「マネジメントサイクルにはどんな種類があるの?」
「PDCAが自社に合っていない気がする。他に良いサイクルはないだろうか」
PDCAをはじめとしたマネジメントサイクルを企業経営や組織運営に取り入れている会社が増えてきています。しかし言葉は耳にしたことがあるものの、マネジメントサイクルの具体的な種類やそれぞれの手法の特徴について正確なイメージが持てていない人もいるでしょう。
そこで今回の記事では、マネジメントサイクルの成り立ちを説明した上で、代表的な6つの手法について特徴を詳細に解説します。マネジメントサイクルの手法は様々なで、現場で使いやすいものもあれば、計画を立てるプロセスを慎重に行うものもあります。各手法の特徴を把握した上で、自社に合ったサイクルを選べるようになりましょう。
また、記事の後半ではマネジメントサイクルが上手くいかない2つの原因を解説します。最後にPDCAを上手く活用している2つの企業についても解説するので、自社でマネジメントサイクルを適切に実行するための参考にしていきましょう。
本セミナーでは、急成長ベンチャーの人事・経営層・マネージャーの皆様を対象に、組織全体でメンタル不調を予防しフォローする仕組みづくりをサポートすべく、「急成長を導くマネージャーの型」の著者兼、株式会社EVeM代表取締役CEOの長村禎庸氏をお招きし、メンタルヘルスが落ち込んでしまったメンバーや、ストレス負荷が高まっているメンバーとの対話の「型」を解説します。
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マネジメントサイクルとは、組織が目的を達成するために自社の行動を評価し、改善を目指す一連のプロセスを指します。現在、多くの企業で取り入れられているPDCAサイクルは代表的なマネジメントサイクルです。
マネジメントサイクルは、経営や組織のパフォーマンスを最大化するために行われます。この記事では代表的なマネジメントサイクルを6つ紹介しますが、いずれもサイクルとの名の通り、改善を継続する点が重要です。自社のプロジェクトを具体的にイメージしながら各サイクルの特徴を把握し、経営に役立ててみてください。
適切なマネジメントサイクルを取り入れることができると、組織や業務を改善するスピードが高まり、また現場の意識も変わっていきます。会社全体でサイクルを回すことができる状態を目指していきましょう。特にPDCAのみを用いてきた場合は、さらに自社に合ったサイクルが見つかる可能性があるので、各サイクルの特徴をしっかりとイメージできるようになってください。
PDCAサイクルをはじめとしたマネジメントサイクルの起源は100年前のアメリカにあると言われています。当時、鉄道がアメリカ全土に開通し、鉄道会社による競争が盛んに行われていた中で、労働者による大規模なストライキが発生しました。ストライキにより従業員が離れた中で、業務を維持するために様々な対策や施策がとられました。
こうした厳しい環境において最適な経営のあり方を探る動きは現代の日本においても重要です。昨今は労働人口の減少が指摘され、企業には少ない人数で従来のビジネスを維持することが求められているためです。約100年前から経営をより良くするために続くマネジメントサイクルを学び、現代の経営に活かしていきましょう。
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ここからはマネジメントサイクルの具体的な内容を紹介していきます。マネジメントサイクルには、PDCA以外にも種類があり、企業は自社にとって適切なマネジメントサイクルを改善プロセスとして選択する必要があります。
以下では6つのマネジメントサイクルを特徴とともに紹介するので、自社に合ったものを見つける参考にしてみてください。PDCAとは異なる発想で作られているサイクルもあるので、サイクルを用いる組織やプロジェクトに合ったものを見つけられると理想です。
PDCAは多くの企業に取り入れられているマネジメントサイクルであり、多くの人が一度は耳にしたことがあるでしょう。PDCAは頭文字の通りに、次の4つのサイクルを回しながら目標達成を目指します。
はじめにPlanでは、目標達成までの具体的な計画を策定します。ここでポイントとなるのは、計画に具体性が求められる点です。例えば、半期で売上を20パーセント伸ばすことを目標にする場合、そのために必要な人材、行動、資金などを具体的に策定していきます。計画に具体性がないと、そもそも実行できず、評価と改善も中身のないものになってしまう恐れがあります。
計画を立てた後は、実行に着手します。Doは計画に沿って行い、また、成功と失敗に関わらず成果を記録しておくことが重要です。
Checkの工程では、具体的な行動が目標達成にどれだけ影響を与えたのかを評価していきます。ポイントは、計画達成にポジティブな影響を与えた行動とともにネガティブな影響を与えた行動も評価していく点です。また当初立てた計画がどれだけ達成されているかも評価していきます。
適切な評価ができると、目標達成のために必要な行動と不要な行動が見えてくるはずです。これがActionとなる改善です。ここでポイントとなるのは、改善の上でPDCAサイクルの頭に戻り、新たな計画を立てる点です。改善が実施された上での計画は、当初の計画よりもブラッシュアップされているはずです。
これがPDCAの一連の流れです。PDCAを1つの基準にして、他のマネジメントサイクルの特徴を把握してみてください。
マネジメントサイクルの1つにOODAがあります。PDCAに比べると知名度はありませんが、観察に重点を置いたマネジメントサイクルであり、現場での臨機応変な対応が求められる場で有効です。
OODAは次の4つのプロセスからなります。
PDCAと比較したとき、OODAには計画のプロセスがない点が大きな特徴です。そのため計画の改善よりも、現場において状況に応じた対応をとるところに目的をおいたサイクルとなっています。特に現場において課題や危機が発生している場合は、それらのネガティブな状況から脱することが方向性となるでしょう。
Observeでは、計画を立てるのではなく現在の状況を観察し、必要な情報を得ます。そしてOrientで、目指すべき方向性を定めます。
そして方向性が見えた段階で意思決定を行い、素早く行動に着手します。PDCAとの比較では、計画のプロセスがないことに加えて、改善のプロセスもないことがわかるでしょう。このようにOODAはあくまで現場で状況を把握し、素早く行動をとるところが目的です。そのためPDCAとの違いを明確にイメージして、状況に合ったマネジメントサイクルを使ってください。
PDCAサイクルと同じプロセスを用いながら、プロセスの順序が異なるマネジメントサイクルにCAPDがあります。CAPDは次の4つのプロセスからなります。
このようにプロセス自体はPDCAと共通していますが、順序が異なります。CAPDは、最初に評価を実施するため、計画ありきで進めない点に大きな特徴があります。つまりCAPDでは現状を評価する点からプロセスを開始する形となり、計画なしでも取り入れやすい点に特徴があります。
このように現場を評価した上で、改善の施策をピックアップし、それを計画に落とし込みます。現場起点でプロセスが始まるので、現場とミスマッチのある計画を立ててしまうリスクが低い点も特徴です。また計画の立案に長く時間がかかってしまうリスクも避けることができます。
PDCAで策定する計画が現場に馴染んでいない場合は、発想を変えてCAPDで業務プロセスの改善を図るのが良いでしょう。他の手法とも共通しますが、計画は現実的なものを策定し、また評価は客観的に行うのがポイントです。
1つのサイクルを素早く回したいときに使えるのがPDRです。PDRでは次の3つのプロセスをふみます。
こちらはプロセスがそもそも3つのため素早く展開が可能です。またPDCAと比較すると、計画がない点でスピードに特徴があります。
PDRでははじめに、Preparationとして、これから何をするのかを考え、目的と理由もふまえて整理します。ここでポイントになるのは計画を立てない点です。あくまで何をするのか、目的、理由の3つを整理するにとどめます。
その上で行動に移し、最後に結果を見直します。Reviewでは客観的な視点から結果を分析していきましょう。
PDCAを凝縮したように使えるのがPDSです。PDSは次の3つのプロセスからなります。
PDSは、PDCAのCheckとActionをSeeの1つに集約して行います。はじめに計画を立てて、実行するまではPDCAと同じですが、最後のSeeでは評価と見直しを同時に実施するのです。そのためPDSは狭い範囲の業務に対する迅速な改善サイクルとして適しています。
ただしPDSにおいてもPlanは重要で、現実的かつ実行可能な計画を立てなければなりません。それができてはじめてスピード感のあるDoとSeeが活きてきます。
最後に紹介するのは次の4つのプロセスからなるSTPDです。
STPDは計画を立てるまでに、SeeとThinkのプロセスを経るところに特徴があり、綿密な計画を立てるサイクルとなっています。そのため慎重な計画が求められる業務に適したマネジメントサイクルです。
はじめのプロセスであるSeeでは現在の情報を収集します。ここで注意すべきは、客観的なデータを集める点です。なるべく主観を廃してデータを集められると、次のThinkが適切に行われます。
Thinkでは、集めた客観的なデータを分析し、市場の動向や顧客のニーズを改めて考えていきます。その上で、データと分析結果をふまえた計画を立てます。計画の時点で一度はデータの分析を実行しているため、市場や顧客のニーズを取り込んだ計画を立てていきましょう。
最後は計画に沿って実行します。そして、結果が出たら再びSeeからサイクルを繰り返していきましょう。
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ここまで紹介した通り、マネジメントサイクルにも様々な種類があります。重要なのは、組織や業務にとって最適なマネジメントサイクルを選ぶ点です。例えば、綿密な計画が求められるプロジェクトであれば、OODAよりもSTPDが向いています。
しかし、いくらマネジメントサイクルを慎重に選んでも上手くいかないケースもあるでしょう。ここでは、マネジメントサイクルが上手くいかない場合に考えられる原因を解説します。自社のサイクルが成果を出せずにいる場合、改善の参考にしてみてください。
マネジメントサイクルを紹介するところでも触れましたが、計画が実現可能なものでない場合、多くのサイクルは失敗します。特に経営層が現場の状況を把握せずに高望みの計画を立ててしまうと、どんなに改善を実施しても目標を実現できなくなってしまうのです。そのため計画は現実的で、実現可能なものを選ぶように注意しましょう。
一方で、計画があまりに簡単に達成できるものでもいけません。サイクルを回さずとも達成できてしまう計画であれば、そもそもマネジメントサイクルは不要になります。ただしはじめから完璧な計画を立てようとしていつまでも実行に移せない状況も問題なので、計画についてもサイクルの中で改善していく意識をもちましょう。
マネジメントサイクルは、その名の通りサイクルを回すところに大きな意義があります。PDCAやCAPDはサイクルの中に評価と改善のプロセスがありますが、これらがないがしろにされるとマネジメントサイクルの効果が発揮されにくくなります。
よくある失敗パターンは、計画と実行ばかりに重きを置いてしまい、マネジメントサイクルがPlanとDoの繰り返しになってしまうものです。ここに複数の計画が走り始めると、何本ものPlanとDoだけが繰り返され、現場は混乱し、疲弊していきます。これではマネジメントサイクルを用いる意義がないので、評価を改善のプロセスを丁寧にするように心がけてみてください。
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ここまでの内容でマネジメントサイクルの種類と失敗の原因がイメージできたでしょうか?記事の最後では、マネジメントサイクルの成功例について解説します。誰もが知っている企業もマネジメントサイクルを用いて業績を改善しているのです。
トヨタ式カイゼンは国内のみならず海外でも参考にされています。トヨタには多くのカイゼン手法がありますが、その中にPDCAも含まれています。トヨタのPDCAでは、Actionの後にFeedbackという独自のプロセスを加え、サイクル全体の制度を高めるところに特徴があります。
PDCAのサイクルを回すことが形骸化するとマネジメントサイクルが意味を失ってしまうので、Feedbackを用いてPDCAを回す意義を確認し続けるところがトヨタ独自の手法です。
PDCAをはじめとしたマネジメントサイクルは、現場がその意義を正確に把握していないと形だけでサイクルを回す事態に陥ってしまいます。これを避けるためにFeedbackを用いて、マネジメントサイクルの維持を現場に落とし込んでいく重要性は高いでしょう。
PDCAを上手く活用した企業としては、株式会社良品計画も有名です。良品計画では、紙の削減、ミーティング時間の短縮、店舗運営のためのマニュアル作成のように細かな業務それぞれにPDCAを活用したところが特徴です。
その中で社員全員に共通のマニュアルを作成し、店舗ごとに行ったポジティブな行動とネガティブな行動を社内で共有することでPDCAをさらに効率化しました。このようにマニュアルの内容も常に改善されていくほどにPDCAが組織に落とし込まれると、マネジメントサイクルが大きな効果を発揮します。
このような成功と失敗を全体に共有する姿勢はマネジメントサイクルを成功させるための大きなヒントとなります。マネジメントサイクルはチーム内で完結してしまうケースも多いので、上手くいった場合はチームの垣根を超えて改善の輪を広げていくイメージを持ちましょう。
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今回の記事では、マネジメントサイクルについて成り立ちや代表的な6つの手法を解説しました。PDCAは特に有名なマネジメントサイクルですが、他にもより迅速な対応を目指すもの、より綿密な計画を立てるもの等があります。
マネジメントサイクルを用いて業務改善の結果を出すためには、自社の組織やプロジェクトに合った手法を選びましょう。各種法の特徴は、PDCAとの比較の中で確認していくといわかりやすいです。
またマネジメントサイクルが失敗する原因には、計画に無理があるパターンと、評価と改善のプロセスがないがしろにされるパターンがあります。PDCAをはじめとしてサイクルが効果を発揮していないと感じる場合は、計画、評価、改善について改めて見直してみてください。
株式会社トヨタと株式会社良品計画はPDCAを上手く取り入れて業績を維持・発展させてきた企業です。自社に適切なマネジメントサイクルは、組織のあり方を変える可能性を秘めています。記事を参考に、マネジメントサイクルに着手してみてください。
1つのサイクルが自社に適さない場合は、他のサイクルも積極的に取り入れて、あなたの会社独自の手法に昇華させていきましょう。
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