企業の健康経営とは?取り組むメリットと推進方法や優良法人の事例を解説

最終更新日 : 2023/01/29
健康経営

長時間労働による過労死や、メンタル不調による休職などが問題視されており、従業員の健康管理が企業の課題として挙げられるようになりました。このような背景により、健康経営の推進を行う企業が増えてきています。企業が健康経営に取り組むと、どのようなメリットがあるのでしょうか?健康経営とは、どのように推進していくのでしょうか?
今回は、健康経営について詳しく解説します。この記事を読めば、健康経営の推進が高く評価されている企業の取り組み方まで把握できます。ぜひ、健康経営の推進を検討している方は、この記事を参考にしてみてください。

本記事のサマリー

  • 健康経営とは、従業員の健康管理を戦略的に実践することを指す
  • 健康経営に取り組めば社会的評価が受けられる
  • 健康経営で評価されれば、収益が上がるなど恩恵が得られる
  • 健康経営は長期的に取り組まなければいけない
  • 健康経営の推進は計画が重要である
  • 健康経営優良法人の取り組み方を参考にする

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健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考えて戦略的に実践することをいいます。 アメリカの臨床心理学者ロバート・H・ローゼン博士の著書「ヘルシー・カンパニー」で記載されていた概念が参考にされています。経営管理と健康管理を統合的に捉えて、従業員の健康増進を推進することで企業の業績向上を狙う取り組みです。
2013年6月に日本政府は「日本再興戦略」が閣議決定されましたが、その中のテーマに健康寿命の延伸が含まれており、各企業で健康経営が取り組まれ始めました。また、NPO法人健康経営研究会が健康経営の普及に向けた啓蒙活動を行っており、その影響で広まりました。

健康経営の投資先

健康経営は下記の内容に投資をして、従業員が心身共に健康に働ける職場環境を目指すことをいいます。

健康経営の投資先

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健康経営を推進するメリット

健康経営について理解できたと思いますが、なぜ推進していかなければいけないのでしょうか?ここでは、企業が健康経営を推進するメリットをご紹介します。

社会的評価が受けられる

健康経営を推進すれば、社会的な評価が受けられます。その理由は、従業員の健康管理を経営的な視点で考えて、戦略的に取り組んでいる企業を政府が評価しているためです。 経済産業省では、健康経営に関する表彰制度として、2014年に健康経営銘柄、2016年に健康経営優良法人認定制度を創設しました。

健康経営の評価

社会的評価を受けられれば、従業員もモチベーションアップや生産性の向上、資金調達がしやすくなるなど、さまざまな恩恵が受けられます。

医療費を削減できる

日本は少子高齢化社会で社会保険の財政が圧迫しています。そのため、社会保険料率は以下のように上昇しています。

社会保険料率と介護保険料率の推移

【出典】日本健康保険協会 保険料率の変遷

社会保険は従業員と企業が折半して支払うものなので、今後も料率が上昇していくと負担が大きくなります。
従業員が心身ともに健康に働けて、健康保険を使う回数を減らせられれば、財政の圧迫に歯止めをかけられるでしょう。このように、医療費を削減するためにも、企業は健康経営に取り組む必要があるのです。

生産性が向上する

健康経営を推進して、従業員が満足しながら仕事に取り組めるようになれば、高いパフォーマンスを発揮しやすくなります。その理由は、業務の生産性は疾患の有無で大きく変わるためです。
健康日本21フォーラム「疾患・症状が仕事の生産性などに与える影響に関する調査」では、健康な状態の業務遂行能力を100と仮定したとき、疾患がある状態では約半分に低下すると述べられています。例えば、メンタル不調でイライラしている状態では、業務に集中できずにケアレスミスが増えてしまうでしょう。その一方で、心身共に健康であれば、高いパフォーマンスを発揮しながら働けます。そのため、生産性向上のためにも健康経営の推進が必要なのです。

離職率が低下する

健康経営を推進して、従業員が心身共に健やかに働けるようになれば、離職防止が期待できます。 従業員の健康維持や回復のために取り組む施策をすれば、「この会社は従業員を大切にしてくれている」と信頼関係が築けるでしょう。会社と従業員が強い信頼関係を結べるようになれば、意欲的に働いてもらえます。近頃は、メンタル不調で退職してしまう人も珍しくありません。しかし、意欲的に働く従業員を増やしていけば、メンタル不調による退職も減らせます。

リスクマネジメントができる

従業員の健康管理をしないで働かせていると、労災問題が発生してしまう恐れがあります。 例えば、メンタル不調で集中力が低下している従業員が、作業中に怪我をした場合でも労災問題に認定されてしまうのです。このような労災問題が発生すると、企業の信用力が低下します。 それだけに留まらず、怪我をした従業員の代わりとなる人材を確保しなければいけません。人材が確保できなければ、他の従業員に負荷がかかってしまい不満を抱かれて退職されてしまうなど、負のスパイラルに陥ってしまいます。このような労災問題を発生させないためにも、健康経営を推進してリスクマネジメントしていく必要があります。

資金調達しやすくなる

健康経営を推進すれば、資金調達しやすくなります。その理由は、健康経営を推進して企業の信用力を上げていけば、金融機関からの融資が受けやすくなるためです。融資金額が上がったり、金利が優遇されたりします。
また、健康企業銘柄に選ばれたら、東京証券取引所に投資先におすすめの企業として紹介してもらえます。そのため、投資家から資金調達しやすくなるのです。このように資金調達しやすくなることも、健康経営のメリットとなります。

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健康経営を推進するデメリット

健康経営を推進するとメリットだけでなく、デメリットもあるため注意してください。ここでは、健康経営を推進するデメリットをご紹介します。

長期的な取り組みになる

健康経営の推進は、長期的な取り組みになります。健康経営の推進の効果は、離職率の低下や生産性向上です。これらの効果は、短期的には感じにくいです。そのため、長期的な取り組みであることを認識して、取り組んでいかなければいけません。
健康経営の施策によっては、必ず効果が出るとは限りません。効果検証して、有効な施策を取り入れていく必要があります。したがって、効果が感じられるまで時間がかかると認識しておきましょう。

従業員の負担が大きくなる

健康経営を推進する場合、通常業務をこなしながら施策に協力する必要があります。そのため、従業員の負担が大きくなります。
従業員が健康経営について理解していない場合は、業務負担が増えたと不満を募らすかもしれません。Carely「健康経営の認知度調査」では、健康経営の認知度は管理職層が79.6%に対して、担当者層が47.6%という結果になりました。
従業員が健康経営に関して認知していない状況では、「なぜ、取り組まなければいけないのか?」と不満を抱いてしまうでしょう。そのため、健康経営を推進する場合は、正しい手順で行う必要があります。

ツール導入費用がかかる

健康管理を推進するときは、PDCAサイクルを回していく必要があります。どのような施策が効果的であるか効果検証しなければ、費用対効果が見込めません。そのため、健康管理を推進するための施策の効果検証をしましょう。このような効果検証は目視しにくいです。
したがって、サーベイツールを導入してデータ集計やデータ分析が簡単に行えるようにしておく必要があります。安価なサーベイツールも登場してきていますが、ツール導入費用がかかることがデメリットとなります。

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健康経営を推進する手順

健康経営を推進する手順は以下の通りです。

1.健康経営推進室を作る
2.企業が抱えている課題を把握する
3.健康経営の計画を作成する
4.健康経営の推進を周知する
5.健康経営の施策の効果検証をする

ここでは、各手順について詳しく解説します。

健康経営推進室を作る

最初に健康管理推進室を作り、チームを構築していきます。
チームメンバーには、健康管理の推進業務を遂行できる人材を選びましょう。
選任したメンバーが健康管理に関する知識を保有していない場合は、健康経営推進研修を受講させてください。健康経営推進研修では、健康経営の概略や具体的な施策が学べて、どのように健康経営を推進していけば良いかが分かるようになります。
もし、健康経営推進チームに不安を感じる場合は、健康経営アドバイザー産業医など外部の人材に協力を仰ぎましょう。

企業が抱えている課題を把握する

健康管理を推進するために、健康診断やストレスチェックの受診率を確認してください。また、有給休暇の消化率や残業時間の累計などのデータを集計して一元管理します。このようなデータは企業の健康経営の課題を把握するために必要です。データを集計することで、以下のような課題が見つけられます。

[課題の例]
●管理職の残業時間が長い
●特定の部署の離職率が高い
●特定の部署の健康診断の受診率が低い

健康経営の計画を作成する

企業が抱える課題が把握できたら、職場改善のために取り組むことを計画していきます。企業の課題により、どのような施策を行うかは変わってきます。

健康経営の計画を作成する

健康経営の計画は施策の内容だけではなく、目標の数値を具体的に決めておき、効果検証ができるようにしておきましょう。また、従業員が積極的に参加してくれるかも踏まえて計画を練ると上手くいきやすいです。

健康経営の推進を周知する

健康経営の計画を立てられたら、推進を周知させていきましょう。健康経営の推進を周知する場合は、経営者が本気で取り組みたい姿勢を見せることが大切です。経営者の真摯の姿勢と熱意が伝われば、社内全体に健康経営が浸透します。
社内に健康経営の周知ができたら、プレリリースを活用して社外の人にも周知させましょう。プレリリースは定期的に出して、具体的に取り組んでいることを伝えられれば企業イメージを上げていけます。

健康経営の施策の効果検証をする

健康経営は推進した後の効果検証も必要です。従業員の健康に関するデータや休職者や退職者の増減データから、施策の効果があったかどうかを判断していきます。
効果検証を行う場合は、データ集計やデータ分析が簡単にできるサーベイツールを導入しましょう。サーベイツールを導入して効果を数値化できれば、施策が有効的であったか判断できます。

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健康経営優良法人の取り組み事例

健康経営の推進を行うために、健康経営優良法人の取り組み事例を参考に見ておきましょう。ここでは、健康経営優良法人に表彰された企業の取り組み事例をご紹介します。

豊島株式会社

豊島株式会社は180年以上の歴史を持つファッション事業会社です。同社は「時代から求められる企業であり続ける」という企業理念を掲げて、2017年に健康経営宣言をしました。その宣言通り、従業員が安心安全に働ける職場環境の整備に努めています。
健康診断や保健指導を行ったり、健康アプリを提供したりなど、心身の不調に陥らないように配慮されています。また、心身の不調を感じたら、1人で悩みを抱えないように相談窓口が設けられているため、従業員は安心して働けるのです。このような職場環境の整備が高く評価されています。

コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタ株式会社は、複合機などITソリューションを販売している企業です。5年連続で健康経営銘柄に選定されています。同社は。健康経営の推進が企業の持続的な成長につながると考えています。健康中期計画「Happiness Company2022」を策定して、明確な目標数字を掲げて健康経営を推進しているのです。
主な取り組みは、年2回ストレスチェックを実施して、その結果を各部署の管理職にフィードバックをしています。各職場のストレス状況と組織活性度を把握して、職場を改善しています。 新型コロナウイルス感染拡大した際には、自宅で手軽にできるフィットネス動画を提供したり、参加型のオンラインウォーキングを開催したりなど従業員の健康維持に取り組みました。このような取り組みが、高く評価されています。

株式会社アロー

株式会社アローは、理学療法士の資格を保有したスタッフによるパーソナルトレーニングサービスを提供している会社です。パーソナルトレーニングをはじめ、訪問リハビリテーションや刑務所の受刑者に対する運動指導など、さまざまな取り組みを行っています。
同社は「性別に関わらず働きやすい会社にする」という健康経営の目標を掲げており、男性スタッフ向けに生理に関する勉強会が実施しています。
生理は働く上で大きな負担となりますが、周囲が理解を示すことで働きやすい職場が実現できるのです。同社は年2回アンケートを実施していますが、勉強会を実施したことにより「働きやすい職場だ」と回答した女性社員が50%から90%に増やすことに成功しました。

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まとめ

今回は健康経営について解説しました。健康経営が評価されれば企業イメージが上がります。従業員のモチベーションが上がり生産性向上が見込めるだけでなく、資金調達がしやすくなったり、優秀な人材を採用しやすくなったりします。さまざまな効果が見込めるため、これを機会に健康経営に取り組んでみてください。

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