昨今「組織開発」というワードに注目が集まっています。近年、会社を取り巻く環境には様々な変化が起きており、会社に柔軟性が求められるためです。 しかし、ひとくちに組織開発といっても具体的な内容は簡単に想像できないでしょう。
今回の記事では、組織開発のフレームワークと6つのプロセスを解説します。その上で事例を紹介するので、組織開発のイメージを具体化するために役立ててみてください。
組織開発には共通するプロセスがあるので、それらを理解し活用することであなたの会社の目標を達成するアクションを実行しましょう。
【主なトピック】
【こんな方におすすめ】
はじめに、そもそも組織開発とはどういったものなのかについて解説します。近しい領域にある「人材開発」との違い、組織開発が求められる背景を確認し、あなたの会社に合う組織開発のイメージを構築する土台としてみてください。
組織開発は1950年代にアメリカで提唱された概念であり、「内部者が自らの組織を適切なものに改善する行動、またはそのための支援」を指します。
このように組織開発は抽象的な概念であり、唯一無二の手法があるものではありません。しかし組織開発は多くの場合、次の実現を目的とします。
●円滑なコミュニケーションが行われる組織づくり
●風通しの良い組織
●ライフワークバランス
●所属するメンバーが能力を発揮できる環境
●組織としての目標の達成
つまり、組織開発とは組織を改善する取組の一切を指す言葉なのです。
現在、組織開発に大きな注目が集まっています。それは、IT技術の発達、働き方の変化に応じて、組織も柔軟な変化を求められる時代のためです。特に日本はこれまで終身雇用・年功序列が当たり前でしたが、現在は違います。フリーランスとして働く人も増え、ライフワークバランスを重視する考えも広がってきました。
自らの価値観に合わない職場があれば、転職のハードルも低くなっています。さらには外国人や障害者と共に働く機会も増えました。このように現代における激しい変化の中で生き残り、目標を達成していくためには組織に柔軟性が求められるのです。
組織開発と近しい概念に人材開発があります。組織開発は組織内における関係性を対象として開発するのに対し、人材開発は人を対象とした開発をする点が大きな違いです。
例えば、組織における特定の個人のモチベーションを改善する必要がある場合、組織開発では、特定の人物と上司や同僚の関係性の面から改善を試みます。特定の人物と上司のコミュニケーションは適切に行われているか、同僚との業務分担は適切かといった側面から改善を目指すのです。一方で、人材開発では特定の個人と面談を実施して、モチベーションの改善を目指します。
このように組織開発と人材開発は開発の対象が異なりますが、どちらも組織をより良くしようとする試みである点は同じです。
前述の通り、組織開発自体は抽象的な概念です。組織開発の重要性を把握できても、実際に何から着手すべきかわからない場合もあるでしょう。
ここでは組織開発で用いられる4つのフレームワークを解説します。組織開発の具体的な手法としてどういったものがあるかを確認し、あなたの会社に必要な組織開発の具体的なイメージを掴む手がかりとしてください。
組織開発のフレームワークの1つに「コーチング」があります。コーチングは、部下などの特定の人物との対話を実施し、新しい気づきやアドバイスを提供するものです。ポイントは、「なぜ?」と使って対話をする点です。
例えば、部下が失敗をした際に、上司から「◯◯◯を改善してください」と指示するのは簡単です。しかし、それでは部下が自らの中にミスをした理由を落とし込めない恐れがあります。また、部下の自発的な思考を促す形にもならないでしょう。
そのためコーチングでは、部下に「なぜミスが起こったと思う?」「ミスを防ぐために必要な対策はどのようなものだと思う?」のように「なぜ?」と使って対話をしていきます。これにより部下が自ら思考する習慣が養われ、部下の中に応用力が育つ可能性も生まれます。
先ほどのコーチングと対象的に、対話を大規模に展開するのがフューチャーサーチです。フューチャーサーチでは次のプロセスをふみます。
フューチャーサーチの特徴は、1対1の対話ではなく、経営課題に関連する多様な人物が議論に参加する点です。そのため関係者の利害が常に一致するとは限りません。しかし多様な人物が議論に参加するからこそ経営課題を解決する多様な視点を得られるのです。
続いて、OKR(Objectives and Key Results)について解説します。OKRは、会社全体の目標から逆算する形で「会社」「チーム」「個人」それぞれで「達成すべき目標」と「主要な成果」を定め、実現を目指していくフレームワークです。
「達成すべき目標」は次のポイントに気をつけながら策定していきます。
●達成が簡単すぎるもの、達成不可能なものは避ける
●定性的なものを策定する
●目標達成の期限を明確にする
「主要な成果」は「達成すべき目標」を実現するための具体的な指標であり、次のポイントに気をつけながら策定します。
●達成が簡単すぎるもの、達成不可能なものは避ける
●定量的で計測可能な数値を策定する
●担当者にて改善できる指標を策定する
こうして設定した「達成すべき目標」と「主要な成果」が会社、チーム、個人において設定され、それらが連携する形で会社全体の目標が実現されるたてつけです。
AIはアプリシエイティブ・インクワイアリー(Appreciative Inquiry)の略で、設定した経営課題をポジティブアプローチと4Dサイクルを用いて解決する手法です。以下では、AIを理解するために、まずはポジティブアプローチと4Dサイクルについて確認しましょう。
ポジティブアプローチはその名の通り、課題を解決する際にポジティブな側面を強調したアプローチを行う点にあります。通常の問題解決型アプローチでは、問題と原因を特定して、解決方法を検討していきます。一方で、ポジティブアプローチでは、会社、チームまたは個人における最高の価値を見つけ出し、さらには最高の状況を見つけ、その上で各々がどうあるべきかを確認していきます。このようにAIはポジティブアプローチを用いる点で大きな特徴を有しています。
続いて4Dプロセスについて確認しましょう。4Dプロセスは次のプロセスをふみます。
●Discovery:個人や組織の真の価値を発見
●Dream:課題解決に向けて個人や組織の最高の可能性を自由にイメージ
●Design:達成したい最高の状況の共通認識を作る
●Destiny:アクションプランを策定し、持続的に取り組む
このようにAIではあくまでポジティブな視点を通して、4Dプロセスを実行していきます。
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ここまで組織開発のフレームワークを解説しましたが、具体的なイメージはついたでしょうか?冒頭でも述べた通り、組織開発に決まった方法はありません。しかし多くのフレームワークに共通するプロセスは存在します。ここでは組織開発を実現するプロセスを6つに分けて解説します。
組織開発では、はじめにゴールを明確に設定します。経営陣による経営課題の策定でもよいですし、チームにおけるチーム目標の設定でもよいです。また定性的に設定する場合もあれば、定量的に設定する場合もあります。
いずれの場合であっても、組織としてどうあるべきかを念頭におきながら設定していきましょう。例えばチームで目標を設定する場合は、はじめにチームでアンケートをとってもよいです。会社、チーム、個人において目指すべきゴールを明確に設定しましょう。
ゴールを設定した後は、現状と理想の乖離の中から課題を把握していきます。課題は会社ごとチームごと個人ごとに把握できると理想でしょう。課題設定で複数の人物の利害が複雑に絡み合う場合も少なくありません。そうした場合は、はじめに情報整理を実施していきます。
課題を整理する過程で、理想のゴールを実現するためのキーパーソンにも当たりをつけましょう。キーパーソンとしては社内やチームでの影響力が大きい人物や重要なポジションにいる人物を見つけてください。そしてキーパーソンには、今後のプロセスについて事前に話を通しておくと組織開発がスムーズになります。
キーパーソンと共に課題を把握したら、課題に関連するメンバー全員に課題を共有していきます。会社全体で達成すべきゴールを設定した場合は会社に関連する人物全員に共有し、チームで達成すべきゴールを設定した場合はチームメンバー全員に共有します。関係者全員でゴールと課題について共通認識を持つと、ゴールまでの過程でぶれが少なくなります。
関係者全員でゴールと課題を共有したら、実際に課題を解決するアクションに移ります。その際のポイントは小さな目標から取り組むことです。
いきなり会社全体の部署を巻き込んだ取組みを実施しても目標までたどり着けない恐れがあります。そのため意思疎通のしやすい部署単位で、無理のない数字から目標に取り組んでいきましょう。また小さな目標から取り組むことで、低コスト・短期間で効果測定ができるメリットもあります。
改題を解決するアクションを繰り返すとデータが蓄積されていきます。ここからは検証の作業も開始していきます。小さな目標を達成できていないポイントがある場合、原因と対策を検討します。並行して目標達成が上手くいったポイントについても原因を解明していきます。
こうした検証結果を上手くいかなかったポイントに適応させていってください。このように部署単位で検証を繰り返して成功パターンを見つけたら、それを組織全体に広げていきましょう。
ここまでたどり着くと会社全体でゴールをみすえてアクションを実施する状態になっているでしょう。最後のプロセスとしては部署ごとに組織開発のプロセスを自走できる状態を目指します。自走できる体制を作る施策としては次のものがあります。
●成功事例の継続的な共有
●マニュアルの策定
こうしたプロセスを丁寧に実施していくと組織開発の成果が出てくるでしょう。
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ここまでの内容で組織開発について具体的なイメージができたでしょうか?フレームワークとプロセスを理解すると、あなたの会社に必要な組織開発のあり方も見えてくるはずです。
ここでは1つの参考例としてヤマトホールディングス株式会社の組織開発について紹介します。
【出典】戦略パートナー/チェンジ・エージェントとしての
人事部が取り組む組織開発
ヤマトホールディングスは、社会から愛される企業になるために次の取組を実施しています。
●社内教育用のDVDを1年に1回見る機会を儲ける
●リーダーは立候補性を採用
●各階層の上位下位10パーセントずつを入れ替える仕組み
●リーダーの評価は事業ミッション50パーセント、人間性評価50パーセント
このようにリーダーの立候補制を取り入れたり、リーダーに対して人間性に基づく評価をしたりするユニークな取組みを実施しています。それらと社内教育用DVDや入れ替えルールを組み合わせて、社会から愛される企業を目指しています。
また、リーダー同士で価値判断を共有するために月に1回、土日に集まって事業の方向性や価値を話し合う取組みを実施しています。そもそも会議ではリーダー同士の価値観などの深い話をできません。
オフサイトミーティングでは、次のような内容を話します。
●生い立ち
●恋愛
●入社理由
●仕事の価値
●事業の方向性
こうした深い部分から話し始めて仕事の話に発展させるのがヤマトホールディングスの取組みです。
ヤマトホールディングスでは、サボれない、サボらない仕組みとして1つ1つのセンターを7〜10人のセールスドライバーで構成しています。そのため全国に6,000の宅急便センターがあります。その上で、社員の意識調査やリーダーが部下からどう思われているかをはじめとした360度評価を実施するのです。
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今回は組織開発について解説しました。組織開発自体は一定の範囲を持つ抽象的な言葉であり、唯一無二の手法があるわけではありません。
組織開発では、ゴールを明確化した上で、課題をメンバーと共有し、小さな目標を定めてアクションと検証を実行していきます。組織開発を行うフレームワークとしては、コーチング、フューチャーサーチ、OKR、AIなどがあります。
記事で紹介した成功事例を参考にしながら、あなたの会社の目標を達成する組織開発に着手してみてください。
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