労働人口の減少、先行きの読めない経済動向、ビッグデータやAIといった先端技術の台頭。企業の経営環境はめまぐるしく変化しています。こうした中で必要性が高まっているのが意識改革です。
適切なプロセスに沿って実現される意識改革は、企業の業績と生産性を向上させる可能性を秘めています。また組織で働く従業員のパフォーマンスを高める効果も期待できます。
本記事では、意識改革の目的を解説した上で、実現プロセスと成功のポイントを紹介します。あなたの会社で意識改革を成功させる参考にしてください。
本セミナーでは、急成長ベンチャーの人事・経営層・マネージャーの皆様を対象に、組織全体でメンタル不調を予防しフォローする仕組みづくりをサポートすべく、「急成長を導くマネージャーの型」の著者兼、株式会社EVeM代表取締役CEOの長村禎庸氏をお招きし、メンタルヘルスが落ち込んでしまったメンバーや、ストレス負荷が高まっているメンバーとの対話の「型」を解説します。
【こんな方におすすめ】
意識改革とは、企業における個人や組織が目的を達成するための考え方、態度、方法などを大きく変える意味で使われます。意識改革が使われる場面に制限はありません。そのため、ある企業は売上高を向上させるために意識改革を実行し、ある企業は残業を減らすために意識改革を実行します。
いずれの場合も、従来の方法論では到達できない目的を実現するために、個人や組織に大きな変化を期待するのが意識改革です。 意識改革を実現すると、個人も組織もこれまでとは違った価値観や考え方をもって事業に臨めるようになります。
冒頭でも述べた通り、現代における経営環境は変化のスピードが早く、予測困難です。こうした環境で「Going Concern(継続企業の前提)」を実現するためには、企業に柔軟性が求められます。
そして柔軟性を実現するためにも意識改革は重要です。なぜならば企業の柔軟性は、そこで働く経営層、管理職、従業員の柔軟性に影響を受けるためです。このように意識改革は現代における事業運営に大きな意味を持ちます。あなたも自らの属する組織における従業員の意識改革を実現しましょう。
意識改革がどんなものか理解できたところで、意識改革の具体的な4つの目的について確認しましょう。先述した通り、意識改革は様々な場面で用いられます。しかし、全ての場面における意識改革を一度に実現しようとしても上手くいきません。
まずは、以下で紹介する4つの目的の中から意識改革に着手すべきものを見つけましょう。
企業における意識改革はしばしば業績アップのために行われます。そもそも企業とは、営利の目的で事業活動を営む主体であり、業績の向上は多くの企業に共通する目標の一つだからです。
特にスタートアップから企業の規模が徐々に大きくなるフェーズにおいて意識改革は重要です。例えば、企業規模が拡大するフェーズでは、これまで一人の優秀な人物が担っていた業務を組織化しなければなりません。どんなに優秀な人であっても一人で提供できるリソースには限界があるためです。
こうした場合に一人の優秀な人物が属人的な業務にこだわると企業はリスクを抱えます。そのため意識改革を行って、属人的な業務を組織に落とし込む必要があるのです。
また生産性の向上のために意識改革が使われる場合も少なくありません。特に今後は国内の労働人口がどんどん減っていくため、一人ひとりの生産性を向上させて企業規模を維持するニーズが生まれます。
この場合、従業員がただ指示に従うだけの状態を脱して、一人ひとりが目的意識をもって自ら業務に望み、改善提案できるような組織を作ることが求められます。従業員一人ひとりの業務に対する姿勢の変化はまさに意識改革に求められる成果です。
個人や組織のパフォーマンス向上にも意識改革は役立ちます。特に業務フローが長期にわたってブラッシュアップされていない場合、そこに新しい理論や技術を当てはめることでパフォーマンスが飛躍的に向上する可能性があります。こうした大きな変化も、意識改革によりこれまでの慣習を改めるところから始まるのです。
現代において事業は正社員のみで構成されるものではなくなりつつあります。パートやアルバイトはもちろんのこと、フリーランスを活用しながら事業を維持・拡大させる企業が増えています。また企業同士の提携も当然のものとなっています。
このように自社の枠を超えた提携により事業を展開することも意識改革の目指すところです。また業務スキルの面でも多様な人材を募る企業が増えています。特にITやDXに関連するスキルを有する人材は、今後の企業発展に重要となるでしょう。このように意識改革は様々な目的のために使われます。
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ここまでの内容で意識改革の目的をイメージできたでしょうか?冒頭で述べた通り、意識改革は場面を制限されて使われるものではありません。紹介した目的を中心に、あなたの企業に必要な課題を洗い出し、それを解決する意識改革を実行していきましょう。
意識改革を実現するためには次の5つのプロセスが重要です。
●理想と現状の把握
●行動目標とKPIの策定
●経営層と管理職が率先して行動
●モニタリングと軌道修正
●成果の共有
以下では、それぞれのプロセスについて詳細に解説します。
意識改革はやみくもに行われるものではなく、あくまでも目的達成の手段として行われます。そのため意識改革の1つ目のプロセスでは、企業の理想と現状を把握し、その間にあるギャップを知る必要があります。
理想と現状は、定性的に把握せず定量的に把握するのが良いでしょう。例えば、今期の理想として売上高10億円を目指すところ、現状は8億円に留まると把握します。これにより理想と現状のギャップを埋めるために売上高を2億円以上向上させる施策が必要になると理解できるためです。
また漠然と残業を減らすという意識改革を打ち出しても、組織が具体的に着手すべき行動が見えません。この場合は現状の各従業員の残業時間を正確に算出し、それをどこまで減らすかを数字で目標設定します。その上で各従業員が残業を減らすためにハードルになる要素が見えてくるでしょう。例えば、次のような要素は残業を減らす妨げになるケースが多いです。
●そもそも従業員が残業代目当てに働いている
●日誌等の報告業務がアナログで作成に時間がかかる
●日中に無駄な会議が多く、作業が後ろ倒しになる
このようにして見えてきた要素それぞれを改善する施策を実行すると残業が減っていくでしょう。以上のように、意識改革を実行するためには、まず理想と現状の把握が重要です。
理想と現状を把握した後は、ギャップを埋めるための行動目標とKPI(Key Performance Indicator)を設定します。例えば、5ヶ月で売上高2億円アップを実現するためには、1ヶ月ごとに4000万円の売上高向上が必要になります。
また、そこから1ヶ月で4000万円の売上高を得るために必要な商談数やリード数も逆算できるでしょう。このように行動目標とKPIは数字に落とし込んで具体的に策定していきます。ここでも漠然と「売上高を向上させる」という行動目標を立てるだけでは意味がないので注意してください。
理想と現状を把握し、ギャップを埋めるための行動目標とKPIを策定できると、行動を開始するタイミングが訪れます。この3つ目のプロセスでは、経営層と管理職が率先して行動する必要があります。
ここで現場からの行動開始を求めると意識改革が失敗しやすくなります。なぜならば、現場に「なぜ経営層や管理職は行動しないのに、我々だけ新しいことをやらされるんだ」との不満が生まれるためです。
特に残業を減らす場合は、上司が率先して変えると大きな効果を生みます。従業員の中には、残業をせずに早く帰りたくても上司が残業していると退社に抵抗を感じる人がいるためです。このように意識改革を実現するための行動は経営層と管理職から開始していきましょう。
意識改革は開始してすぐに成功するものではありません。それだけ慣習化した考え方や行動を変えるのは大変なのです。そのため意識改革の4つ目のプロセスでは、モニタリングと軌道修正を実施していきます。
例えば売上高を向上させるために週あたりのアポイント数を5つ増やす必要がある場合、次のような変化が従業員に起こっているかモニタリングします。
●アポイントを5つ増やすために必要なリード数をそもそも把握しているか
●営業がアポイント5つに対応するリソースを空けるためのフォローとしてチームで具体的に何を実施しているか確認
こうした点を従業員やチームに確認し、適切な回答がある場合は少しずつ意識改革が進んでいると評価できます。反対に適切な回答がなく、漠然と目標のみを把握しているような場合は軌道修正が必要になるでしょう。この場合も、経営層や管理職が率先して考えを共有し、行動するところから軌道修正しましょう。
意識改革を進めるためには積極的に成果を共有するのがおすすめです。そのためモニタリングしてポジティブな変化があった場合は、成果としてチームの枠を超えて会社に共有していきましょう。それにより従業員が効果を実感し、意識改革の実現が早まる可能性が高くなります。
ここまでの5つのプロセスに丁寧に取り組めると意識改革は少しずつ実現されるでしょう。意識改革は決して簡単に実現できるものではありませんが、企業を構成する個人や組織の意識が変わったときの効果は大きいので、できる範囲で取り組んでみてください。
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意識改革を成功させるには、ここで紹介する3つのポイントを頭に入れておいてください。
記事の前半でも述べた通り、意識改革は目的達成の手段として用いられます。そのため常に意識改革の目的を明確にしておくのが成功のポイントです。
特に従業員は意識改革に消極的なケースもあるので、何のために意識改革を実行し、従業員にどんなメリットがあるのかを定期的に伝えていきましょう。ここが疎かになると「意識改革をするのだ」との意気込みだけが先行し、成果を得られないまま組織が疲弊する恐れがあります。
意識改革のプロセスの3つ目でも述べましたが、意識改革に対する姿勢には経営層と現場でギャップが存在するケースがあります。特に多いのは、経営層が意識改革に乗り気な一方で、従業員は意識改革で業務の手間が増えるだけだと考えている場合です。
こうしたギャップがあると、いくら経営層が意識改革の重要性を説いたところで現場は反応しません。それどころか無理強いによる離職リスクも高まります。経営層と現場にギャップがある場合は、目的とメリットを伝えた上で、経営層が率先して意識改革に着手していきましょう。
意識改革を成功させる3つ目のポイントは、スモールスタートです。経営層がいくら大きな意識改革を望んだところで、大きな変化は組織に負担をかけるだけです。意識改革を成功させるためには、小さな範囲で、現実的な目標を設定するところから着手しましょう。
残業を減らす場合、いきなり残業禁止にしてもデイタイム業務に負担が発生します。コスト削減のために資料印刷の数をゼロにしたのでは業務が回らなくなります。意識改革を成功させるためには、経営層や管理職が現場の業務を正確に把握した上で、現実的な目標を立てていきましょう。
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今回の記事では、企業の意識改革について解説しました。経営環境が予測困難になるにつれて、必要性が声高に語られる意識改革ですが、使われる場面が幅広いがゆえに具体的な内容がわかりにくいと感じる人も多かったのではないでしょうか。
意識改革は売上高や生産性の向上に利用でき、理想と現状の把握をするところから開始します。その上で、現実的な目的を維持しながら経営層や管理職から考え方や行動を変えていくと成功する可能性が高くなります。
本記事で紹介した内容を参考に、あなたの企業でも意識改革に着手してみてください。
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