「管理職になるとマネジメント力が必要というけど、具体的にどのようなスキルかわからない」 「そもそもマネジメント力はどうやったら高められるのだろうか?」
チームを運営していく上でよく耳にする言葉に「マネジメント力」があります。マネジメント力の重要性がしきりに説かれていますが、いまいち実態がわからないという人も多いでしょう。
一口にマネジメント力といっても、その内容がコミュニケーション力から経営の専門知識まで様々です。そこで今回の記事では、マネジメント力として求められる4つのスキルや、マネジメント力を高める方法を中心に解説します。
実際の企業がマネジメント力を高めるために行っている取組みについても紹介するので、あなたの会社の生産性と業績を改善する参考にしてみてください。
【主なトピック】
【こんな方におすすめ】
そもそもマネジメント力とは、自身が管轄する範囲の「人、もの、お金、情報」を管理し、経営や事業を維持する能力を指します。「マネジメント」は「管理」を意味する言葉なので、マネジメントの対象となる範囲の全体を管理する力こそがマネジメント力です。
しかし実際にマネジメントする範囲は人により様々です。例えば経営者は会社全体をマネジメントしますが、チームリーダーは一般的に担当のチームのみをマネジメントします。またチームの中には、人をマネジメントする役割の人物もいれば、お金や情報をマネジメントする役割の人物もいるでしょう。
このようにマネジメント力は抽象度の高い言葉であり、あなたの会社において具体的にどのようなマネジメント力が求められているかは個別具体的に検討する必要があります。
マネジメント力と近い意味を有する言葉に「リーダーシップ」があります。しかし一般的にリーダーシップは対象が「人」である場合に使われます。またリーダーシップは管理というよりは、率いる側面の強い言葉です。
これに対してマネジメントは対象を人に限らず、率いるというよりは管理する側面が強い言葉です。ただし、管理対象となる人について、リーダーシップを用いて率いるマネジメントの方法もあります。
そのためマネジメントとリーダーシップの意味には重なる部分もあると理解しておきましょう。
マネジメント力についてリーダーシップとの違いもふまえて一定の理解をしたところで、ここからはより具体的な内容に入っていきましょう。
ここでは、マネジメントに必要な以下の4つのスキルを解説します。
●コーチングスキル
●スケジュール管理スキル
●意思決定力
●経営の専門知識
これらの4つのスキルは多くの場合においてマネジメントに必要なスキルです。あなたのイメージするマネジメントのあり方を思い浮かべながら各スキルについて確認してみてください。
はじめに解説するのはコーチングスキルです。コーチングスキルはリーダーシップと共通する部分があり、最終的にはチームメンバーを率いるために用いるものです。しかし「コーチング」とある通り、あなたの背中を見せてメンバーを率いるのではなく、コーチングによってメンバーのポテンシャルを引き出し、行動を後押しするスキルとなります。
またポテンシャルを引き出したメンバーには得手不得手があるので、それを把握して作業を振り分けて、さらにチームの生産性を高めることにも繋がります。
そしてコーチングにおいてとても重要になるのがメンバーとのコミュニケーションです。普段からメンバーとコミュニケーションをとり、次のような点を把握するところをコーチングの出発点としましょう。
●得意・不得意を把握する
●メンバーがストレスを感じるポイントを把握する
●メンバーが上司からどのような指示を受けると働きやすいかと把握する
●メンバーが価値を感じる物事を理解する
コミュニケーションを通してメンバーの個性を把握すると、後述する経営の専門知識などと紐付けながらコーチングができます。その結果、メンバーがより価値を発揮できるポジションが見えてきたり、メンバーの苦手を解消するサポートができたりするのです。
組織やチームをマネジメントする上で、スケジュール管理スキルは欠かせません。会社の目的な経済的な利潤を追求することであり、そのために組織やチームは計画に沿った動きが求められるためです。
業務を行っていると予想外の出来事が次々と起こる場合があります。こうした予想外のアクシデントに対応するためにも日頃からスケジュール管理を徹底する力がマネジメント力として求められます。
そしてスケジュールから外れる結果が起きた場合は、その理由を解明して次回以降のスケジュール管理に活かす姿勢が求められるでしょう。
またマネジメントには意思決定力も重要です。一般的にチームの進む方向について個々のチームメンバーは意思決定する権限を持ちません。意思決定は管理職の役割だからです。
そして適切な意思決定をするためには、チーム内の都合のみならず、会社の目標との兼ね合いも必要になります。こうした複数の要素を把握してチームとして進むべき方向を決めるのが意思決定力です。
またアクシデントが起こって損害が予想されるような厳しい状況においては、これ以上損害を拡大させないための難しい意思決定も必要になります。場合によっては、プロジェクトを完全に停止させて損切りをする必要があるかもしれません。適切な意思決定を行うためには日頃から会社およびチームの状況を把握しておく必要があるでしょう。
最後に紹介するスキルは経営の専門知識です。部やチームを率いる管理職の場合、経営者ほどの専門知識は必要ありませんが、それでも経営に関する一定の知識は必要です。
特に財務に関する知識は、部やチームごとに売上と経営を確認する際に必須になります。自らの部やチームの売上を上げるためにはどこにお金を使うべきなのか、また削減しても売上に影響しない経費は存在するのか。こうした管理を行うために経営の知識が必要となるのです。
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ここまでの内容でマネジメントに必要なスキルが具体的にイメージできたでしょうか?繰り返しになりますが、管理職によりマネジメントする範囲は様々です。あなたが実際にマネジメントする範囲に必要なスキルから習得を目指しましょう。
ここでは、マネジメント力を強化する4つの方法を解説します。マネジメント力は一朝一夕で身につくものではありませんが、以下で紹介する4つの方法について日頃から意識して管理を実施すると、気づかぬうちにマネジメント力がアップしているでしょう。
先ほどマネジメントスキルの1つとして経営に専門知識について解説しましたが、マネジメント力を高めるためには経営の視点でチームやプロジェクトに接することが重要です。
経営の視点として必要なのは次のポイントです。
●会社のビジネスモデルとビジネスフローへの理解
●ステークホルダーの理解
●自社のバリューチェーンの理解
こうした全体図の中であなたのチームに求められる結果を把できると、マネジメント力に磨きがかかるでしょう。
マネジメント力を高めるためには日頃から部下とコミュニケーションをとるのも効果的です。指示を出すだけで放置すると部下は明後日の方向を向いて仕事をしてしまう恐れがあります。これは部下が悪いのではなく、継続的なケアをできていない管理職の責任です。
チームメンバーが常に同じ方向を向いて結果を出せるように日頃からコミュニケーションを試みましょう。また現場で作業をする部下だからこそ気づくことのできる改善点もあるかもしれません。日頃のコミュニケーションによりこうした部下の考えを吸い上げておくと、会社全体のビジネスにポジティブな効果が期待できる提案に繋がる可能性があります。
マネジメントにおけるスケジュール管理の重要性は前述の通りですが、マネジメント力を高めるためにも管理職は常にチーム全体のスケジュールに目を光らせておきましょう。またチームを超えて会社全体のスケジュールまで頭に入れておくと、より適切なマネジメントに繋がります。
スケジュール管理については、はじめに決めたものを徹底して守らせるだけでは不足です。それよりは起こり売るアクシデントを想定しながらスケジュールを組み、状況に応じてスケジュールを修正しながら当初のゴールを目指す柔軟性が重要です。柔軟なスケジュールでゴールを目指すためにはチームメンバーとのコミュニケーションも重要になるため、他の手法と組み合わせながら効果的にマネジメント力を高めていきましょう。
部下と経営層の板挟みになりやすい管理職にストレスはつきものです。しかし管理職が体調を崩すと、チームのプロジェクト進行の大きな妨げとなります。
このようにマネジメント力を発揮するためには、管理職自身のストレス管理も重要なのです。自分に合った方法でストレスを解消しながら、プロジェクトのはじめから終わりまで継続してマネジメントができる態勢を整えていきましょう。
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ここまでの内容でマネジメントスキルとマネジメント力を高める方法について解説しました。あなたがどのような形でマネジメントスキルを向上させていくべきか大まかなイメージはできてきたでしょう。
ここでは、マネジメント力を反対側から見るために「誤ったマネジメント力」を紹介します。以下で紹介するようなマネジメントを実施すると、離職リスクや法令違反のリスクが高まるので注意してみてください。
スキルの低い管理職の中にはマネジメントと根性論を混同している人物がいます。部下に対してプレッシャーをかけ、長時間労働を強制してチームの目標を達成していくような管理職です。こうした管理職は一見するとチーム目標を達成しているので、自らに与えられた仕事を達成しているかに見えます。
しかし目標達成のためにチームや部下に過剰な負担をかけているため、中長期的にみると離職リスク・法令違反リスクを高めてしまっているのです。
管理職の中には悪気なく部下に過剰な努力を求めるタイプもいます。こうした人物は根性と努力による成功体験を持っているため、部下についても「私と同じように徹底的に努力したら成果が出る」と当然に押し付けてしまうのです。しかしこれは部下それぞれのスキルや特性を見抜いて生産性を向上させるマネジメント力とは別物です。
部下やチームのモチベーションを上げるにしても根性論以外の方法を実行していきましょう。
管理職の中には不安ゆえに部下に対して過剰に細かい指示を出す人物がいます。これもよくある誤ったマネジメント力です。細かな指示を出すと、その指示の範囲では部下のミスを防げるかもしれません。しかし、部下が自ら考えて実行するスキルの向上を妨げてしまう恐れがあります。つまり部下が考えて仕事をしなくなってしまうのです。
適切なマネジメントではゴールを伝えて、そこに至るプロセスを一度部下に考えさせます。その上でより適切なプロセスがあればフィードバックを行い、部下の成長をサポートするのです。こうした中長期的に会社の利益を追求するのもマネジメント力として重要な内容になります。
最後に紹介する誤ったマネジメントは、自らのやり方を部下に押し付けるものです。一般的に管理職は部下よりも豊富な経験を有するため、自分なりのやり方を確立させているケースも多いでしょう。
しかし部下は部下で自ら思考しながら目の前の業務で成果を出そうと試みています。こうしたときに、部下のやり方を一切認めずに自らのやり方を押し付けたのでは部下は成長しません。それどころか仕事へのモチベーションすら低下しかねません。
そのため適切なマネジメントとしては、まずは部下のやり方を尊重するところから開始しましょう。その中で部下のやり方では会社やチームのリスクが高まるような場合は、理由を説明して違うやり方を部下と共に模索する姿勢が重要です。
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続いて、マネジメント力を高めるために企業が実際に行っている取組みの例を確認していきましょう。マネジメント力は管理職個人で向上を目指すこともできますが企業単位で取組みを進めると生産性がさらにアップするでしょう。
【出典】内閣府「職場マネジメント事例集」
1つ目の例として紹介するのは株式会社高垣組です。
株式会社高垣組は岐阜県において地域密着型で土木建設事業を主とする事業を展開しています。10年前にはすでに男性の育児休暇取得を奨励するなど従業員が働きやすい環境を構築することに力を入れている企業です。
高垣組では、職場マネジメントを推進するために、毎月2回開催する役員会で次に関する説明を実施しています。
●従業員マネジメント手法
●就業規則
●メンタルヘルスの重要性
またライフワークバランスや子育て支援に関する情報も積極的に共有するなど部下を束ねる管理職に必要な情報を積極的に提供しているのです。これにより年次有給休暇の取得率が上がり、所定外労働が減少するといった目に見える効果が出ているようです。
管理職といえども現場の仕事もしている場合は管理業務にすべての時間を使うことができません。そのため会社で管理職に必要な情報を積極的に共有していく体制があると良いでしょう。
2つ目の例として紹介するのはサイボウズ株式会社です。
サイボウズ株式会社はグループウェアの開発・販売・運用を行うIT企業であり、多様な働き方を認める態勢の構築に特徴があります。従業員それぞれについてライフを重視するのか、ワークを重視するのか、バランスを重視するのかという考えを尊重し、業務に影響のない範囲の副業も認めています。
マネジメントとしては、管理職であるマネージャーが5~6人のチームに対して責任を持つ体制を構築し、適切な人員配置や業務配分もマネージャーの仕事です。そのうえで、人事部がマネージャーと積極的にチーム運営について打ち合わせを行い、会社の意識とチームの意識のすり合わせも実現できる体制を作っています。
これによりサイボウズ株式会社は離職率を下げることに成功し、出産や育児を理由とする退職者ゼロを実現しました。
このように管理職にチームに対する責任をもたせながらも人事部がフォローできる体制を整え、会社で一丸となって従業員の多様な働き方を実現するマネジメントは結果として離職率低下という成功に繋がったのです。
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今回の記事では、マネジメント力について解説しました。マネジメント力は抽象的な言葉ですが、会社が大きくなってチームが細分化していく際に重要なスキルになります。
マネジメント力は、コーチングスキル、スケジュール管理スキル、意思決定力、経営の専門知識を主な内容としています。また日頃から経営者の視点でプロジェクトに向き合ったり、メンバーとコミュニケーションをとったりすることでマネジメント力を向上させることができるのです。
本記事で紹介した企業の事例もふまえて、あなたとあなたの会社にとって最適なマネジメントについてイメージを膨らませてみてください。そのうえで、明日から早速チームメンバーとのコミュニケーションを深めていきましょう。
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