生産性を上げるにはどうすればよいのでしょうか?日本の労働における生産性は主要先進国7か国の中で最下位を記録し続けています。グローバル化が進む現代社会において、業務の国際化や国際競争が苛烈になる中、世界を相手にして戦っていくためには生産性を上げることは必須です。この記事では業務の生産性を上げる方法やポイントをご紹介します。
【主なトピック】
【こんな方におすすめ】
生産性とはそもそも何でしょうか?この章では生産性の定義とその測定方法について解説していきます。
生産性の定義として一般的なのが「生産性とは、生産諸要素の有効利用の度合いである」というものです。つまり、生産性とは「人や金などの資源利用してどれほど利益を生み出すことができたか」を表します。
ではここで生産性の定義の根源であるヨーロッパ生産性本部が1959年に公表した「ヨーロッパ生産性本部生産性委員会 ローマ会議の報告と結論」による定義を紹介します。
生産性とは何よりも精神の態度であり,現存するものの進歩,あるいは不断の改善を目指す精神状態である。それは,今日は昨日よりもより良くなし得るという確信であり,さらに,明日は今日に優るという確信である。それは,現状がいかに優れたものと思われ,事実また優れていようとも,かかる現状に対する改善の意志である。それはまた,条件の変化に経済社会生活を不断に適応させていくことてあり,新しい技術と新しい方法を応用せんとする不断の努力であり,人間の進歩に対する信念である。
以上の引用からヨーロッパ生産性本部によれば生産性とは
だということが分かりました。生産性とはもともとは進化や改善を表す精神の状況だったのです。現代の生産性の意味からは離れていますが、数字だけを見るのではなくこうした精神に立ち返ることも大切かもしれません。
生産性を大まかな式で表すとこのようになります。
生産性=産出量÷投入量
しかし、具体的な生産性の測定方法は軸や視点によって変わってきます。
生産性の測定方法には2つの産出の種類と4つの視点からの投入量があります。それぞれについて説明していきましょう。
2つの産出の軸とは「物的生産性」と「付加価値生産性」です。
物的生産性とは生産するものの大きさや重さ、個数などの物量を単位とする測定方法を指します。生産物の価格は変動するため生産能力や生産効率の推移を測る際には金額でなく物量を単位とする物的生産性を使用します。
付加価値生産性とは企業が新しく生み出した金額で表せる付加価値を単位とする測定方法です。付加価値とは企業が純粋に生み出した価値のことで生産額(売上高)から原材料費や外注加工費、機械の修繕費、動力費など外部から購入した費用を除いたものです。
生産性の計算方法は投入量をどの視点で捉えるかによって変わってきます。4つの投入量の視点とは「人数」「時間」「資本」「全体」の4つです。これらの投入量で表された生産性をそれぞれ「労働生産性」「人時生産性」「資本生産性」「全要素生産性」と呼びます。一つ一つについて解説していきます。
労働生産性は従業員1人当たりの生産性を表します。従業員の力を最大限に利用出来ているか測るために使います。
労働生産性は
産出量÷従業員数
という式で表すことができます。
従業員の1時間当たりの労働生産性を示します。人時生産性の数値は、どのくらいの労働時間を投入した結果、いくら稼ぐことができたのかを測るために使います。労働時間を有効に使えているかどうかを測る指標となります。
人時生産性は
産出量÷総労働時間
という式で表すことができます。
資本生産性は資本1円につき付加価値が金額としてどれだけ創造されたかを表しています。
資本生産性で1年間で総資本の何倍の売上を上げたかが分かります。総資本が有効的に利用されているかを測るために使われます。
資本生産性は
産出量÷資本ストック量
という式で表すことができます。
全要素生産性とは労働、資本、原材料などのすべての生産要素について配慮したものです。全要素生産性を用いることで企業の技術進歩を測ることが出来ます。全要素生産性は
産出量÷(労働+資本+原材料等)合成投入量
という式で表すことができます。
このように、2つの産出量の軸と4つの投入量の視点によって8つの測定方法があるということが分かりました。測りたいものによって適切な指標を選びましょう。
前の章で述べた通り、生産性とは生産諸要素の有効利用の度合いのことでした。しかし、このような幅広い抽象的な定義からは生産性を上げる方法は思い浮かびづらいでしょう。産業社会では多くの企業が激しく競い合っており、生産性はどれだけ生産する力を持っているかを表す指標というよりは、競争力のある製品を生産する力だといえます。このような視点で生産性を見ると
「生産性=産出(製品の競争力向上)÷投入(生産活動の効率化)」
と捉えることができるでしょう。
では製品の競争力を向上させ、生産活動を効率化するためにはどうすればいいのでしょうか。ここでは個人の生産性を上げる施策として3つの改善策をご紹介します。
個人の施策によって上げられる生産性は人時生産性が主になります。人時生産性を上げるためには労働時間を減らす、ないしは一定時間内の集中力を上げて業務の密度を上げることが必須になります。業務の密度を上げるためには現在の業務内容を見直し、時間短縮や効率向上などの改善出来る点を洗い出す必要があるでしょう。そのための最初のステップは業務内容を可視化し、誰もが見えるようにすることです。 業務内容を改善するためのフローをご紹介します。
まずは大きなタスクを細分化しましょう。小さなタスクにすることで実際の業務として何をやっているかが把握しやすくなります。具体的にやるべき作業が明確になり、改善できる点も見つけやすくなります。また、副次的な効果として一つ一つのタスクの達成のハードルが下がることでモチベーションが高まるという効果もあります。
作業を細分化した際に見つかった作業の無駄をなくすための改善策を講じ、周りに報告しましょう。このことにより他の人にとって必要な作業を独断で簡略化してしまうことを防ぎます。また、権限の移譲が必要な場合その情報を共有しなければコミュニケーションにトラブルが発生する可能性があります。また、他の人から業務の改善策への助言をもらうことによって学習の機会が増えるという効果もあります。
改善策を実行しましょう。実際に前にやっていた業務フローと比べてどのようなメリット、デメリットがあるのかを記録しておきましょう。
自身の業務フローを見直し、改善させた後にはその改善策が最善であったかを検討しましょう。試験期間を設けることで柔軟な対応がしやすくなります。トライ&エラーを繰り返し最適解を探し出せる環境を作りましょう。
以上のようなフローで仕事を可視化し、改善することによって作業効率が上がるだけでなく、業務が透明化され業務報告の定例をなくせたり余計なやりとりを減らすこともできます。
マルチタスクとは同時に2つ以上の作業を行うことです。同時に沢山の仕事をこなすことは一見効率的なようですが実はタスクを切り替えるときに「スイッチングコスト」がかかります。脳のある部分は物事を順番に処理することしかできません。業務中に電話などの割り込みが発生した場合、元の業務への集中状態に戻るのに15分以上がかかると言われています。また、マルチタスクを行うことでストレスが増える、エラーが増える、短期記憶のグレードが下がる等のデメリットがあることが証明されています。複雑なタスクは一つに絞り集中して片付けるようにしましょう。
コミュニケーションを活発に行うことは大切ですが、必要な情報を一回で得られず何度も情報の往復を繰り返すのは得策ではありません。通知が来るたびに業務を中断しなければなりませんしそのたびに集中力を高める作業を行うのは脳への負担になります。例えばメールのやり取りであれば
等を意識することによってメールを書く時間を短縮できるだけでなく、やり取りの回数を減らすことで相手にも負担をかけずに済みます。
以上のような点を普段から個人で意識することで日常的な業務の生産性を底上げすることができます。
前の章では個人で生産性を上げる方法を紹介していきました。ではチームの生産性を向上させるためにはどのような方法が考えられるでしょうか。チーム全体の生産性を上げる方法としては以下5つが挙げられます。
チームの生産性を上げることで労働生産性の向上が期待できます。チーム一人一人の力を最大限に引き出すためにはお互いの邪魔をしないだけでなく、チーム内で能力を高めあっていく工夫が必要でしょう。チームメンバー同士の信頼度を上げ、モチベーションを高めるためには業務の経験談を積極的に話すことが効果的です。職場内における業務経験談についての研究では、成功経験談も失敗経験談も業務能力を向上させるということがわかっています。
業務としてのコミュニケーション以外にも積極的に会話をするきっかけとなる取り組みについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
チームでプロジェクトを動かす際には、どの仕事を誰がやっているかを把握する必要があります。その人がどんな仕事を任されているかが透明化されることで以下のようなメリットがあります。
チームメンバーの任されている仕事量の偏りを発見しやすくなり、仕事の偏りを調整しやすくなります。
自分の業務がチームの何に貢献しているかを知ることができ、仕事へのモチベーションを上げることができます。
誰がどの業務を任されているかを知ることによって誰に質問をすればいいのかわからないという事態を防ぎ、仕事のスピードを上げることができます。
「誰の仕事ということはないけどいつもなんとなく誰かがやっている仕事」をなくすことができます。責任の所在がはっきりとすることで伝達ミスによる業務のロストがなくなります。
チーム内でのマナーを決めることによってお互い快適な環境で業務を行うことができます。チーム規約を決めるための会議を執り行いましょう。このチーム規約を決める会議の参加者は12人以下がベストだといわれています。また、個人の集中したい時間帯を共有し、その時間は連絡やミーティングをしない等のルールを決めることで個人の生産性をチーム全体で支援することができます。
現代、リモートワークの推進によりコミュニケーションツールが大きく進化しています。行いたいコミュニケーションの形に合わせたコミュニケーションツールを選択することによってより円滑なコミュニケーションを図ることができます。
コミュニケーションツールについてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
チームで仕事をする際には会議はつきものです。この会議の効果を最大限に引き出すためには会議時間の短縮と会議の成果の最大化に留意する必要があります。有用な会議をするためのポイントを3つご紹介します。
その会議のゴールが決まっていることによって会議の前準備で何をするべきかが明確になります。また、会議の終わりがぐだぐだになることを防ぐことができ、会議時間の短縮につながります。「何かを決めるための会議」と「情報交換・共有のための会議」を分け、出席のルールを会議の目的によって変えると会議の成果を最大化することにも繋がります。
重要なのは決定の場に立ち会うことではなく、会議に参加することです。チームなのであれば全員で物事を決めるのが自然なように思いますが、会議で一言も発さないのであればその人はいないも同然です。当然ですが物事の決定は人数が少ない方がやりやすいでしょう。会議に参加するのは本当に必要な人に限定し、決定事項を共有することで会議時間が短縮でき、個人の時間が会議によって削られるのを防ぐことができます。
誰でもミスは犯すものです。失敗をしたときにはどうしたら改善できるかを考えることが重要です。失敗自体を隠すことで、の会議が丸く収まったとしても、それは会議の成果が最大化されたとは言えません。会議では悪いニュースほど抱え込まず早いうちに共有し全体に助けを求めることで被害が小さいうちに最善の対処をとることができます。また、副次的な効果として失敗しても許されるという認識を持つことができチーム全体の心理的安全性が高まるというメリットもあります。
心理的安全性については以下の記事をご覧ください。
この3つのポイントを押さえることで最小限の時間で最大限の効果を得る会議が期待できます。
これらのような点に注意してチームを動かしていくことによってチームメンバーの労働コストを削減し、生産力を上げることでチームの生産性を上げることができます。
社会情勢の変化により多くのの仕事でリモートワークが推進されています。突然の労働環境の変化についていけず、最大パフォーマンスが発揮できていないという人も多いのではないでしょうか。この章ではリモートワークにおける生産性を上げるための方法を3つご紹介します。
リモートワークが進むと正確な労働時間を把握することが難しくなります。どうしても自己申告制になってしまうからです。リモートワークにおいては成果による評価制度を設けるべきでしょう。成果主義の評価体制を採用するためには成果を分かりやすくするために仕事を細かく、短期間の段階に分解して社員に振り分ける必要があります。タスクを細分化することで長期プロジェクトでの問題を早期発見・解決することができるという副次的なメリットもあります。また、社員の時間を縛るのではなく、柔軟性を与えることで社員が働きやすい時間に働けるため成果を上げやすくなり最終的に生産性を上げることにつながります。
リモートワークでは従業員がさぼると決めつけるべきではありません。ある調査ではリモートワークによってむしろ働きすぎてしまうということが証明されています。同時に気を付けなければならないのは燃え尽き症候群(バーンアウト)です。リモートワークでは仕事のスイッチのオン・オフが困難です。国際的な時差のある業務の場合はなおさらでしょう。ベストな仕事をするためには自分のエネルギーレベルに注意を払い、意識的にリラックスの時間を設けることが大切です。ここで有効なのがポモドーロテクニックです。ポモドーロテクニックとは仕事を25分ずつのセッションに分け、5分程度の短い休憩をはさんで行う時間管理テクニックです。イタリア人のフランチェスコ・シリロにより生み出された集中力を最大にするテクニックです。
職場は働くための場所なので働くのに適した机やインテリアなどの配置に配慮しています。しかし、自宅で働くことになるリモートワークでは仕事をする空間が仕事に適していないことがよくあります。自宅を働くことに適した環境にするために以下のポイントについて考慮してみましょう。
アイデアをインプットするときには物が沢山あるカオスな空間の方が情報が入ってきやすく、アウトプットする際には集中できる閉塞的な空間の方がパフォーマンスを発揮できるそうです。2つの空間を分け、目的によって使い分けると良いでしょう。
リモートワークと腰痛は切っても切り離せない問題です。自分の体にフィットした椅子を選択することでリモートワークにおけるストレスを軽減させることができます。また、高い机を用意して立って作業するスタンディングワークをことで腰痛や猫背、首痛が改善されます。
自分一人では集中できないという人は外に集中できる場所を探しましょう。カフェや図書館等も考えられますが、最近よく聞くようになったのはコワーキングスペースです。コワーキングスペースは誰でも使える共有オフィスです。レストラン等とは異なり長時間いても周囲の目が気にならず、Wi-Fi等の仕事をするうえで必要な環境も整備されています。仕事空間として自分にとって最適な場所を探しましょう。
このようにリモートワークにおいても労働環境を整えることで業務への意欲を増大させ、モチベーションを上げることで生産性を上げることができます。
社員一人一人の生産性の向上には業務の課題をタイムリーに把握することが求められます。しかし、リモートワークが促進される現代では社員の抱えている課題を掴みづらいというのが実情です。そこでおすすめしたいツールが 「wellday」 です。「wellday」 を使えばチャットツールから自動で社員のエンゲージメントやストレス値を測ることで業務に課題を感じている社員を驚くほど早く、正確に特定します。業務に課題を感じている社員から直接話を聞くなどすることで業務課題を把握し生産性を向上させるための改善策を講じやすくなります。
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今回の記事では、チームやリモートワークで生産性を上げる方法を解説しました。
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