相手の話を聞くときは、コミュニケーション技法「アクティブリスニング」を取り入れましょう。
アクティブリスニングを行うと、相手と信頼関係ができて良好な人間関係を維持できます。相手と良好な関係を築ければ、連絡・報告・相談がしやすくなり業務が捗るはずです。
この記事では、アクティブリスニングの基本知識から実践方法まで解説します。相手の話を聞く機会が頻繁にある管理職やリーダーの方は、ぜひ、この記事を参考にしてみてください。
アクティブリスニングとは、傾聴するためのコミュニケーション技法です。
傾聴とは、相手の話に対して耳を傾けて、内容の真意をハッキリさせながら理解を示すことをいいます。相手から話を引き出すための聞き方です。そのため、上司が部下の悩みを聞く場面などに活用されます。
アクティブリスニングを活用すると、話し手が「シッカリと話を聞いてくれている人だ」と安心感を抱けるため、信頼関係が構築しやすくなります。相手との信頼を深める聞き方のため、管理職やリーダーの立場に求められるスキルとして、アクティブリスニングが注目を浴びるようになりました。
アクティブリスニングの提唱者は、米国の臨床心理学者カール・ロジャース氏です。彼が1940年代に発表した心理療法では「相手の話を傾聴して、内容の意図をはっきりさせていけば、アドバイスしなくても自分自身で問題を解決していける。」と述べられています。
カウンセンリングで使われていたコミュニケーションを技法ですが、ビジネスシーンでもアクティブリスニングは有効であると考えられて用いられるようになってきました。
アクティブリスニングが注目を浴びている理由は、マネジメント能力に必須の「傾聴力」と「質問能力」が高められるためです。マネジメント能力として幅広いスキルが求められますが、その中でも重要なスキルは「傾聴力」「質問能力」「フィードバック能力」「信頼関係の構築力」です。
上司は部下と信頼関係を築き、円滑に業務を進めていくためにも、これらのスキルを身に付けていかなければいけません。このような理由から、管理職やリーダー向けのアクティブリスニング研修が登場してきました。
アクティブリスニングを行うと、4つの効果が期待できます。
1.良好な人間関係を築ける
2.コミュニケーションを活性化できる
3.ハラスメントの防止ができる
4.社員の問題解決力を養える
ここでは、それぞれの効果について詳しく解説します。
相手の話を傾聴すれば、「私の意見をシッカリと聞いてくれている相手だ」と感じて信頼関係が深まり、良好な人間関係が築けます。
話し手は、自分の話を真剣に聞いてくれている相手に安心感を抱き、聞き手は相手の問題解決の役に立てたという達成感を抱けます。双方にプラスの心理的作用をもたらすので、本音で語れる良好な人間関係を築けるのです。
良好な人間関係を築いていけば、わだかまりが解消できて、風通しの良い職場が作れます。
アクティブリスニングは、コミュニケーションの活性化にも役立ちます。その理由は、聞き手が話を引き出すように傾聴するため、物事を伝えることが苦手な人でも話しやすくなるためです。
また、自分の話を軽く受け流さずに、真剣に聞いてくれている姿勢に安心感が芽生えて話をしたくなります。
アクティブリスニングを継続していくと、職場の人に対する信頼度が増していきます。その結果、社員が自分自身の意見を言えるようになっていき、会議で意見が飛び交うようになるのです。
アクティブリスニングは、ハラスメント防止に効果を発揮します。その理由は、相手の話を傾聴することにより信頼関係が築けるためです。上司と部下の人間関係が良好だと、ハラスメントは起きにくくなります。
例えば、部下の成長のためにアドバイスをした場合でも、信頼関係が構築できていないと否定的に捉えられてしまうかもしれません。その一方で、信頼関係が構築できていれば、厳しい意見でも肯定的に捉えてもらいやすくなります。
セクラハやパワハラの問題が横行している現代では、ハラスメントの防止は必須です。そのため、部下と信頼関係を構築してハラスメントの問題が発生しないように気をつけましょう。
相手の話を傾聴すると、話し手の問題解決力が養えます。その理由は、第三者に話を聞いてもらうことで、状況を正確に把握できたり問題の本質を見抜けたりするためです。
問題の本質に気付くことができれば、どのように対処していけば良いのか、適切な判断が下せるようになります。そのため、アクティブリスニングを行う場合は、話し手が抱える問題の原因を見つけられるようにサポートしましょう。
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相手の話は、どのような内容でも肯定的に受け止めてください。肯定的に受け止める姿勢を示すことで、話し手は「自分の気持ちを大切にしてくれている」と安心感を抱け、正直に話そうという気持ちが湧いてきます。
相手の話を否定的に受け止めてしまうと、本音を引き出せなくなります。また、相手との信頼関係も悪化してしまうでしょう。そのため、相手と信頼関係を築いて、本音を引き出すためにも肯定的に受け止める心構えを持ちましょう。
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アクティブリスニングの心構えを持ったら、次は実践方法を身に付けていきます。実践するためには、「バーバルコミュニケーション」と「ノンバーバルコミュニケーション」のコツを押さえる必要があります。
バーバルコミュニケーションとは、言葉や文字で伝達を行うコミュニケーション技法です。ここでは、バーバルコミュニケーションのコツをご紹介します。
相手の話を聞くときは、喜怒哀楽の感情に寄り添って共感するように努めましょう。その理由は、相手との信頼関係を深め、良好な人間関係を築くために共感が必要だからです。そのため、相手の話を聞くときは「大変だったね」「良かったね」と、相手が抱く感情に寄り添いながら共感を示しましょう。
【具体例】
A:「午前中に初受注を取りました!本当に嬉しくて、泣きそうでしたよ!」
B:「初受注おめでとう!初めての受注は嬉しいよね。私も初受注のときには泣きそうだったよ!」
相手の話を聞くときには、適度に相槌を打つようにしましょう。どのような気持ちで話を聞いているのか相槌で示せます。また、適切な相槌をすれば「私の話を理解してくれる」と感じてもらえます。
相槌には「そうですね」「なるほどですね」以外にも、「つまり、〇〇ということでしょうか」と内容をまとめたものもあります。このような相槌をすれば、相手の話と理解した内容の違いがあった場合に気づけます。適切な相槌は、相手に好印象を与えられるため身に付けておきましょう。
【具体例】
A:「〇〇のプレゼンの資料には、成功事例を入れておくと良いよ。」
B:「いいこと聞いたなぁ。Aさんの話は勉強になりますね。」
相手の話を繰り返し話す「オウム返し」というコミュニケーション技法があります。オウム返しは、相手の話を繰り返すだけなので、非常に簡単です。どのような場面でも使えて、相手の話の意図がずれることもありません。
相手の話を真剣に聞いていることを伝えられます。それだけでなく、聞き手も話の内容を理解できる効果が得られます。相手から信頼を得るために、オウム返しを活用しましょう。
【具体例】
A:「先週、大阪へ出張に行ってきたんだよね。」
B:「出張お疲れさま。大阪か~。」
A:「そうそう。大阪のA社の商談が上手くいったよ。」
相手の話を聞くときは、話が途切れないように質問することも大切です。相手に質問をするときは、オープン・クエスチョン(はい・いいえで回答できない質問)を活用して、会話が続くよう深堀りしましょう。オープン・クエスチョンは5W2Hを活用すると、会話が続きやすくなります。
【具体例】
A:「同期の〇〇さんと口論になっちゃったんだけど、どうすればいいと思う」
B:「そうなんだ。全然気づかなかったよ。何が原因だったの?」
A:「〇〇さんと仕事の進め方の件で、対立をしちゃったんだよね」
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ノンバーバルコミュニケーションとは、態度や表情など言葉以外で行うコミュニケーション技法です。アクティブリスニングを行うために、ノンバーバルコミュニケーションのコツも押さえておきましょう。
相手の話を聞くときは、興味があることを示すために、前のめりの姿勢を取りましょう。相手の話を聞く姿勢は真剣度を表せます。
例えば、腕組みや反り返りなどの威圧的な態度を取ると、相手を拒絶している印象を与えてしまいかねません。また、頬杖を突いたり貧乏ゆすりしたりするのも原因となります。このような態度はマナー違反で、相手に不快感を与えてしまいます。
相手と信頼関係を築くためにも、話を聞くときの姿勢に注意してください。
相手の話を聞くときは、話し手の方向を見るようにしましょう。その理由は、視線を相手に向けることで、シッカリと話を聞いていることを示せるためです。そのため、相手の正面または斜め正面に座り、お互いの顔を見ながら会話をしましょう。
しかし、視線が合い過ぎると相手に緊張感を与えてしまいます。また、視線が合わないと相手に不信感を抱かれてしまうかもしれません。そのため、適度にアイコンタクトを取るように意識してみてください。
相手の気持ちに寄り添った表情づくりも、アクティブリスティングに必要です。相手の気持ちに共感していることを表情で伝えてあげると、信頼関係が築きやすくなります。
例えば、相手が悲しい話をしているときは、悲しい表情で話を聞いてあげると信頼を得られるでしょう。相手が悲しい話をしているときに、笑みを浮かべていたら信頼は得られません。このように、表情づくりは信頼関係を構築する上で重要な要素となるため意識するようにしましょう。
アクティブリスニングを行うときは、声のトーンを意識しましょう。その理由は、声のトーンで相手に与える印象が変わってくるためです。
声のトーンを高くすると、明るさや元気さを演出できて爽やかなイメージが与えられます。その一方で、声のトーンを低くすると落ち着いた印象が与えられます。相手が真剣に話したいと思っている場合には、低めのトーンで話すようにしましょう。
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アクティブリスニングの身に付けるには、「社内トレーニングを実施する」「アクティブリスニング研修を受ける」「本を読む」の3つの方法があります。
傾聴力を上げるために自主トレーニングを促せばコストがかかりません。職場で自主トレーニングを促す場合は、効果を出すためにも正しい手順を教えましょう。
<自主トレーニングの手順>
1.相手の話を聞く態度と姿勢を意識する
2.価値観の違いを否定しない
3.共通点を見つけて肯定する
4.沈黙を怖がらない
5.自己開示をして相手にも話をしてもらう
6.相手の話をオウム返しして共感を示す
7.相手の話をまとめて要約する
8.相手の気持ちになり物事を考える
9.答やすい質問をして話を掘り下げる
人材育成支援企業などで提供しているアクティブリスニング研修を受講すれば、アクティブリスニングが習得できます。研修のメリットは、講師や他の参加者から刺激が受けられて、インプットとアウトプットの時間を設けられることです。
実践に役立つ技術を学びながら、分からない部分は講師からフィードバックがもらえます。そのため、確実にアクティブリスニングを習得していけます。しかし、他の勉強方法より費用がかかります。
アクティブリスニング関連書籍を読めば、気軽にアクティブリスニングが勉強できます。書籍のメリットは、気軽に勉強が始められることです。しかし、書籍の場合は、自分の知識に合っていない表現が出てくると理解ができなくなります。無意識に読み飛ばしてしまったり、眠くなってしまったりするかもしれません。関連書籍での気づきは本人の知識のレベルに左右される傾向があります。
<おすすめの書籍>
・プロカウンセラーの聞く技術(著者:東山紘久 / 出版社:創元社)
・傾聴のコツ(著者:金田 諦應 / 出版社:三笠書房)
・自己満足ではない「徹底的に聞く」技術(著者:赤羽雄ニ / 出版社:日本実業出版社)
今回はアクティブリスニングについて説明しました。アクティブリスニングで重要な心構えや、言語や表情を身に付けておけば、相手から本音を引き出せて悩みを解決してあげられます。アクティブリスニングは、良好な人関係に欠かせないコミュニケーション技法です。
この記事では、アクティブリスニングのやり方をご紹介したので、ぜひ、これを機会に実践に活かしてみてください。
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