるシチュエーションに置いてあげることで、本来の能力を発揮するケースもあるのです。このように、状況のリフレーミングをうまく活用することで、部下のモチベーション向上につなげていきます。
一方、ネガティブなことにも価値を見出すのが「内容のリフレーミング」で、「意味のリフレーミング」とも呼ばれています。物事を多角的にとらえて、プラスの価値を生みだす手法です。
人生は思う通りに行かず、想定外のことにも遭遇します。そんな時は落胆し、自信を失ってしまうこともあるでしょう。しかし、たとえネガティブなことでも逆手にとり、足りない部分を埋め合わせていけば人は成長できるはずです。
例えば、営業成績が伸びず悩んでいる部下がいれば、「営業マインドやスキルを高めるための、課題がたくさん見つかる良い環境にいるのだ」と伝えます。そのように言われた部下は、今自分に足りていない部分を見つめ直し、改善に向けて肯定的に取り組むようになるでしょう。
内容のリフレーミングで意味や価値を見出せれば、部下はよりポジティブに考え行動できるようになります。
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思考を切り替えるリフレーミングは、内容ごとに理解して実践するとより効果的です。6つのリフレーミングの方法について、見ていきましょう。
困った時やパニックに陥ってしまったときなどは、「どうしたいか」を意識することが大切です。「どうしよう」ばかり考え焦っても、決して解決には導かれません。悩みを掘り下げるのではなく、「what」=したいことに焦点をあて前向きに考えていくのです。
部下が悩んでばかりなら、「それならどうしたい?」と質問して、まずは感情を整理させます。そのうえで、「じゃあ、どうすればいい?」と具体的な解決策に導くと良いでしょう。
例えば、仕事が片付かず残業続きで悩んでいる部下に対して、以下のようにアプローチしてみてはいかがでしょうか?
部下は冷静になり、「自分がしたいこと」のために具体的な改善策を考え、行動するようになるはずです。 そして、行動する際は以下のポイントを伝えてあげると良いでしょう。
「自分はどうしたいか?」の感情を引き出し、その結果を得るために「どうするのか?」とリフレーミングすることで、部下は自発的に解決に向けて行動するようになります。
「もし〇〇だったら」と仮説を立てることで、発想の幅が広がり具体的な行動につなげられます。 さまざまな仮説立てには、偏った考えにとらわれず柔軟な発想が持てる効果があるからです。
もし顧客からクレームがあった場合、「仮に上司だったら、どう対応するだろう?」と想像することで、適切に判断し対応できるかもしれません。さまざまな考えを巡らせることで、新しいアイデに導かれることもあるでしょう。
言葉の定義は一つだけでなくさまざまな側面があるので、転換が可能です。転換することで短所を長所に言い換えられるのです。
例えば「無謀」と呼ばれる人は、「決断力がある」と言い換えられます。また、「しつこい」人は「徹底している」とも言えるでしょう。
部下が自分の短所に気づいてもワンパターンに解釈するのではなく、言葉の意味をリフレーミングさせるのです。短所も見方を変えると魅力に変わることが多く、言葉一つの定義に振り回されるのではなく、何通りにも解釈できるようになります。
解体してリフレーミングすると、対策のヒントが浮かんできます。「なぜ?」「どうして?」と掘り下げて考えることで、原因が明確になるからです。
「毎日仕事が忙しくて大変」
このように短絡的に考えると、憂鬱になるものです。しかし以下のように解体していくと、原因がわかり対策の具体的行動に移れます。
短絡的に考えるだけではなく、短絡的な感情をより掘り下げることで原因が明確になり、改善のための具体的な行動につながっていくのです。
ネガティブな場面に遭遇しても、将来のことまでを視野に入れ考えます。今だけ見ればマイナスに思えることも、長い目で見ればプラスに解釈できるからです。
例えば企画部を希望していたが、営業部に配属された場合。希望部署に配属されなかったと落胆するのではなく、顧客ニーズをつかみとる訓練の期間だと考えれば、営業職として前向きに取り組めるはずです。遠回りにはなりますが、営業職で積み重ねた経験は後に企画部に配属されたとき、必ず役立つでしょう。
嫌なことや辛いことがあっても、名言に置き換えると人は前向きになれます。だれもが知っている偉人の名言には、話に引き込まれ共感させられる力があるからです。
計画を立てるばかりで行動を起こさない部下に対して、「考える前に動け」と言っても部下の心には刺さりません。「どれだけ良いアイデアがあっても、実行しなければ成功もしないし、失敗もしない。それは時間のムダでしかないでしょう。」ユニクロ創業者柳井正氏のこの言葉を伝えてあげたほうが、よりストレートに部下の心に響くはずです。
インターネットで検索すると、多くの名言が出てきます。困難な状況に陥っても、素敵なワンフレーズに変換できれば、部下のモチベーションも上がるでしょう。
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次に、リフレーミングで得られる5つの効果について見ていきます。
リフレーミングで得られる効果の一つが、モチベーションを上げることです。
例えば大勢の顧客の前でプレゼンする機会があり、緊張と自信のなさからネガティブになっている場合を考えてみましょう。
「大勢の顧客の前でうまく話せなかったらどうしよう」と考えるのではなく、「忙しい中、大勢の人が自分の話を聞きに集まってくれている」と思うのです。そのように思うと、「プレゼンを聞いてくれる顧客に喜んでもらいたい」気持ちに変化するはずです。
不安になりがちな部下へは、状況に応じた適切なリフレーミングが、ネガティブな感情を押しのけ前向きにさせるのです。
リフレーミングは、仕事で弱気になっているメンバーに自信をつけさせることができます。
長所の側面に置き換えてフォーカスさせることで、「自分は間違っていない。このままで大丈夫だ」という気持ちにさせるからです。
部下にかける言葉の表現を変えることで、自信を持たせることが可能になります。「神経質」な性格を悩む部下に対しては、「気が利く」と伝えてあげます。そうすることで部下は、「自分の良さは気が利くことだ」と理解し自信が持てるようになります。
自信のない部下には、以下のような特徴が見られます。
このような特徴を理解したうえでリフレーミングすれば、部下の自信につながり仕事のパフォーマンスも高まってくるはずです。
リフレーミングによってネガティブな感情からポジティブな感情に変化させるため、部下の苦手意識を払拭させることができます。例えば消極的な性格から、新規開拓に苦手意識を持つ部下がいた場合。 「消極的」は「慎重に物事を進める」に置き換えられ、十分リサーチしてからテレアポする傾向なのでアポ取得率が高まるかもしれないことを伝えます。
部下の新規開拓に対する苦手意識をなくしたうえで、新規開拓のストレスを最小化させる以下2つの要素を教えてあげると、さらに効果的でしょう。
このように、苦手意識をなくし仕事の成果を高めるには、リフレーミングが効果を発揮するのです。
新しい仕事にチャレンジするときは、だれもが不安に思うものです。しかし、リフレーミングによって前向きな気持ちにさせることで不安を解消させることができます。
新しいプロジェクトのリーダーに指名し不安に思う部下に対して、キャリアアップを実現する絶好のチャンスだと思わせるのです。不安とは「先が分からない」状態で、自分や他人を思いやる気持ちから生まれるものです。不安と戦っているときは、「より良い方向に進みたい」と頑張っている時間と置き換えることもできるのです。
人はチャレンジして失敗したときこそ、大きく成長します。なぜなら、失敗から多くのことが学べるからです。行動せずに後で後悔するよりも、チャレンジして失敗した方が多くの気づきがあったと考えた時点で、すでに失敗を乗り越えていると言えるでしょう。
失敗はだれもがすることです。もし部下が不注意で失敗しても、以下の対処法を正しく教えてあげましょう。
失敗は、成長するための貴重な機会です。失敗したときこそ、リフレーミングが効果的になります。
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これまで見てきたように、管理職にとってリフレーミングは部下のモチベーションを高めるのに有効です。しかし、人はストレスに対する感じ方に差があるので、部下の特性を見極めながらリフレーミングする必要があります。同じ状況、同じ事象でも脅威か否かの判断が人によって変わり、無意識に出る考え方の癖が一人ひとり異なるからです。
では、そもそも人はなぜ、ストレスの感じ方に差があるのでしょうか?八洲学園大学の竹田葉留美氏は、ストレスの認知的評価に着目し、ラザルスのストレス理論をもとにストレスの認知的評価について、論文で述べました。
ラザルスによるストレスの認知的評価
例えば、人は心身の疲労がたまっているときは、怒りや苦しみ、悲しみなどのネガティブな考えが多くなります。無意識に出る考え方の癖が、「認知的枠組み」です。ここで重要になるのが、自分の考え方の癖に気づき、この癖を修正していくことなのです。苦手な場面に遭遇したとき、ネガティブな考えのままにせず、認知の枠組みを変えて(フレーミング)物事を評価することで、ストレスが軽減されます。
したがって、部下一人ひとりが持つ認知的枠組みを把握し、それぞれに合うようにフレーミングしてあげることが、マネジメントにおいて大切になるのです。
例えば、チーム内でリーダーシップ発揮できないと悩んでいる部下A君とB君の場合。A君は「強引」、B君は「気が弱い」という欠点がそれぞれあります。
そのような場合は、以下のように異なったリフレーミングをすると効果的でしょう。
このように、マネジメントでは同じ事象でも、部下一人ひとりの特性に応じて異なるリフレーミングを心がけると良いでしょう。
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リフレーミングのやり方は、基本的にシンプルです。「リフレーミングノート」を活用してゲーム感覚で学べます。ここでは「リフレーミングノート」を活用する3つの手順を見ていきましょう。
リフレーミングノートを使う、3つの手順について順番に解説します。
自分の好きではないことや欠点を、ノートの左側に書き出します。思いつくままに書き出していきましょう。多く書き出しても、問題ありません。
続けて下側に、自分が苦手なタイプを書き出していきます。あなたが嫌いになりやすいタイプ、例えばルーズな人、愚痴を言う人など思いつくままに書いていきましょう。
ノートの左側には、すべてネガティブなことについて書かれているので、これらをひとつずつリフレーミングしていきます。あなたの解釈で構いませんので、「ルーズな人」は「こだわらない、大らかな人」など、それぞれ書いていきましょう。リフレーミングするときのポイントは、色眼鏡を外すようにネガティブなフレームを外していくことです。左側のネガティブな枠組みを、別の枠組みに転換していくのです。
リフレーミングを作業していくと、これまで感じていたマイナス面は、ほんの一面にすぎなかったことがわかってきます。自分の欠点が「気が弱い」と感じていた人は、リフレーミングノートを活用すれば、「周りを大切にできる」ことが自分の強みだと感じ、自信がついてくるはずです。
最後にリフレーミングについて、15の例を紹介しますので参考にしてください。
今回の記事では、リフレーミングについてまとめました。部下それぞれの性格に応じて適切にリフレーミングすれば、ワークエンゲージメントが高まり、可能思考で取り組めるチームに導けることがお分かりいただけたでしょう。
管理職は、部下のストレス状態を気にかけ、それぞれのコンディションを把握しなければいけません。しかし、多忙な管理職にとって一人ひとりに向き合う時間を確保するのは、現代において難しくなってきました。
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