従業員の労働意欲を左右する「働きがい」。働き方改革の影響も受け、人材の定着や企業の成長のため「働きがいのある職場づくり」に注力して取り組む会社は増加傾向にあります。
この記事では、「働きがい」の意味や要素、働きがいのある会社に共通する特徴、取り組み事例などを紹介。厚生労働省が実施したアンケート調査結果も交えながら、メンバーが「働きがい」「働きやすさ」を実感できる組織づくりのコツを解説していきます。
働きがいとは、与えられた仕事に誇りや価値を感じ、自発的に頑張ろうとする労働意欲を意味する言葉です。
明確な定義はありませんが、公益社団法人国際経済労働研究所による社会心理学的な研究では、働きがいとは“ワーク・モチベーション”であると位置づけられています。
具体的な働き手の気持ちとしては、以下のようなものが挙げられます。
・今の仕事が楽しい
・今の仕事に生きがいを感じる
・今の仕事を続けたい
・今の会社にずっと勤めたい
いずれも、自分が対峙している仕事に「働く価値」「やりがい」を感じている状態であることが分かりますね。
世界的に、働きがいのある職場についての調査・研究を実施しているGreat Place to Work®(GPTW)によると、働きがいのある職場とは、「やりがい」と「働きやすさ」の両方を兼ね備えている組織であると提唱されています。
「働きがい」は働く価値があることを指すのに対し、「働きやすさ」は働く苦労・障壁が小さいことを指します。“働く苦労・障壁が小さい”とは、言い換えると“安心して快適に働ける”ということです。
【参考】厚生労働省「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」平成26年(2014年)「働きがい」は仕事への満足感・充足感といった個人の内面から生まれてくるものですが、「働きやすさ」は職場の労働環境や福利厚生、給与などの制度といった外的要因に大きく左右されます。
完全に切り分けて考えるのは難しいですが、会社として従業員の「働きがい・働きやすさ」を向上させたいのであれば、次のように考えて対策を検討するのが良いでしょう。
働きがい→従業員の満足度をあげる
働きやすさ→従業員の不満を解消する
厚生労働省や調査機関のリサーチ結果によると、従業員の「働きがい」や「働きやすさ」の意識を高めることが、会社にとっても多くのメリットがあることが明らかになっています。
本項では、平成25年(2013年)に実施された「職場の働きやすさ・働きがいに関するアンケート調査(従業員調査)」の結果をもとに厚生労働省が発表している3つのメリットを紹介します。
同調査では「働きがいがある」「働きやすい環境である」と回答した人の方が、仕事に対する意欲が「高い」という結果が、数字に顕著に表れています。「働きがいがある」との回答群では、84.2%の人が、自分は仕事に対する意欲が高いと答えています。
◆仕事に対する意識が「高い」「どちらかといえば高い」と回答した割合
モチベーション高く仕事に取り組むことで、主体的な業務の遂行や学びにより従業員の成長が期待できます。業務に対する興味が高いため、多くの新しいアイディアやビジネスが生まれる可能性もあります。
さらに、「働きがい」「働きやすさ」がある方が勤務継続の意向が圧倒的に高い結果になっています。働きがいがないとの回答群では勤務継続の意思が11.4%であるのに対し働きがいがあるとの回答群では50.7%と半数以上の人が「今の会社でずっと働き続けたい」と回答しています。
◆「今の会社でずっと働きたい」と回答した割合
転職が当たり前になりつつある昨今、早期離職に悩む会社も多くあるでしょう。従業員の働きがい・働きやすさを向上することで、経験を積んだ人材の定着・離職率の低下が期待できます。
最後に特筆すべきは、従業員に働きがい・働きやすさがある方が会社の業績が上がる傾向が見られることです。働きがいがあるとの回答群では48.0%が「会社の業績が上がっている」と回答。
◆会社の業績が「上がっている」「どちらかといえば上がっている」と回答した割合
会社の業績は様々な要因に左右されるため一概には言い切れませんが、働きがいを感じて意欲的に仕事に取り組む従業員の会社への貢献意識、目標達成への情熱が会社の成長を支えていると考えることができるのではないでしょうか。
【参考】厚生労働省「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」平成26年(2014年)▶︎welldayなら、AIが従業員の働きがいとストレスレベルを週次で可視化
それでは「働きがい」とは、どのような要素で成り立っているのでしょうか。代表的なものとしては、以下の3つの要素が挙げられます。
1.マネジメントへの「信頼」
2.仕事への「誇り」
3.仲間との「連帯感」
※「信頼」を細分化して「信用」「尊敬」「公正」に分け5つの要素として定義する考え方もあります。
それぞれについて、詳細を見ていきましょう。
働きがいの要素のひとつに、自分が働く会社・経営陣との「信頼」関係が挙げられます。従業員が信頼できる会社とはどのような特徴があるのか、考えてみましょう。
・会社のビジョンに一貫性がある
・経営陣と円滑にコミュニケーションがとれる
・採用、報酬、昇進の評価が公正である
・従業員の意思や生活を尊重している
・従業員への感謝の意を表明している
これらは一例にすぎませんが、このような信頼関係を築けなければ、従業員が会社への貢献意欲(エンゲージメント)を持つのは難しいでしょう。
▶︎エンゲージメントとは?社員のエンゲージメントを向上させるメリットと方法を解説
ふたつ目は、仕事への「誇り」です。自分が行っている仕事に誇りを持てるかどうかが、働きがいに大きく影響します。
例えば、会社の理念に共感できたり、提供しているサービスに社会的な価値を見出せると、そのサービスの運営に携われることにやりがいを感じられたりします。また、自分の行っている業務や役割が「誰かの役に立っている」と自信が持てると、それが自身の誇りとなって働きがいを感じることもあるでしょう。
一緒に働く同僚や上司、従業員同士の「連帯感」も働きがいにつながります。
連帯感というのはただ仲良しである、ということではありません。組織の中で同じ目標のためにチームで頑張ること、お互いに助け合うホスピタリティや親密なコミュニケーションを繰り返すなかで連帯感が生まれます。
「一人ではない」「自分には仲間がいる」と思うことで、仕事にもモチベーション高く取り組めるでしょう。
▶︎従業員の不調に素早く対処!従業員のサーベイ回答負担を増やさず、リアルタイムに不調を検知
従業員が働きがいを感じる会社とは、どのような会社なのでしょうか?働きがいのある会社に共通する特徴を5つ紹介します。
働きがいには、「やりがい」だけでなく「働きやすさ」も必要であることは前述の通りです。
適切な労働時間や有給休暇といったワークライフバランスへの配慮、福利厚生の充実など、安心して働ける制度が整っていることは必須条件と言ってもいいでしょう。さらに、育休の取得のしやすさや時短勤務など、従業員のライフスタイルを尊重して多様な働き方を推奨している会社であれば、会社への信頼度も高くなります。
また、働きやすい会社・職場には、不要な対人ストレスがないこともひとつの特徴です。職場の人間関係が良好である、相談しやすい、といった自分が身を置く職場環境の快適さも「働きやすさ」を左右します。
どんなに興味のある仕事内容であっても職場環境が良くなければ、その会社では働きがいを感じられず転職・離職を考える人も出てくる可能性があることに留意しておきましょう。
▶︎会社の福利厚生にはどのような種類がある?充実させるメリットも解説
働きがいを感じられる会社では、従業員のスキルアップをサポートする体制があります。
研修制度や資格制度などでスキルを磨く機会があれば、自分の仕事や今後のキャリアに対する自信につながります。また、会社として長い目で見た従業員のキャリア形成を支援している企業も多々あります。
職場では、若手や新入社員でも責任のある仕事を任され、経験を積めるチャンスを与える風土があります。それと同時に、業務を投げっぱなしにするのではなく、上司や先輩社員がしっかりとフォローする体制が整っていることも重要なポイントです。
▶︎キャリアプランが大事な理由。考え方とメンバーマネジメント方法も解説
頑張ったら頑張った分、公正に評価される制度が整っていることも働きがいのある会社の特徴です。
採用や昇進、評価の場面で公正さに欠ける会社は従業員の不信感につながります。評価軸が不透明で一貫性がない場合にも「自分が頑張っても評価されるかわからない」というモチベーションの低下を生んでしまう可能性があります
評価をされる側が納得感を持つことができる客観的な評価基準のもと、成果が報酬に結びつく評価制度があることが働く意欲につながります。
「自分が職場の中で期待され、役立っている」という自己効力感を持てるようなマネジメントも仕事へのやりがいに結びつきます。
前述の厚生労働省の調査(※)でも、各自に与えられた仕事の意義や重要性についての説明をされている場合に「働きがいがある」という意識を持つと回答した人の割合は76.3%。説明がない場合と比べて+26%ほど多い回答数となっています。
(※)【参考】厚生労働省「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」平成26年(2014年)また、日々の業務に追われていると、自分の仕事がどのような社会的な価値があるのかということをつい忘れがちになりこともあるでしょう。定期的に従業員のやる気を鼓舞するため、企業理念などの経営陣の想いをメッセージとして表明する機会を設けている会社もあります。
▶︎動機付けでメンバーのやる気を高める方法とは?心理学的効果も解説
働きがいのある会社では、風通しの良い職場環境が整っています。
上下関係がフラットなら、役職や立場を気にせずにどんどん自分のアイディアをだせるため、やりがいや達成感を感じやすいでしょう。また、活発なコミュニケーションの中で、仲間との連帯感を感じやすいのも風通しの良い職場の良いところです。
仕事に関する自分の意見が採用されることで自信につながり、ボトムアップで現場の意見を吸い上げてくれる組織への信頼感にもつながります。
▶︎welldayなら、AIが従業員の働きがいとストレスレベルを週次で可視化
本項では、働きやすい・働きがいのある職場づくりのために様々な雇用管理の取り組みを実施し、効果を上げている中小企業の事例を3つ紹介します。
・過去の中途採用者を対象に賃金を調査したところ、業績に比べて賃金が低い従業員がいたため、過去 10 年の考課を見直したうえで、賃金を是正。この賃金是正の取り組みの際、目標管理による評価処遇制度をあわせて導入した。
・評価処遇制度では、目標に到達しただけで高く評価するのではなく、目標の難易度に考慮。目標設定のための従業員との面接において、設定された目標の難易度を、評価される従業員と評価する上司が確認し、難易度のより高い目標を達成すれば、より高く評価している。こうした評価のあり方については、社内研修を実施し、周知徹底を図った。
・新たな評価処遇制度の導入に伴い、退職金制度も評価と連動するポイント制を導入。より評価が高い従業員ほど、多くのポイント(=退職金)を獲得することができる仕組みである。
・毎月1 回は事業部長まで「変わったこと」「楽しかったこと」などの情報を報告する機会を設けているほか、「今の当社のセキュリティはどうなっているか」「みんなでやりたいことは?」などのアンケートを実施している。
・四半期に1回の管理職全員参加の目標達成会議の場で、事業部の四半期の計画に対する実績を発表して、目標の達成状況やリカバリー策の戦略や、現場の状況などを情報交換している。また、末端まで情報が伝わる様、事業部長が一般社員のところまで出向き全員と話す機会も設けている。
・メンター制を導入して、育成のみならず、様々な側面でメンター制を活用している。同社のメンター制の特徴として、メンターの下に「子メンター」を設けていることが挙げられる。子メンターは、メンターよりも近い位置でより詳細にメンティ(後輩社員)の面倒を見るようにしている。「子メンター」制度は社員からの提案によるもので、「メンターよりも若く、メンティと年の近い従業員がメンティの面倒を見る方が良いのではないか」という提案から生まれた制度である。
・これまでに自身の仕事に対する意見・希望を申し出る機会がなかったことから、社内システムを活用して本人の希望を吸い上げ、ジョブ・ローテーションに反映している。
【引用】厚生労働省「働きやすい・働きがいのある職場づくり事例集」平成26年(2014年)▶︎サーベイ不要のエンゲージメント改善サービス「wellday」詳細はこちら
メンバーに働きがいを持ってもらうには、仕事の「やりがい」や、職場の「働きやすさ」を実感できるような職場環境を整えることから始めましょう。
仕事に「やりがい」を感じられる職場環境をつくるには、2つのポイントがあります。ひとつは信頼や連帯感を感じられること、もうひとつは自己が成長し続けることができることです。
どんなときに充実感、達成感を感じるかはメンバーのタイプや将来のキャリアプランなどによって異なります。例えば、将来独立を考えているメンバーであれば、多くの業務経験値を積むことにやりがいを感じ、身近な人をサポートしたいと考えているメンバーであれば、職場の皆が喜んでくれたときに充実感を感じるでしょう。
まずはメンバー個々の思考や望んでいることを熟知し、それぞれに適したメンバーマネジメントをすることを意識すると良いでしょう。
<具体例>
・職場における改善要望のほかメンバーの大切にしていることを積極的に聞く
・そのうえで、各メンバーがやりがいを持てるような目標やステップアップの機会を与える
メンバーが安心して働ける職場環境を整えるには、勤務・人事制度、福利厚生を活用しやすい組織風土をつくることが大切です。
仮に会社として社外セミナー制度や社内の研究会などを実施していても、現場のメンバーが業務過多で参加することができなければ意味がありません。また、福利厚生が充実していても、休みをとりづらい、育休などの長期休暇からの復帰がしづらい雰囲気があっては、実感として「働きやすさ」を感じられません。
組織としてメンバーのワークライフバランスを尊重する風土づくり、チームマネジメントに努めましょう。
<具体例>
・一人当たりの業務負担が高くなりすぎないような業務配分をする
・代わりに対応する人がいない状況にならないように業務をマニュアル化しチーム内で共有する
・メンバー同士でコミュニケーションを取りやすい環境を整える
働きがいのある職場をつくるためには、メンバーの個性を的確に捉えて、それぞれにあった組織づくりをすることが大きなポイントになります。日常的にメンバーのモチベーションや組織の状態を把握するために、組織課題を分析するツールの導入を検討するのも一案です。
メンバーが「何に喜びや充実感を感じ、モチベーションが上がるのか」「どのようなスキルを伸ばしたいのか」に目を向けて、適切なコミュニケーションを取っていきましょう。
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