「ボトムアップとトップダウンの違いを詳しく知りたい」
「ボトムアップ主導で新規事業を立ち上げて大丈夫だろうか?」
このような悩みを持つ管理職の方も、多いのではないでしょうか。
結論、ボトムアップとトップダウンにはメリットやデメリットがあり、自社を取り巻く環境に応じて両立させることが可能です。そのためにも自社の現状を把握することが大切なのです。
この記事では、ボトムアップとトップダウンについて詳しく解説します。ぜひ、組織を最適化する参考にしてください。
【主なトピック】
【こんな方におすすめ】
ボトムアップとは、下からの意見を吸い上げて、全体をまとめていく管理方式です。
したがってボトムアップ型の組織とは、現場の担当者が意見や提案をして、経営陣が承認することによって意思決定する組織になります。
トップダウンとは上が意思決定して、その実行を下に指示する管理方式です。
トップダウンの組織とは、上層部の意思決定に従って現場が実行する組織で、「上位下達」とも呼ばれています。
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ボトムアップな組織を目指している管理職の人も、まずはメリットとデメリットを事前に理解する必要があります。ボトムアップのメリットとデメリットについて、それぞれ見ていきましょう。
まずは、ボトムアップの3つのメリットから見ていきます。
ボトムアップのメリットは、現場の声が組織の意思決定に反映されやすいことです。
日頃から接している顧客の声を吸い上げ社内にフィードバックすることで、顧客の不満や不便の解消につなげていきます。
現場の声を反映させるときは、以下の点を意識すると良いでしょう。
ボトムアップ型の組織では、現場の声が組織の意思決定を左右することもあります。したがって、現場力が高い組織ほどボトムアップが機能するのです。
自発的な人材が育ちやすいのも、メリットに挙げられます。
自らの提案が組織の意思決定に影響するかもしれない環境では、組織全体のことを「自分ごと」としてとらえるようになるからです。
現場のビジネスパーソンに対して、「自分ごと」化させる際のポイントは以下の通りです。
管理職の関わり方次第では、組織について「自分ごと」化できる自発的人材が増え、組織が活性化されます。
社員のモチベーションがあがりやすいのも、ボトムアップのメリットです。
組織の意思決定に参画していることを実感でき、自分を承認してくれていると感じます。
例えばコールセンターのオペレーターが、顧客からの声を整理して上司にあげたところ、社内の大きな改革につながったとしたらどうでしょう?きっとモチベーションが上がり、さらに顧客満足に向けて日々仕事に取り組めるはずです。
次に、ボトムアップのデメリット3つについて見ていきます。
ボトムアップの組織では、意思決定にどうしても時間がかかってしまいます。
現場と上層部で、提案や承認のコンセンサスを得てからでしか実行できないからです。
意思決定が遅い組織には、以下のような特徴があります。
現場の意見を取りまとめたり、各部署に根回ししたりなどの工程を経るため、必要以上に時間がかかってしまうのです。
現場目線のボトムアップでは、自部門だけの視点に偏ってしまいがちになります。
現場は「虫の目」で、身の回りはよく見えるのですが、「鳥の目」で組織全体を見渡せません。
本来であれば全体像を把握し、どこの要素に問題があるのかを見極めます。例えば利益率が下がっていれば、まずは売上と経費を構成する要素に分解します。すると、利益率が落ちている商品Aの販促費用が以前と変わっていないなどの問題に気づくかもしれません。
問題の要素が分かれば、商品Aの販促費を50%カットするなどの対策につなげられます。
しかし、「鳥の目」が持てない組織では、事象に振り回され問題解決のプロセスを省略してしまうので、どこに問題があるのかが分かりません。結果、いつまでたっても問題解決されず、時間だけが過ぎしまいます。
ボトムアップの組織では、どうしても現場に有能な人材が必要になります。
現場が適切に判断できなければ、組織全体が誤った方向に進んでしまう危険性があるからです。
現場力が弱い組織には、以下の点が見られます。
現場に有能な人材がいない組織は、必然的に現場力が下がってしまいます。
このような組織がボトムアップを取り入れると、組織全体が後退してしまうおそれがあるのです。
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トップダウンにはワンマンな経営者がとる手法のイメージがありますが、実際はどうでしょうか?この章では、トップダウンのメリットとデメリットについて見ていきます。
まずは、トップダウン3つのメリットを見ていきます。
トップダウン最大のメリットは、意思決定が速いことです。
管理職や現場に、コンセンサスを得る必要はありません。
ソフトバンクの孫正義氏や、キーエンスの滝崎武光氏をイメージすると分かりやすいでしょう。両氏とも意思決定にスピード感を持たせてイノベーションを起こし、日本企業の時価総額トップ10以内に自社を押し上げました。 実際に、トップダウンで急成長を遂げた企業は多数あり、その最大の理由が、意思決定の速さだと言えます。
トップダウンでは、トップの力量次第で急成長が期待できます。
特に創業社長の場合は、自らの経験をもとに現場の隅々まで知ったうえで経営判断しているため、経営の筋がブレたりしません。
急成長する組織のトップには、以下のような共通する点が見られます。
このようなトップが率いる組織では、トップの力量通りに急成長できるのです。
トップダウンでは、自然に統制の取れた組織になります。
トップの意向が最優先されるからです。
例えば社長が「今年は新規開拓に全社で取り組む」と言えば、営業部門はもちろん、購買部門や管理部門も新規開拓の取り組みが最優先されるのです。購買部門なら仕入先から有望なユーザー情報を聞き出したり、管理部門では銀行関係にコネがないかあたったりします。
このようにトップダウンの組織では、全員が決められた一定の方向に順応する社風が根付きやすくなります。
続いて、トップダウン3つのデメリットを見ていきます。
トップダウンの組織では、現場の思考力が停止しがちになります。
言われたことに対して忠実に実行することが正解なので、どうしても「指示待ち」になってしまうからです。指示待ち社員の口癖は、「上が決めたことなので」「上に聞かないと分からない」などで、自分の頭で考えられません。
自分で考えられない人材が増えると、組織が難局を迎えた際に打開策が見いだせなくなり、「トップ頼み」のリスクが増していきます。
トップの力量による部分が大きいので急成長が期待できる反面、トップが判断を誤ったときに受けるダメージも多大です。組織全体が指示された方向へ全力で進むため、進路変更に時間がかかってしまう、もしくは進路変更できなくなる可能性があるからです。
特に中小企業のトップに禁物なのは、根拠のない経営判断です。
資本力の乏しい中小企業ほど、経営判断の誤りは倒産の危機に直面すると自覚しなければいけません。
トップが強制力を強めるほど、現場の反発が起こりやすくなります。 上層部の指示に一貫性がなければ、実行する現場は納得できずに不満が溜まる一方です。
「世間の風潮は〇〇だけど、うちの社長が言うことは真逆だ。このままで大丈夫か?」
「従業員満足とか言っているけど、結局は自分がいい思いをしたいだけでは?」
トップの強制力が強い組織ほど、納得が得られなかったときの現場の反発は大きくなります。
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ここまで見てきたように、ボトムアップとトップダウンはどちらが正解ということはありません。組織の状況に応じて、取り入れていくべきなのです。
では、ボトムアップに適している組織とは、どのような組織なのでしょうか?2つのケースについて見ていきましょう。
成長段階で事業の多角化を検討している組織は、ボトムアップに適しています。多角化する事業すべてを、トップ1人で管理するのは不可能だからです。事業多角化を検討するタイミングで、トップからの権限委譲が起こります。
多角化経営では、権限委譲された社員は、以下のこと行います。
権限委譲されることで、社員は自分の思う通りにコントロールできる満足感と納得感を抱きながら、仕事に取り組めます。
ボトムアップは、次世代の経営人材を育成したい組織にも適しています。先述通り、ボトムアップの組織で権限委譲された社員は、自分で判断しながら経営的視点を身につけるからです。
しかし、次世代の経営人材が育っていない組織が多いのも事実で、以下の理由が考えられます。
特に事業承継に課題を抱える多くの中小企業では、次世代の経営人材の育成は最優先事項になります。
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続いて、トップダウンに適している組織について以下2つのケースを見ていきましょう。
トップの力量による部分が大きいトップダウンは、社長に先見性とカリスマ性がある組織がもっとも適しています。魅力のあるトップが行う意思決定は、加速度的に組織を成長に導くでしょう。
カリスマ経営者は、他の経営者が持たない以下の能力を兼ね備えています。
先見性とカリスマ性のある社長には、トップダウンとの相性が抜群なのです。
短期間で成長が見込めるスタートアップや、成長途中にあるベンチャー企業もトップダウンに適しているでしょう。
以下の場面では、多人数による民主主義よりも1人が独断で行うほうが最適だからです。
このように、スタートアップやベンチャー企業もトップダウンが適しているのです。
自分が働く企業を、ボトムアップな組織にしたいと考えている管理職の方も多いようです。ここでは、ボトムアップ型組織をつくるうえでの3つのポイントについてお伝えします。
1つめのポイントは、チャレンジできる環境を整備することです。
ボトムアップな組織に欠かせない自発的な社員の育成には、チャレンジできる環境が必須となります。「失敗してもOK」のスタンスを明確に示し、「チャレンジしたうえでの失敗は大丈夫」だと有能な社員を安心させなければいけません。
自発的な社員の育成に有効なのが、教育体系や研修制度の充実です。
就活ノウハウを提供するポート株式会社が実施した、「企業の働き方で魅力に感じる制度や方針」の調査では「研修制度の充実」が54.8%とトップでした。
このように教育体系や研修制度を充実させることで、チャレンジできる環境を整備し、自発的な社員の育成につなげていきます。
2つめのポイントは、現場の声を反映させる仕組みをつくることです。現場が自発的に声をあげたくても、反映させる仕組みがなければボトムアップできません。
現場の声を吸い上げるためには、以下の仕組みでトップや経営幹部が現場の本音に近づくべきです。
この時のポイントは、現場の人たちがいかに本音で語れるようになるかです。一度実施して終わりではなく、地道に継続させるべきでしょう。
トップダウンの組織では縦割りさえ機能していれば問題ありませんが、ボトムアップでは縦割りとは別に、組織に横軸を入れることが重要です。部署を横断してメンバーどうしが関わることで、自部門の役割や責任を超えた全体最適の視点が持てるようになるからです。
例えば新規市場参入のプロジェクトを発足させた場合、各部署の担当者は自部門でできることを確認しながらベクトルを合わせていきます。
このように横軸を入れることで、お互いの立場を理解しながら1つの共通目標に対して取り組んでいけます。結果、全体最適の視点を持った人材が育まれていくのです。
ここまで見てきた通り、トップダウンとボトムアップそれぞれにメリットやデメリットがあるので、どちらが良いとは一概に言えません。自社がおかれた状況や外部環境に応じて取り入れるべきでしょう。
では、トップダウンとボトムアップを両立させることは可能でしょうか。以下2つの切り口から見ていきます。
「トップダウンデモクラシー」とは、トップダウンとボトムアップを組み合わせた意思決定スタイルのことです。
上層部が変革の必要性を訴え経営課題の解決策を現場に依頼し、現場は課題解決に向けた取り組みでの気づきや意見を上層部にあげていきます。最終的には、トップが現場からあがった意見を集約して、トップダウンで意思決定します。
最後はトップが決めるのですが、一方的ではなく現場の意見や提案をふまえたうえで決めるため、納得性や透明性が高まるのが特徴です。
変化が激しい現在の環境では、トップだけで最適に判断し続けることが難しくなっています。かといって組織全員の意見を聞きながら経営していては、スピードが遅く市場の変化についていけません。
このような背景から、トップダウンとボトムアップを組み合わせた「トップダウンデモクラシー」の意思決定スタイルを取り入れる企業が増えているのです。
これまでは、新規事業形成はボトムアップ主導で行うもので、トップや幹部の積極的介入はあまり支持されませんでした。トップや幹部は革新的なアイデアに対して、リスク回避的な行動をとる傾向があるとされてきたからです。
しかしここにきて、新規事業形成には上級管理職による積極的関与が必要だという説が見直されています。立教大学助教の田中聡氏の論文では、新規事業形成における上級管理職の積極的関与の効果として、以下3つの仮説が述べられています。
「H1.ボトムアップ主導が新規事業の機会形成に与える影響は、上級管理職による積極的な関与によって調整される。
H2.組織の多様性が新規事業の機会形成に与える影響は、上級管理職による積極的な関与によって調整される。
H3.ボトムアップ主導と組織の多様性の相互作用が新規事業の機会形成に与える影響は、上級管理職の積極的な関与によって調整される。」
【引用】立教大学助教田中聡氏「新規事業の機会形成を促す上級管理職の役割」
この論文からも、ボトムアップ主導でも、トップや経営幹部の積極的な介入が不可欠であることが証明されたのです。
今回の記事では、ボトムアップとトップダウンの違いについてまとめました。ボトムアップとトップダウンはそれぞれメリットとデメリットがあり両立させることが可能なことが分かりました。
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