効果的で生産性の高いチームに最も重要な要素であるとの調査を2015年にGoogleが発表したことで、注目を集めている心理的安全性。本記事では、心理的安全性の定義や高める方法、注意点について詳しく解説します。
【主なトピック】
【こんな方におすすめ】
心理的安全性とはハーバードビジネススクールの教授であるエイミー・C・エドモンドソンが提唱した概念で、
仕事環境において「誰かが発言することによって、他のメンバーが辱めたり、拒絶したり、罰を科すことはないとチーム間の暗黙の了解で保証されている状態」を指します。
つまり、チームのメンバーが不安や恐怖を感じることなく、発言・行動できる環境が担保されている状態と言い換えられます。
エドモンドソンは、チームで仕事を行うにあたって、急速に変化する環境の中で新しい挑戦をし続け改善を重ねるチームが理想だとしています。エドモンドソンはこの理想のチームの状態を「Teaming」と定義していますが、Teamingにおいて最も重要となる要素が本記事で紹介する心理的安全性なのです。
心理的安全性がビジネスの場面で大きな注目を集めることとなったきっかけは、Googleが行った「プロジェクト・アリストテレス」と呼ばれる調査にあります。
そこでGoogleは、エドモンドソンが提唱した心理的安全性に着目し、チームの生産性向上に心理的安全性が不可欠である との調査結果を2012年に発表しました。
さらに、調査結果の中で、効果的なチームに影響する最重要要素が心理的安全性である としています。
エドモンドソンは、スピーカーとして登壇したTED Talkにて具体的に従業員にどのような不安要素があると「心理的安全性が低い」と定義づけられるのか説明しています。 ここでは従業員が感じる不安がどのような影響を及ぼす可能性があるのか見ていきます。
無知だと思われる不安
従業員が無知だと思われるかもしれないと恐れている時、大抵の場合分からないことを質問するのを躊躇ってしまいます。
上司とのコニュニケーションがスムーズに行かず、悩みが取り除かれないとTeamingの概念において重要である「改善を重ねる」機会を奪ってしまうことになりかねません。
無能だと思われる不安
従業員が生き生きと働ける環境において、従業員が自身の仕事に自信を持ち自分らしく取り組めることが重要です。
無能だと思われる不安がある状態では、何か発言や行動することで否定されるのではないかという考えから自信を喪失し、従業員エンゲージメントやチーム全体の士気の低下につながる可能性があります。
邪魔をしていると思われる不安
受け入れられていると感じられない職場環境では、発言や行動の機会が圧倒的に少なくなり、従業員が孤立で業務を行う状態 になってしまいます。
エドモンドソンはチームで成果を上げることが新たな価値の創造に寄与すると唱えており、従業員が他のチームメンバーとオープンにコミュニケーションが取れない状況ではイノベーションを生み出しにくい環境を作ってしまいます。
ネガティブだと思われる不安
他のチームメンバーに対して反対意見を発言をした際に、否定的だと批判されると、それ以降の建設的な議論が行われなくなることにつながります。
ネガティブだと思われたくないがために、自身の意見を押さえつけてチームメンバーに賛同すると、意義のある議論が生まれにくく、また、多様な考えを取り入れる機会を喪失する可能性も出てきます。
従業員が以上のような不安を感じる心理的安全性が低い状態では、 共通して
などのデメリットが生まれます。
前項では心理的安全性の低さがもたらす影響について解説しました。 それでは、反対に、心理的安全性が高いことはチームにどのような影響をもたらすのでしょうか。
Googleの調査結果によると、心理的安全性の高いチームのメンバーには
という特徴がありました。
つまり、心理的安全性が高いチームではメンバーが生き生きと働く環境が整備されているため、従業員エンゲージメントが高く、さらにそれによって企業の収益性が向上する ということが明らかになったのです。
それでは、心理的安全性はどのようにして高められるのでしょうか?チームでの心理的安全性を高めるためのアプローチをご紹介します。
心理的安全性が高い環境を醸成するために有効な方法として、人事やリーダーから働きかけられるもの と、従業員が1人のメンバーとして取り組めること があります。
心理的安全性を醸成する際には、当然のことながらチーム内のリーダーにあたる従業員の行動や役割が最も強い影響力を与えます。
McKinsey&Companyが行った調査では、心理的安全性の向上に寄与するチームリーダーの振る舞い について挙げられています。
具体的にこの調査では、パス・ゴール理論で定義づけられている リーダーシップの4つの行動スタイル (指示型・支援型・参加型・達成支援型)からどのタイプのリーダーシップがポジティブな雰囲気を作り、心理的安全性を高めるのに有効かということについて標準化偏回帰係数を用いて定量的に調査しています。
調査結果から、ポジティブな雰囲気作りには、リーダーは協力的な態度で助言を与える支援型・参加型の行動を示した後に、チームを奮い立たせるような達成型の振る舞いを行うことが最も効果的だと明らかになりました。
反対に、部下の仕事を構造化しコントロールする支持型のリーダーシップは心理的安全性に寄与しませんでした。
このことから、以下のような支持型・参加型に分類される具体的な行動が、リーダーが心理的安全性を醸成する際に取るべき実効性のある行動だと考えられます。
次に従業員が個人として取り組むことで、 心理的安全性を高められる行動について見ていきます。
エドモンドソンは彼女のTED Talk内で、チームの心理的安全性を高めるために個人にできる簡単な取り組みとして、次の3点を挙げています。
チームの心理的安全性を高める際には、個人としてのチームメンバーとリーダーの双方が上記の行動を意識することが重要です。
ここまで、心理的安全性の定義と効果、高め方について解説しました。
ここで注意しなければいけないのは、 心理的安全性の意味を履き違えてしまうと、反対に効果的なチーム作りに繋がらない可能性があるということです。
本項目では、心理的安全性を高める際に注意したい点について見ていきます。
心理的安全性が高い状況は、従業員同士が冗談を言い合うなどして仲が良い状態と捉えられることがあるかもしれません。
しかし、従業員同士の仲の良さと心理的安全性の高さは必ずしも比例せず、また、意味合いも異なります。
例えば、仲が良くてもビジネス面で不安や恐怖を感じさせる関係だと心理的安全性が高いとは言えません。
また、仲が良いが故に、拒絶される心配から譲歩し合い、自身の意見を表明できない状態であると心理的安全性は担保されていないということになります。
日本では多くの場合、協調性のある安定した関係が好まれる傾向にあると言えます。 反論や対立を避けたい人が集まると同調圧力の雰囲気を生み出し、多様な創造的なアイディアが発案されにくくなります。
この状態では、確かに、チーム内で波風が立たないため穏やかにプロジェクトを進められるかもしれませんが、それと同時に高度なアウトプットが期待できないので効果的なチームとは言えません。
つまり、同調圧力を重視して他のチームメンバーに対して反論や指摘しないことが生ぬるい議論を生むことになるのです。
チームの心理的安全性の程度を確認する際には、このようなただの馴れ合いの関係になっていないかということを見定める必要があります。
同調圧力が存在し議論が活発化しない馴れ合いの関係には、 チームメンバーの個性を十分に理解しておらず尊重できていないため、「どんな意見を出しても受け止めてもらえる」という完全な信頼が無い という背景があります。
反対に、チームメンバーそれぞれの活かせる強みと弱みを十分に理解した上で、指摘・補完しあえば、信頼関係が生まれます。
結果として、多角的な視点からのアウトプットが生まれやすく、活発な議論を行えます。
馴れ合いの関係でない、本物の心理的安全性を作るためには以下2点を意識してみてはいかがでしょうか。
ここまで、心理的安全性の定義、高める方法と注意点について解説しました。 次の項目では、従業員の心理的安全性が担保された状態にあるのか確認する際に有効な質問について見ていきます。
従業員が感じる心理的安全性の程度を知るために活用できる、エドモンドソンが1999年の論文にて提示した7つの質問をご紹介します。
1.チーム内で間違いを起こした際に非難されるか
2.チーム内で難解な課題を指摘しづらいか
3.チーム内で、他のメンバーが自身と異なるという理由で拒絶するメンバーがいるか
4.チーム内でリスクのある行動を取っても安全だと感じるか
5.他のチームメンバーに助けを求めることが難しいか
6.他のチームメンバーの努力を意図的に台無しにする行動を取るチームメンバーがいるか
7.自身のスキルや才能が尊重され活用されているか
これらの質問に対し、当てはまるものが多いほどチームでの心理的安全性は低いと言えます。 この質問をサーベイに組み入れ、従業員が感じている心理的安全性の程度に関して調査を行ってみると良いかもしれません。
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本記事では、チームの効果性に寄与する最重要要素である心理的安全性の測り方や高める方法について解説しました。
従業員が生き生きと働ける雰囲気である心理的安全性を担保することが重要である 一方で、コロナ禍においてリモートワークが進み、チームリーダーである立場の従業員が、職場環境の雰囲気を把握して従業員が心理的安全性を感じているのかを確認することが難しいことも少なくありません。
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是非、心理的安全性の醸成に活用してみてください。
今回は、効果的なチームにとって必要不可欠な要素である心理的安全性について解説しました。 心理的安全性について正しく理解することで、効果的なチーム作りや職場環境の改善に活用することが可能です。
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【出典元】 Edmondson, A. (1999, June). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. MIT - Massachusetts Institute of Technology. https://web.mit.edu/curhan/www/docs/Articles/15341_Readings/Group_Performance/Edmondson%20Psychological%20safety.pdf#page=2
Google re:Work - ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る. (n.d.). re:Work. https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/introduction/
Psychological safety and the critical role of leadership development. (2021, February 11). McKinsey & Company. https://www.mckinsey.com/business-functions/organization/our-insights/psychological-safety-and-the-critical-role-of-leadership-development#