急激に情勢や社会を取り巻く環境が変化し続けていることで、新しい環境に適応する能力・困難を乗り越える力を表す「レジリエンス」という概念が注目されています。 本記事ではレジリエンスの定義やビジネスにおける重要性とメリット、そして従業員個人と組織全体のレジリエンスを高める方法について詳しく解説しています。
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レジリエンスとは困難から立ち直る力だと定義されていますが、具体的にどのような心理状態で発揮されるものなのでしょうか?そしてレジリエンスが注目されている背景には何があるのでしょうか?
ここではレジリエンスの詳しい定義と、なぜビジネスにおいてレジリエンスの重要性が高まっているのかということについて見ていきます。
レジリエンスとは、元々は物理の分野で使用されていた用語で、「弾性」を意味するものでしたが、
それが心理学などで応用され、
という意味を持つようになりました。一般的には、後者の意味がさまざまな分野にて広く使用されていて、
「失敗体験や逆境が起きた際にそこで諦めずに立ち直る力」であると解釈されています。
人はストレスを感じる際、それに対抗するために周囲の環境を変えたり、身近にいる人の力を借りて対処します。しかし、そのような支えを得ながらも実際にはストレスを自分で対処して克服する必要があります。
心理学においても、人がレジリエンスを発揮するのは周りの環境や人間関係によっての助けを得る場合でなく、自身でストレスに対処しようとする時であると説明されています。
近年ビジネスにおいても、企業と従業員が「レジリエンス」を高める必要があるとして注目されています。
これは、環境の変化が起きる中でレジリエンスを身につけ、
失敗を経験して底打ちした状態から立ち直って教訓化し改善することが、変化が激しく不安定な現代社会において企業として業績を残すために必要であるからです。
大企業に就職して安定した収入が約束されている終身雇用制度が崩壊しつつある中、起こりうる急な変化にいつでも対応可能であることが必要です。
ゆえに、新しい環境への適応力を高められるとしてレジリエンスの強化が注目されているのです。
さらに、現代の職場では強いストレスを感じる従業員が多く、ストレス耐性がついていないが故に早期退職してしまうという事態も頻繁に起きています。
労働人口が縮小している日本で、ストレスの不調が原因で休職・退職してしまう従業員がいることは早急に対処すべき課題だと言えるでしょう。ストレスを跳ね除ける力を持ったレジリエンスが高い従業員を育成することで従業員の離職を防ぐことができて、企業の利益にも繋がります。
このように、困難から諦めずに立ち直ることで、従業員は新しい環境への適応能力とストレス体制を高められるとして、レジリエンスが従業員に求められています。
ここまでで、レジリエンスが今企業と従業員に求められている重要な素質であることが分かりました。
実は、レジリエンスが高い人には共通する資質が備わっていることが分かっています。
ここでは、「資質的要因」として幼少期からの経験などを通して備わる資質と、トレーニングを行うことで今からでも獲得可能な「獲得的要因」を紹介します。
レジリエンスを構成する要素として何があるのか、レジリエンスが高い人に共通する資質は何なのかという疑問に対しては、2012年に心理学者の平野真理氏によって行われた調査結果から答えを得ることができます。
この調査によると、レジリエンスが高い人は行動や思考に以下3つの傾向があることが分かっています。
レジリエンスが高い人に共通するこれらの三つの要素をさらに分解すると、幼少期に形成される気質との関連が強い「資質的要因」と、トレーニングによって強化可能な「獲得的要因」に分けることができます。
【参考元】『心理的敏感さに対するレジリエンスの緩衝効果の検討』
ここでは調査によって分かった、レジリエンスが高い人に共通する資質的要因を紹介します。
レジリエンスが高い人の多くに共通する資質には、楽観性・統制力・社交性・行動力があることが分かっています。それでは、それぞれの資質について詳しく見ていきましょう。
「楽観性」
楽観的な人は自分ならできるという自己効力感が高い傾向にあり、楽観性は新しいことに物怖じせず取り組む「新奇性追求」というレジリエンスを構成する要素に関係する資質です。楽観的であることで失敗を否定的に捉えずに改善につながる行動を取れるのです。
「統制力」
統制力は、レジリエンスを構成する「感情調整」の要素に必要な資質であると言えます。
感情だけでなく、ストレスをうまくコントロールすることも、統制力として分類できるでしょう。
感情をコントロールできない人は、発生する出来事に対して一喜一憂するため、困難な状況が起きた際に打たれ弱い傾向にあります。
「社交性」
社交性の素質がある人は、初対面の他者と接すること、新しい環境や知識を得ることに抵抗がなく新しい思考や価値観に適応する能力に長けています。そのため、社交性の素質がある人は失敗した際に新しい価値観をうまく取り入れて挑戦することができる傾向にあります。
「行動力」
行動力もレジリエンスが高い人に共通する資質の一つです。レジリエンスが高い人は失敗した際に諦めずに次の改善策を模索して行動に移す能力が高い傾向にあります。
ここまででレジリエンスの高い人に共通する資質について説明しました。資質は、幼少期の習慣などから形成されるもので個人の内的要因や失敗経験に深く関わっているため、すぐに身につけることは難しいかもしれません。
しかし、実はレジリエンスは思考と行動を変えるトレーニングによって強化することが可能であると言われています。訓練を重ねることによって獲得可能な要因として、問題解決志向・自己理解・他者心理の理解の3つの要因があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
「問題解決志向」
レジリエンスが高い人の資質として、問題解決志向があることが分かっています。これは、困難な課題を解決して立ち向かう際に必要な資質であると言えます。問題解決志向は、日常的に課題に立ち向かい解決するサイクルを繰り返すことで取得可能な資質です。
「自己理解」
さらに、レジリエンスが高い人は自己理解がよくできている傾向にあるそうです。自己理解力は、自己が持つ能力や特性を認識して目標設定を行い、行動に移せる力とも言い換えられます。
「他者心理の理解」
レジリエンスの高い人は自己理解ができているだけでなく他者心理を理解できている傾向にあると言われています。他者心理を理解している人は自分にも人にも優しい傾向にあり、失敗を受け入れる力があります。
そのため、改善のための行動をスムーズに起こして回復することができるのです。
これらのレジリエンスの高さに関する要因は、日常的に思考を変える意識を持ち、行動に移すことで獲得可能です。次の項目では、従業員自身がレジリエンスを高めるための具体的思考法とマネージャーや人事が働きかけて訓練と研修を行うことで従業員のレジリエンスを高める方法について解説します。
ここでは、思考を変えることでレジリエンスを高める方法と、訓練や研修を通して従業員が努力することでレジリエンスを高める方法を説明します。
ABCDE理論という思考法と自己効力感を高める思考法を取り入れてレジリエンスを高める方法をご紹介します。
前項の説明から、レジリエンスが高い人は前向きでポジティブな考え方を持つ人が多いことがわかりました。
レジリエンスが高い人に共通するポジティブな資質を身につける際に活用できる、ABCDE理論と呼ばれる思考法をご紹介します。
そもそもABCDE理論とは何かをみていきましょう。
ABCDEはそれぞれ、
の頭文字を取ったもので表しています。
ABCDE理論とは、出来事(A)に対しての自身の考え方(B)で行動や感情の結論(C)が決まるという「ABC理論」を、アメリカの心理学者アルバート・エリスがさらに発展させて提唱した理論です。
ABCDE理論では、出来事(A)に対してネガティブで非生産的な考え方(B)をした際にその考え方に客観的に自問して(D)より適切な効果(E)を生み出すことで、行動や感情の結論(C)を変えることができるとしています。
分かりやすく、例を挙げて見ていきましょう。
例えば、「上司に怒られた」という出来事(A)が起きたとします。それに対して「自分は何もできない」と解釈してしまうとネガティブな感情を起こしてしまい、状況を改善する行動に繋げられなくなってしまいます。
ここで一度立ち止まって、否定的な考え(B)に対して客観的に反論する(D)することが感情をコントロールしてレジリエンスを高める上で重要になります。
「自分は何もできない」と解釈するのではなくて「上司に期待されている、成長するチャンスだ」と反論して解釈を変える(D)ことで、「次に同じことを起こさないために、改善策を考えよう」という風に考えにポジティブな効果(E)がもたらされて、それに伴って「改善を重ねる」という行動(C)を起こせるようになるのです。
レジリエンスが高い人が楽観的であるのは、出来事への考え方に対して客観的に自問・反論してポジティブな捉え方に変えることができるからであると考えられます。
普段、打たれ弱くネガティブになりやすい人は、ABCDE理論を意識して出来事に対しての考え方を客観的に反論してポジティブな効果が出るように変えてみることを意識してはいかがでしょうか。
自身のレジリエンスを高めるために有効な方法の一つとして自己効力感を高めることが挙げられます。
自己効力感とは「適切な判断を下して、結果を達成するために業務を遂行する能力を自分が持っている」ことを認識する力のことを指します。
つまり、目標に対しての遂行するべき行動の主導権を自身が持っていると認識することであると言えます。
自身の業務に対して意義を見出していなかったり、目標を設定することなく上司に指示された仕事を淡々とこなす状態では自己効力感が高いとは言えないでしょう。
自己効力感が低いと、何か困難な状況が起きた際に自身で考えて改善のための行動に移すことができないためレジリエンスが低い状態であると判断されます。
それでは自己効力感を高めるためにはどのようなことを意識すればいいのでしょうか?
自己効力感を高めるポイントは日頃から成功体験を積むことが重要です。
「成功体験」というと社内で大きな業績を残したなど壮大な結果を想像される方も多いかと思いますが、必ずしも大きい成功体験である必要はありません。
重要なことは、小さなことでも自身が達成したことをきちんと認識して、自身が行ってきた行動が結果につながったということを理解することです。
具体的に、成功体験を積んでいることを意識するための習慣として、逆境を乗り越えた経験や小さくても達成したことに対して焦点を当てて日常的に振り返ることが有効です。
一日の終わりにその日を振り返って達成できたことを認識する習慣をつけることで、自己効力感を高めていきましょう。
ここまで、従業員が意識することでレジリエンスを高められる思考法を紹介しました。次に、マネージャーの働きかけで訓練や研修を実施することで従業員のレジリエンスを高める方法を紹介します。
従業員が困難な状況から立ち直ることができるようにするには、失敗を経験させて繰り返し立ち直させる「立ち直りの訓練」を行わなければなりません。
つまり、失敗を恐れない組織づくりをするために、失敗するリスクがある状況を多く経験させることがレジリエンスが高い組織を作る際に効果的であると言えます。
従業員の失敗への恐怖心を払拭し、失敗するリスクを受け入れさせる環境を作るために重要なことは、組織の心理的安全性を高めることです。なぜなら、失敗した際に誰にも否定されないという前提がある状況とない状況では、従業員の挑戦する度合いが異なるからです。
もし心理的安全性が担保されていない環境で失敗リスクのある経験を与えてしまうと、従業員は否定される恐れから、大きな挑戦を起こしにくく現状維持のための行動を取ってしまい、結局レジリエンスを高めることには繋がらないでしょう。
心理的安全性を高めることに加えて、失敗した際にケアやフォローアップを行うことも失敗させる環境を作る際に意識したいポイントです。
従業員が失敗した際に無力感を感じて次に行動を起こさないようになると、レジリエンスを高める訓練にはなりません。従業員の次の行動を促すために、従業員に失敗を受け入れさせてそこから起こせる行動は何かを考える機会を与えましょう。
心理的安全性についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
講師による講習を通して、ストレスをコントロールする方法や困難から立ち直る力について従業員に教育を行うレジリエンス研修というサービスも提供されています。プロの知見を得られるため、研修を行うことでさらに組織のレジリエンスを向上させる効果が期待できます。
ここまでで、思考をポジティブに変えることとトレーニングを行うことによってレジリエンスを高める方法を説明しました。 最後に、レジリエンスを高めることが組織、また従業員にどのようなメリットをもたらすのかをそれぞれ見ていきます。
従業員のレジリエンスが高いことは従業員自身にとってどのようなメリットがあるのか見ていきます。
レジリエンスが高い従業員はストレス耐性を身につけていて、ストレスを受けてもそれをコントロールしながら次の行動に改善することができます。
つまり、レジリエンスを身につけることで、失敗を深刻に捉えずに成長の機会として捉えて前進することができるのです。
ストレスに打たれ弱くなってしまっては従業員自身にも精神的負担がかかり、メンタルヘルスの不調を起こしてしまう可能性もあります。レジリエンスを強化することで、従業員が失敗から学ぶ姿勢を身につけられるだけでなくストレスをコントロールしてメンタルヘルス不調を防止することもできるのです。
従業員がレジリエンスを身につけることで、失敗から立ち直るための肯定的な行動を取れるようになります。これによって、ポジティブな思考が身につき、自尊心や自己効力感を形成することができます。
自尊心や自己効力感が形成されることで目標を達成するためにチャレンジを続けて業務を遂行する習慣が身につき、仕事にやりがいを見出してエンゲージメント高く働くことに繋がります。
レジリエンスの高さが従業員にもたらす効果として、新しい思考や価値観などの変化に対応する力を身につけられることが挙げられます。
従業員が困難に立ち向かい失敗した際、失敗から行動を改善するためには失敗した事象の内省・振り返りを行うことが必要です。その過程で、自身の凝り固まった固定概念を客観的に見つめる機会が生まれ、そこから新しい価値観を取り入れることが改善につながる場合もあります。
結果として、新しい思考や価値観を取り入れて改善を重ねるうちに思考が柔軟になり、さまざまな環境に適応できるようになるのです。さらに、新しい価値観を取り入れることができれば自身の創造性を高めることにもつながるでしょう。
従業員のレジリエンスを高めることで組織にもたらされるメリットとして、以下二つが挙げられます。
従業員の精神状態に配慮する健康経営においては、マネージャーが従業員へストレスチェックを行いストレスを強く感じている従業員にケアを施す、後処理的な対応が多いのが現状です。
しかし、事前にレジリエンスの高い従業員を育成することでメンタルヘルスの自己管理とセルフケアにもつながるため、健康経営をより効率的に行えるようになるのです。
さらに、従業員がレジリエンスを高めてストレス耐性を身につけることで、過度なストレスを感じずにエンゲージメントが高い状態で業務に取り掛かれるようになります。
前述したようにエンゲージメントが高い状態の従業員は、仕事に対して働きがいを見出しやすくなるため、健康経営が行えるだけでなく従業員の会社への貢献度を高めることにも繋がります。
レジリエンスが高い組織は失敗を経験した際に回復してより良い状態を作れることに加えて、目標を達成するために常に成長し続ける姿勢が備わっています。
さらに問題を改善するまでの執行スピードが早いためにリスク対応力と危機管理能力に長けているとして投資家の評価を得ることができます。
ここまでで、レジリエンスが高いことによるメリットをご紹介しました。
企業がレジリエンスに注目している理由としては、
上記のお悩みがある方は、welldayの導入がおすすめです。
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従業員が実際にストレス耐性とエンゲージメントが高い状態、つまりレジリエントな状態で働けているのかを適切に把握できていない企業も少なくないのではないでしょうか。
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今回の記事では、
レジリエンスとは、失敗体験や逆境に置かれた際にそこで諦めずに立ち直る力を意味する。
ということが分かりました。 「wellday」にご興味がある方は気軽にお問い合わせください。担当者が丁寧に対応いたします。