日本は少子高齢化で深刻な労働者不足の問題に陥っています。そのため、社員の定着率を高める取り組みが各企業で行われています。その取り組みの中でも、社員の自社に対する愛着を高められる方法だと注目を浴びているのが「eNPS」です。このeNPSとは何なのでしょうか?eNPSを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
今回は、eNPSについて詳しく解説します。ぜひ、社員の定着率の向上やリファラル採用を検討している方は、この記事を参考にしてみてください。
-eNPS は「親しい友人に職場をどのぐらい推奨したいか」を数値化したもの
-eNPSの数値は「推奨者―批判者」で算出できる
-eNPSは離職率の改善やリファラル採用の促進に効果を発揮する
-eNPSを導入する場合は、正しい手順に沿って行うことが大切
-eNPSを高めるために、ワークエンゲージメントを高める必要がある
-eNPS調査はデジタルツールを活用することで効率化できる
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【こんな方におすすめ】
eNPSとは、Employee Net Promoter Scoreの略称で「親しい友人に勤務先の職場を、どのぐらい推奨したいか」と質問して、職場の推奨度を数値化したものです。
顧客向けにNPS調査(Net Promoter Score)を行っていたApple社が、従業員のエンゲージメントを数値化するための指標として転用したことで誕生しました。
eNPSの調査方法は、以下の手順で行います。
【eNPSの調査方法】
1.「勤務先の職場を勧めたいと思いますか?」などの質問を投げる
2.質問に対して0~10点の11段階で点数を付けてもらう
3.総合点数で「推奨者(9点~10点)」「中立者(7点~8点)」「批判者(0点から6点)」を分類する
4.「推奨者―批判者」でeNPSを算出する
例えば、「批判者が40%」「中立者が40%」「推奨者が20%」の場合は、「20%―40%=NPS-20%」となります。
eNPSとNPSは、調査の対象が違います。eNPSは、従業員に対して「親しい友人に勤務先の職場を、どのぐらい推奨したいか」を数値化したものです。eNPSは従業員のエンゲージメントを調査するために測定します。
その一方で、NPS(Net Promoter Score)は「親しい友人に自社のブランドを、どのぐらい推奨したいか」を数値化したものです。NPSは顧客のエンゲージメントを調査するために測定します。
NPS調査をしていたApple社が、従業員を対象に調査し始めたことによりeNPSが誕生しました。そのため、eNPSはNPSから派生したものと言えます 。
eNPSとES(従業員満足度)は、質問内容が違います。eNPSとESは似ているため、同じように扱わないように注意しましょう。
eNPSは「親しい友人に勤務先の職場を、どのぐらい推奨したいか」と質問します。その一方で、ESは「現在の職場にどれだけ満足していますか」と質問していきます。
eNPS調査では、親しい友人に推奨したいかどうかを問うため、高得点を付ける心理ハードルがES調査よりも重くなります。 そのため、eNPS調査を行えば、現在の職場環境を正確に把握していけるのです。
職場の推奨度を数値化するeNPSを導入するメリットは、以下の通りです。
1.離職率を改善できる
2.リファラル採用が促進できる
3.生産性を上げられる
ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
eNPS調査を行い、「批判者」「中立者」「推奨者」の割合や不満点を調べ、職場環境の改善に取り組んでいけば離職率を改善できます。
パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」では、2030年には644万人の労働者が不足すると述べられています。労働者不足は深刻な問題となっており、求人を出しても良い人材が採用できなくなりました。そのため、社員に長く勤めてもらうために、職場改善をしていく必要があるのです。
eNPS調査では「親しい友人に職場を奨めたいと思うか」と質問するため、従業員にリファラル採用を意識付けられます。 そのため、リファラル採用を促進したい企業におすすめです。
リファラル採用とは、信頼できる社員から友人や知人を紹介してもらう採用方法をいいます。企業について深く理解している社員からの紹介のため、企業と求職者のマッチング率が高いです。それだけでなく、採用後のミスマッチも起きないため、長期的に働いてもらえます。
また、リファラル採用は求人広告を出す必要がありません。求人広告にかける採用コストが削減できるため、費用対効果の高い採用方法として注目を浴びています。
欧米ではリファラル採用をしている企業が多いです。日本でも大手企業を中心にリファラル採用が始まっています。そのため、リファラル採用を導入して促進したい企業はeNPS調査を定期的に行うようにしましょう。
eNPS調査を行って職場への不満点を改善していけば、社員のモチベーションを上げられます。 高いモチベーションの社員は前向きに業務に取り組んでくれます。また、従業員満足度の高い職場は、チームメンバーの信頼関係が構築できているため、報告・連絡・相談がスムーズにでき、業務を円滑に進めていけます。
このように高いモチベーションの従業員を増やしていけば、周囲の士気も上がり、生産性を上げていけるのです。
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eNPSを調査して職場環境を改善する手順は、以下の通りです。
ここでは、各手順について詳しく解説します。
最初にeNPS調査から職場改善策の実行まで行う専任担当者を決めてください。一般的には、社内環境の向上を目指している人事担当者が選ばれることが多いです。専任担当者を決めたら、どのような業務をすれば良いかを説明しておきましょう。
【専任担当者の業務内容】
1.eNPSの調査ツールの比較・検討
2.eNPSの質問内容を決める
3.eNPS調査のスケジュール調整
4.調査結果データの収集
5.職場改善の施策の立案
6.職場改善の施策に実行
7.予算獲得
8.役員への報告・連絡・相談
業務内容を明確に伝えておけば、専任担当者は「何から取り組めば良いか分からない」と混乱せずに済みます。専任担当者の負担が減るように、明確な指示を出すようにしましょう。
専任担当者は、スケジュールを決めてeNPS調査を行います。eNPS調査の質問項目は項目数が多いほど、詳しいデータ分析ができるようになります。 そのため「親しい友人に勤務先の職場を、どれぐらい推奨したいか?」の他にも質問を用意しておきましょう。
【質問の参考例】
Q.親しい友人に勤務先の職場を推奨したいと思っているか?
Q.仕事を上手く行うために必要な道具は提供されているか?
Q.自分の得意分野を活かしながら働けているか?
Q.1週間の内に、良い仕事をしたと認められたか?
Q.自分のキャリアアップが実現できているか?
Q.自分の意見が尊重されているか?
Q.上司や同僚が協力してくれているか?
Q.職場に親友がいるか?
Q.現在の待遇に満足しているか?
Q.正当な人事評価がされているか?
eNPS調査結果を収集して、同業他社のeNPSの平均スコアと比較すれば、職場に対する満足度が高いのか低いのかが判断できます。 同じ業界のeNPSの平均スコアより低い場合は、どのような部分が不満につながっているかを見つけて、職場改善をしていきましょう。
eNPS調査結果を分析して最適な職場環境の施策を立案していきましょう。最適な施策は企業の状況に応じて異なりますが、以下のようなものが挙げられます。
職場改善の施策を立案したら、実行に移します。この施策は実行したら終わりにせず、効果の検証をしましょう。再び、eNPS調査を行って、前回より数値が上がっているか効果検証することが大切です。
eNPSの数値が上がっている場合は、職場改善ができている証拠です。一方で、eNPSの数値が変わらない場合は職場改善の施策が効果的ではないことを示しているため、違い施策を考えましょう。このように効果・検証して職場環境を改善していくことが大切です。
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eNPS調査しても、数値が高いのか低いのか把握できなければ意味がありません。そのため、eNPsの平均スコアを把握しておきましょう。
国内企業のeNPSの平均スコアは-61.1% です。しかし、eNPSの平均スコアは業界によって、変動するため該当する数値を確認しておきましょう。
■業界別のeNPS
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eNPSの数値は職場環境やワークエンゲージメントに応じて変動します。株式会社ビービッドの独自調査では、eNPSに影響を与える要因が紹介されています。eNPS調査結果を見て、職場改善の施策を立案するときの参考になるため、eNPSの数値に影響を与える要因を把握しておきましょう。
正当な報酬を得られているかは、eNPS調査の数値に影響を与えます。同調査では、正当な報酬を得られていると感じている方は、eNPSが17%となりました。その一方で、正当な報酬を受けられていないと感じている方はeNPSがマイナスに転換してしまったのです。
正当な報酬は生活する上で必要不可欠なものだけではなく、自分の働き方に対する評価でもあります。そのため、正当な報酬を得られているかどうかは、会社に対する信頼度に影響を与えることになります。そのため、eNPS調査の数値に影響が出るのです。
正当な評価が得られているかも、eNPS調査の数値に影響を与えます。正当な評価を受けられていると感じている方は、eNPSがプラスになります。その一方で、正当な評価が受けられていないと感じている方はeNPSがマイナスに転換してしまうのです。
自分の働き方に対する評価は正当なものでなければ、会社に対する信頼度が下がります。 そのため、正当な評価が得られているかが、eNPS調査の数値に影響するのです。
仕事を通じて顧客に貢献できているかも、eNPS調査の数値に影響を与えます。
顧客に貢献ができていると感じている方は、eNPSの数値が高くなります。その一方で、顧客に貢献ができていないと感じている方はeNPSが低いです。
その理由は、ノルマが大変だったり、業務量が多かったりして、仕事の本来の意義を見失っていることが主な原因です。 また、誰かの役に立っていないと感じると、仕事から得られる幸福感が薄れてしまいます。そのため、仕事を通じて顧客に貢献できているかもeNPSの数値に影響を与える要因となるのです。
長時間労働は職場環境の改善点として挙げられることが多いですが、eNPSに影響しません。平均労働時間別にeNPSを集計した結果は以下の通りです。
【一日あたりの平均労働時間別eNPS】
5時間~9時間未満:-60.4%
9時間~12時間未満:-60.4%
13時間~15時間未満:-78.1%
15時間以上:-66.6%
【出典】:株式会社ビービッド「eNPSは何によって上がるのか-16業界eNPS調査結果(2017)」
この結果から、長時間労働は良いとは言えませんが、労働時間がeNPSの数値を下げている要因ではないことが分かります。
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eNPSと深く関係するものとして、ワークエンゲージメントがあります。ワークエンゲージメントとは、仕事に対するポジティブな心理状態をいいます。 ポジティブな心理状態の社員は、親しい友人に勤務先の職場を積極的に推奨してくれるため、ワークエンゲージメントの高め方を覚えておきましょう。
適材適所の人事配置が必要だと言われるように、社員が自分の強みを発揮しながら働ける環境を整えることが大切です。その理由は、自分の強みを発揮しながら働ける環境だと自信が湧き、主体的に働けるようになるためです。
働くことに意義を感じる社員が増えれば、親しい友人にも勤務先を推奨したいと思うためeNPSを上がります。そのため、ジョブローテーションを実施するなどして、どのような職務が向いているのかを一緒に見つけてあげましょう。
職場の人間関係が悪ければ、「報告」「連絡」「相談」がしにくくなり、業務を円滑に進められなくなります。このような状態で仕事をすると、社員に心理的な負荷が掛かり、ワークエンゲージメントが上がりません。 そのため、職場の人間関係は良好にしましょう。職場の人間関係を改善するためには、交流できるイベントを提供したり、気兼ねなく悩みを相談できる仕組みを整えたりする方法があります。
勤務時間中に、業務に集中することは簡単なことではありません。業務に集中するためには、メリハリを付けながら仕事に取り組む必要があります。そのため、社員がオン・オフのメリハリが付けられるように、リフレッシュスペースを用意しましょう。
オシャレで快適なリフレッシュスペースを用意すれば、業務に集中してもらえるだけでなく、「社員のために職場環境を整備してくれている」と愛着を高められます。素敵なオフィスの社員であることに誇りを持ちながら働けば、ワークエンゲージメントが高まります。
社員が働きやすいように仕事の資源を与えると、ワークエンゲージメントを高められます。その理由は、仕事の資源を与えると、業務負担が減らせたり、従業員のモチベーションを上げられたりするためです。仕事の資源には、以下のようなものがあります。
【仕事の資源の例】
●上司や同僚のサポート
●仕事に対するフィードバック
●トレーニングの機会
●コーチングの機会
社員が仕事しやすい環境を考え、与えられる資源を用意しましょう。
eNPS調査など、従業員を対象に実施する従業員サーベイをデジタルツールで行う企業が増えてきています。デジタルツールを導入すれば、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、従業員サーベイをデジタルツールで行うメリットをご紹介します。
eNPS調査をデジタルツールで行えば、従業員に調査する手間がかかります。その理由は、アンケート調査を簡単に作成でき、従業員への通知もボタンを押すだけで済むためです。eNPS調査をして職場環境を改善したくても、導入する上で業務負荷がかかると悩む企業が多いです。このような悩みは、eNPS調査をデジタルツールで行うことで解決できます。
デジタルツールを活用すれば、職場環境の理想と現実の差分が把握できるようになります。 また、従業員から収集したデータを収集して、「どのような悩みを抱えているのか?」「どの従業員が不調であるか?」が可視化できます。そのため、どこから改善していくべきなのか優先順位が立てやすくなるのです。
また、職場環境の改善施策は一元管理できて、実施前と実施後でeNPSの数値がどの程度改善できたか把握しやすくなります。
従業員が職場に対する満足度に対して、質問に正直に回答するとは限りません。このような問題は従業員のチャットツールの活動をAI分析すれば解決できます。
チャットツールのテキストデータから、従業員の働きがいやストレスレベルが可視化できるのです。 デジタルツールは決められた曜日にデータを収集して結果を報告してくれます。そのため、職場環境の問題を簡単に発見でき、ワークエンゲージメントを最大化できます。
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eNPSとは「親しい友人に勤務先の職場を、どのぐらい推奨したいか」を数値化したものです。eNPS調査は、親しい友人に勤務先の職場を推奨したいか質問するため、慎重に回答してもらえます。そのため、精度の高いデータが収集できて、職場改善に役立てていけるのです。また、社員に対してリファラル採用を意識づけ、促進することもできます。
このようにeNPS調査は、さまざまな効果をもたらしてくれます。この記事では、eNPS調査から職場改善の方法まで説明しました。ぜひ、これを機会にeNPS調査を行ってみてください。
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