近年、職場でのストレスを感じる労働者の割合は勢いを止めることを知らず、約60%もの労働者が職業生活で強いストレスを感じると答えています※。日本国内での年間の自殺者総数の2万人のうち6千人以上は労働者であると言われており、社会的にも注目を集めています。
ここでは、厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」をもとに、メンタルヘルス対策の進め方や企業の対策事例などを解説していくので最後までご覧ください。
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【主なトピック】
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厚生労働省では従業員の健康と安全を守るために「第 13 次労働災害防止計画」を策定しています。この計画は8つの重点施策を定めており、その一つに職場のメンタルヘルス対策の推進が含まれています。 平成30年度時点でメンタルヘルスケアに取り組んでいる企業の割合は59.2%であり、厚生労働省が打ち出した目標の80%には及ばないのが現状です。
「心の健康づくり計画」とは、企業側が労働者を健康に保つためにメンタルヘルス対策の基本方針に関する内容をまとめたものです。企業は労働安全衛生法(※)によりこの「心の健康づくり計画」を策定するよう推奨されています。当計画は努力義務の範囲内として捉えられるので作成しなければ法律違反になるということはありませんが、メンタルヘルスケアを推進するうえで必要なものとして位置づけられているので対策の優先順位を確認したうえで作成するのが望ましいでしょう。
メンタルヘルスケアは、事業者が中長期的な方針を立てて現場に則した取組を行うことが大切です。そのため、衛生委員会等で十分に調査審議を行い自社にあった心の健康づくり計画を策定することが大事です。なおこの計画では、後述するストレスチェック制度の位置づけを明確にしましょう。
作成の際には衛生委員会等において十分な審議をしたうえで労働者健康安全機構が定めた以下の7項目に関する内容を盛り込む必要がありますが、各事業場の利用可能な資源、対策が必要な項目などと照らし合わせて自社にあった計画を練ることが大切です。
- 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
- 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
- 事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
- メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
- 労働者の健康情報の保護に関すること
- 心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
- その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること
例えば 2. の推進の体制に関する方針を取り決める際は特定の企業によっては事業内産業保健スタッフ、人事労務部門、外部機関などがそれぞれ役割を果たす場合があるかもしれませんが、小規模事業場の場合はそれらすべての資源を持ち合わせていないこともあります。
また、計画の実施においては 3. のように前提として未然予防に力を入れますが、早期発見に力をいれるのか、職場復帰を重点的に支援するのかなど各事業場の状況に合わせて行っていく必要があります。 都道府県産業保健総合支援センターなどの事業場外資源に相談して自社にあった計画を策定しましょう。
心の健康づくり計画について紹介してきましたが、この計画は企業による一方的な支援だけでは不十分です。網羅的にケアしていくためには「4つのケア」を意識し、継続的・計画的に対策していく必要があります。「4つのケア」とは「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」及び「事業場外資源によるケア」のことを示します。以下、それぞれのケアについて解説しました。
事業者は従業員が自分たちでメンタルヘルスケアを行えるよう体制を整える必要があります。 企業は従業員および管理者が
を行える環境を用意する必要があります。
そのためにメンタルヘルスケアに関する教育研修や情報提供をしていくことが求められます。
メンタルヘルス対策の中で、管理監督者は重要な役割を担っています。 管理監督者は
などを徹底する必要があります。
部下に遅刻、早退、欠勤が増えたり、表情に活気がなくなったりといったささいな変化を把握し、必要であれば相談に乗るなどの対応をしていくことが大切です。
産業医、衛生管理者、保健師等は「セルフケア」、「ラインケア」が実施されるよう支援していくと同時に、心の健康づくり計画が円滑に実施されるよう以下の項目の役割を担うことになります。
都道府県産業保健指導センターなどの事業場外資源は
などを手助けしてくれるので積極的に活用していきましょう。
ただ、ここで留意しておきたいのは、前述したとおり各事業場の資源などを考えてケアしていくことが大切です。例えば小規模な事業場においてはセルフケア、ラインによるケアを軸として対策可能なところから取り組みを進めることが望ましいです。
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メンタルヘルス不調の予防は3つの段階にわけて取り組んでいくことができます。それは、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ目的の「一次予防」、メンタルヘルス不調の早期発見および適切な対応をすることを目的とする「二次予防」、メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援を目的とする「三次予防」です。なお、これらの取り組みも事業場ごとに状況が異なるので自社にあった進め方をするのが望ましいです。それぞれの段階の予防を詳しく見ていきましょう。
一次予防とは、従業員がメンタルヘルス不調になることを防ぐための事前対策です。
具体的な例としてメンタルヘルスを推進するための教育研修や情報提供があげられます。これは労働者に対する対策だけではなく、管理監督者、事業場内産業健康スタッフ等も含まれます。
他にもストレスチェック制度を活用した職場環境等の把握と改善があげられます。日常の職場管理・従業員へのサーベイを通して作業環境・労働時間・ハラスメントなどに関する問題点を把握するとともに改善を図る必要があります。
二次予防とは、従業員のメンタルヘルス不調を早期発見し、適切に対応していくことです。
メンタルヘルス対策において一次予防でストレス要因を除去することは重要ですが万が一それでもメンタルヘルス不調に陥る従業員が出てきてしまった際、すぐ変化に気づき適切に対応することが重要です。
そのためには以下の三つの体制を整備することが効果的です。
◆ 定期的なセルフチェックと労働者が自発的に相談できる環境
◆ 管理監督者・事業場内産業保健スタッフなどによる相談対応
◆ 労働者の家族に基礎知識を伝授し気づきや対応をしてもらう
このように従業員のメンタルヘルス不調にすぐに気づける体制を構築し、深刻な事態になる前に専門家につなぐなどして対応することが何より大切です。
三次予防とは、メンタルヘルス不調に陥った従業員が円滑に職場復帰できるよう支援していくことです。
体調を崩して休業していた従業員がスムーズに職場に戻ってこれるよう、職場復帰支援プログラムの策定などを衛生委員会等で調査審議する必要があります。ここでは持続的に復帰支援がおこなわれるよう体制整備をしていきましょう。
従業員のメンタルヘルス対策を計画・実施する際は以上の観点が重要となります。衛生委員会等で十分に審議し、必要に応じて4つのケアと三段階の予防を取り入れて「心の健康づくり計画」を策定しましょう。
ここまで「心の健康づくり計画」、4つのケア、三段階の予防について解説してきました。ここでは、上で説明した一次予防にあたるストレスチェック制度について解説していきます。ストレスチェック制度は比較的新しい制度であり、企業におけるメンタルヘルスマネジメントにおいて重要な役割を担っているため詳しく見ていきましょう。
ストレスチェック制度とは2015年12月1日に施行された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」により新しく設けられた制度です。従業員に対してストレスに関する質問票を記入してもらい、その結果に基づいた面接指導の実施を義務付ける制度です。労働安全衛生法に基づき、従業員を50人以上抱える企業は従業員の心理的負担を把握するために最低一年に一回はストレスチェックを実施することが義務付けられています。
この制度は従業員のストレスの早期発見や、ストレスの要因となる職場環境の改善(一次予防)を目的としています(※)。なお、ストレスチェック制度は各企業の総合的なメンタルヘルス対策の取り組みとして位置づけられる必要があります。よって、ストレスチェック制度の規定の策定は心の健康づくり計画の一部として同時に行っても構いません。
ストレスチェック制度のポイントは以下の3つがあげられます。
ここではストレスチェックを実施するにあたり留意しておくべき点についてご紹介します。
ストレスチェックの結果を従業員に通知し、高ストレス者として診断され本人から面接の申し出があった場合、医師は面接指導を行うことが義務付けられています。医師が、面接指導の結果従業員が就労上の措置を講じる必要があると判断した場合は、事業者は指示に応じる必要があります。
面接指導や、その後の措置を行うにあたって従業員に対する不利益な取り扱いは法律上禁止されています。例えば、面接指導の結果を理由とした解雇、退職推奨、不当な職位変更などは行ってはいけません。
ストレスチェックの実施者は調査結果を組織ごとに集計し、各職場ごとのストレス状況を分析します。 組織ごとの集計・分析は事業者に通知され、それに応じて事業者は組織・職場環境の改善に取り組みます。
以上のようなサイクルを最低年に一度行うことで職場環境の改善に役立てることができます。従業員のメンタルヘルスをきちんと把握し、問題の早期発見(一次予防)をしましょう。
以上メンタルヘルス対策の詳細を解説してきました。ここではメンタルヘルス対策に力を入れている企業の事例を2つご紹介します。
エーオンジャパングループはtoBの保険代理店として経営上のリスクマネジメントや保険に関するコンサルティング、人事コンサルティングのサービスを提供しています。日本国内グループの従業員は約250名ほどです。
同社はメンタルヘルス対策において一次予防に力を入れているそうです。その最たる例として、コミュニケーションの活性化があげられます。もともと職場内でも部門ごとに異なる会社を担当している関係上、コミュニケーションが少なく周囲の仲間を知らない、知る機会がないといった課題があったそうです。
そこで同社は趣味を通してお互いを知り合う機会を提供しようと「趣味の会」という枠組みを作りました。この取り組みのおかげで職場内で名前や業務内容が不明だった相手を知ることにつながり、いつもと様子が違うなと思った際に気軽に声をかけることができるようになったそうです。
他にも「コミュニケーションセミナー」を実施して24時間電話無料サービスの認知を広めたり、「Thank youカードキャンペーン」の実施を通して仕事に対するモチベーションをあげたりとメンタルヘルス不調の未然予防に力を入れています。
このようにコミュニケーションが活性化される機会を会社が提供することでお互いについて知ることができます。これはメンタルヘルス不調時の変化に早期に気づく二次予防にもつながります。
ヤフー株式会社はインターネット上の広告事業を中心とした情報通信会社です。 従業員数は6,993人(2020年3月31日)です。
同社は1on1を通した従業員の変化の早期発見(一次予防)に力を入れており、同時に三次予防の職場復帰支援にも力を入れています。2014年まで職場復帰プログラムには統一した規定や明確な基準が存在しなかったそうですが、出社の継続率を上げたいという思いからプログラムを全体的に見直したそうです。
2014年に作り直した職場復帰プログラムでは7つの手順によって支援が進められます。ここでは休業中のコンディションの確認およびサポート、復職時の働き方のプランの検討、仮復職、正式復職時のサポートなど、「4つのケア」をベースに段階的に支援が行われます。この体系化されたプログラムにより、どの産業医が担当しても統一された視点で支援の判断ができるようになったそうです。また、復帰支援の検討会や面談には上司も関わるので経緯や注意点を把握することができ、連携をスムーズに進めることができるそうです。
これらのプログラムの導入が功をなし、同社の復職1年後の出社継続率は導入前の68%から、79%へと改善が見られたそうです。
ヤフー株式会社はこのように組織の変化に柔軟に対応してプログラムをブラッシュアップして日々働きやすい職場環境の構築に務めています。
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ストレスチェック制度の導入が義務化されてから従業員のメンタルヘルスを把握することが身近になり、一次予防が徹底されるようになりました。しかしこのストレスチェック、国が指定する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を利用したとしてもかなり大規模なサーベイになり、答える従業員側の負担にもなるので定期的に実施するのは現実的ではありません。年に一度のストレスチェックでは従業員の細かい変化を把握することができず、気づいたころには手遅れになってしまうこともあり得ます。
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この記事では厚生労働省が推進しているメンタルヘルス対策についてご紹介しました。メンタルヘルス対策は「心の健康づくり計画」の策定、三段階の予防、「4つのケア」を円滑に行うことが重要です。また、ストレスチェック制度では対応しきれない要素はエンプロイーサクセスプラットフォームwelldayの利用をご検討ください。もし少しでもご興味がございましたら気軽にお問い合わせください。
参考元:
厚生労働省独立行政法人労働者健康安全機構, 2020年7月, 職場における心の健康づくり
厚生労働省労働基準局安全衛生部, 2016年4月, 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
厚生労働省 こころの耳, 企業の取り組み事例:職場復帰支援の取り組み事例|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト