人事用語で「現在企業に所属している社員を確保するための施策」を意味する言葉にリテンションというものがあります。
労働に関する価値観の変容が起きていたり人材の流動が激化したりしている近年の状況において、社員を流出させない施策を行うことが企業にとっての重要な経営課題になっています。
本記事では、リテンションの意味や、リテンションの2つの要素、人材確保に効果のある具体的な取り組み例を紹介します。
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リテンションとは、英語で「保持・維持」の意味を持つ言葉で、主にマーケティングと人事の分野で使用されています。マーケティングで使用されるリテンションとは、「既存顧客との関係性を維持する施策」のことを指しています。一方で人事用語としてのリテンションは「企業内の優秀な社員を定着させるためのさまざまな施策」のことを表しています。
一般的に、退職者が出ることで採用コストの増加や機密情報の漏洩リスクなど多くの損失が発生するため、企業は積極的な取り組みを行うことで優秀な人材を確保する必要があり、リテンションが注目されています。
厚生労働省の雇用動向調査結果によれば、契約期間の満了を除いて最も多い転職理由は「収入」「人間関係」「労働時間などの労働条件」に関わっていることが分かっています。
リテンション強化によってこれらそれぞれの課題にアプローチすることが可能なため、人事担当者はリテンションに対する理解を深めておく必要があります。
【参考元】厚生労働省, 雇用動向調査
近年リテンションが注目を集めている社会的背景には以下の2つがあります。
日本では、リーマンショック以降一時期転職者は減少していたものの、2013年以降は転職者が年々増加傾向にあり、2019年には過去最多の351万人を記録しています。
転職理由として、事業不振などの「会社都合」よりも、経済状況に関わらず「より良い条件の仕事を探すこと」を目的とした転職者が2013年から2019年にかけて増加しているようです。
さらに、PRTimesの「ウィズコロナ時代の転職」に関する意識調査の結果によると、新型コロナウイルスの拡大によって、「柔軟な働き方が推進されていない」や「自分を見つめ直して、より注力したいことに時間を使いたいと思うようになった」などを理由に転職意欲が高まった人は57%にものぼります。これらのことから、パンデミックによる社会変化も影響して一つの会社に固執することなく転職する労働者が増加する可能性が予想できます。転職者が増加傾向の中、自社の社員の転職を防ぐためにもリテンションの強化が叫ばれているのです。
日本で、団塊世代に次いで人口が多い世代が第二次ベビーブーム時の1971年~74年に生まれた「団塊ジュニア」と呼ばれる世代です。現在、この団塊ジュニアの世代が2021年に50代に差し掛かり、退職者が増加することが危惧されています。人口が多いこの世代が多く退職することによって人材の流動はさらに進む可能性があり、この世代から受け継がれた知識やノウハウを在職中の社員が新入社員に定着させる必要があります。人口が多い世代の退職が今後見込まれることからも、知識やノウハウを定着させるためにリテンションの強化によって現在の社員を確保しておく必要があります。
【参考元】
PRTimes,「ウィズコロナ時代の転職」に関する意識調査
総務省統計局, 「増加傾向が続く転職者の状況〜2019年の転職者は過去最多〜」
リテンションの強化で人材確保施策を実施することには、優秀な社員を定着させる以外に以下のメリットがあります。
退職者が出ると新しく人材を採用する必要があり、求人広告費などの採用費用に加えて採用後の教育に必要な人件費など多大なコストがかかります。
リクルートの「就職白書2019」によると、2018年度一人当たりの平均採用コストは新卒採用で72.6万円、中途採用で84.8万円であることが分かっています。
離職率が高い企業では、社員が退職する度にこれらの採用コストが発生し、本来リテンションを強化していれば必要のなかったコストがかかることになります。
リテンションを強化して社員の退職を防げると、人材を補完する必要が無いため採用コストの節約につながるのです。
【参考元】リクルート, 「就職白書2019」
社員が退職すると、せっかく定着させた知識やノウハウが会社に蓄積されずにそのまま流出してしまうことになります。加えてその社員の代わりとなる新入社員に再度教育を行う必要があり、時間と労力が必要になるというデメリットも発生します。優秀な社員が退職してしまうとすると、その社員と同等の知識やノウハウの完全な引き継ぎができない可能性も発生するでしょう。
リテンションの強化で在職中の人材を引き止めることは、知識やノウハウが流出することを防ぎ、社員の退職によって新しく教育コストが発生することを防止するメリットがあるのです。
まず、リテンションの強化を行うことで優秀な人材を逃さずに確保して社内に長くとどめられるため、経営の安定が期待できます。社内に長く在籍する優秀な人材は、企業への帰属意識や忠誠心が強い傾向にあるので企業貢献度が高いです。
加えて、長く社内に在籍する社員ほどパフォーマンスが安定・向上することが多いことから、企業は安定したパフォーマンスで貢献してくれる人材を確保することで業績の向上が期待でき経営を安定させられるのです。
さらに、リテンションを強化することは人材の流動を防いで企業が人材不足に陥るリスクを回避させられます。
これによって企業は長期的な人事戦略や事業戦略が立てやすくなり、リテンションの強化で戦略設計の面においても安定した経営を行うことができるでしょう。
人材確保のための施策であるリテンションには、金銭的要素と非金銭的要素の2つの要素があります。
金銭的要素とは、給与など金銭的な報酬によって人材確保を図る施策で、非金銭的要素は職場環境など、金銭に関わらない要素で人材確保を図る施策のことを指します。
金銭的要素と非金銭的要素をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
社員の離職を防ぐための金銭的要素に関連する施策例として以下の2つが挙げられます。
社員の離職を防ぐために効果的な金銭的要素の施策には、まず給与体制の見直しを行うものがあります。
厚生労働省の平成30年度雇用動向調査結果によると、男性の離職理由は契約の満了に次いで「給与等収入が少なかった」ことが挙げられています。給与等収入の少なさは離職につながる大きな要因であることから給与体制の改善が離職防止に役立つことが分かります。
また、従業員が成果に見合った報酬を得られているかに着目して、評価制度を改善する必要がある場合も考えられるでしょう。具体的には、従業員の成果と連動させたインセンティブを付与するなどして社員の貢献度に対しての報酬が妥当であるように設定する手段があります。
【参考元】厚生労働省, 平成30年度雇用動向調査結果
給与体制や妥当な報酬を与えるための評価制度の他にも、福利厚生を充実させることも金銭的要素の1つに含まれます。
これらの金銭的要素のどれもが社員の生活を担保するための基盤であるので、金銭的要素への不満が発生すると社員の離職率は高くなる可能性があります。従って、社員の定着を図るには金銭的要素を満たすことが効果的な施策の一つであると言えます。
社員に妥当な給与が与えられていて、金銭的要素の改善で人材の流出が防げない場合は社員が企業に対して帰属意識を感じていないことが理由として挙げられます。この場合、非金銭要素からのアプローチで社員のエンゲージメントと貢献度を向上させる施策がより効果的です。
近年、企業が注目しているのが金銭や福利厚生以外で企業の魅力を高めることです。
なぜなら、金銭的要素を改善することで期待できる社員定着の効果は一時的であるからです。社員は一定の給与を継続的に確保できると、より働きやすい職場環境を求めるようになります。
さらに近年は社員が金銭的要素よりも職場環境や働きがいを重視する傾向が強まっており、企業は社員を確保するためにこれらの価値観の変容に沿って効果的な施策を打ち出そうとしています。
randstadの「新型コロナウイルス発生後働き手が求める意識調査」によると、勤務先を選ぶ際に働き手が求める最も重要な項目として45.5%の調査対象者が「職場環境が快適である」ことを挙げています。
また、2012年日本生産性本部の「働くことの意識」調査によると、新入社員の働く目的を調査した結果「楽しい生活をしたい」 とする労働者が2000年以降増加傾向にあり 2012年度には最も高い割合を記録しています。逆に 「経済的に豊かな生活を送りたい」とする労働者は低下傾向にあり、近年の新入社員は金銭的な豊かさよりも人生の豊かさを重視していることが分かります。
このように労働に対する価値観の変容が起きていることから、職場環境の改善やワークライフバランスの推進などの非金銭的要素が、社員が企業に求めることを満たす効果があるとして金銭的要素の施策よりも重視されています。
具体的な非金銭的要素には以下の4つがあります。
これらの要素は、意欲を持って仕事に取り組む意味を持つエンゲージメントと社員の貢献度を向上させる効果があります。しかし、実現に向けての取り組み方が分かりづらい要素でもあるので次の項目でこれらの要素のさらに具体的な取り組み例について解説します。
ここまでで人材確保施策のリテンションに含まれる2つの要素について解説しました。
給与などの金銭的報酬は確かに従業員が働く際に重視する要素の一つではありますが、金銭的報酬が一定水準保たれていると金銭的要素を改善することの人材確保への効果は一時的なものであると言われています。さらに、経済的豊かさよりも人生の豊かさを重視する社員が増加傾向にあることから、企業ではより持続的な効果があるとしてリテンションの非金銭的要素に注目していることが分かりました。
【参考元】
randstad, 「新型コロナウイルス発生後働き手が求める意識調査」
日本生産性本部, 「働くことの意識」調査
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ここでは、企業が今後長期的に人材を確保する際により効果的だと言われている非金銭的要素に着目します。
非金銭的要素から行う施策は、金銭で働きがいを与えるのではなく、職場環境の改善などを通して社員の貢献度とエンゲージメントを向上させることが共通の目的としてあります。
ここからは非金銭的要素の4つの要素をさらに細分化した具体施策をそれぞれご紹介します。
社員を定着させるためには、まず企業の基礎となる社風や文化を確立させる必要があるでしょう。社員が共感しやすい良い習慣や文化を形成することで社員の企業に対する理解が深まり、貢献度を高めることができます。具体的取り組みとして①コミュニケーションの活性化 ②経営理念の浸透があります。
社員同士で相互に感情や情報を共有し合うことで共通の目的を達成する意識が醸成されることが期待できます。
経営理念は、会社の存在意義を表す最も重要な要素です。これを社員に浸透させて共感を得ることで組織として一体感のある企業文化を醸成する効果が期待できます。
さらに詳しい取り組みについては以下の記事をご参照ください。
働きやすい職場環境を整備することの最大の目的は社員の不満を軽減させてエンゲージメントを向上させることにあります。定期的に社員の不安がどこにあるのか把握して改善を行なっていくことが重要です。具体例としては①サンクスカード ②心理的安全性を高める ③評価制度の見直しが挙げられます。
定期的に社員同士で褒め合うことで、エンゲージメントの向上が図れます。
心理的安全性の高さは社員の職場での居心地の良さに直接関係がある重要な要素であると言えます。心理的安全性を高めることは組織の活性化にも繋がるため、職場で心理的安全性が担保されているかということは定期的に確認すると良いでしょう。
社員にとって、自身の仕事量と与えられる評価が見合っていないと仕事へのエンゲージメントも低下してしまいます。結果として不当な待遇を受けているとして離職につながる可能性もあります。社員の不満を汲み取り、適切な評価を行うようにすることは社員のエンゲージメント低下を防ぐために重要な要素であると言えます。
ここで紹介した具体的施策について、さらに詳しい取り組み方法は以下の記事をご参照ください。
非金銭的要素でリテンションを強化する方法として、ワークライフバランスの推進が挙げられます。近年の新入社員の労働目的が金銭から人生の充実度に変化していることからも、ワークライフバランスの推進で仕事と生活を充実させて、社員のエンゲージメントを向上させる重要性が分かります。
ワークライフバランスの具体的施策としては主に3つ①労働時間の見直し ②多様な働き方の提案 ③休暇制度の充実があります。
仕事と生活の両方を充実させるためには労働時間を適切な長さにする必要があります。2019年の労働基準法の改正によって残業時間の上限規制がより厳しくなり、残業時間の把握や残業の抑制指導のための仕組み作りの重要性がさらに増しています。労働時間の見直しについて実際に取り組みを行なっている企業も多いかと思われますが、勤怠ツールなどを活用して効率的に取り組みを進めることがおすすめです。
企業は社員がエンゲージメント高く働くために、育児制度やフレックス・タイム制を導入して仕事と生活を両立させる支援を行う必要があります。
休暇制度を充実させることもワークライフバランスの推進において重要な施策の1つで、社員に仕事と生活に緩急をつけさせることでエンゲージメント向上を図れます。
ワークライフバランスのそれぞれの施策への取り組み方法については以下の記事をご参照ください。
最後に、非金銭的要素でリテンション強化を実施する施策として能力開発が挙げられます。社員の能力開発を行うことは社員の成長機会の創出に繋がり、働きがいを満たす要素の1つとして機能します。社員のライフスタイルに合わせたキャリア形成・スキルアップを企業がサポートすることは、社員の貢献度とエンゲージメント向上に重要であるとも言えるのです。具体的な制度や取り組みには①社内公募制度や社内FA制度 ②研修やセミナーの開催があります。
社内公募制度とは、外部からの人材を採用するのではなく企業の内部で各部署が人材を募り確保する制度のことで、社内で意欲のある人材を適所に配属することができます。
反対に社内FA制度は部署が人材を募るのではなく、社員自身がスキルを売り込んで希望する部署や職種へ異動することを指します。どちらも、社員が自身のスキルを活かしてエンゲージメント高く組織に貢献できるというメリットがあり、能力開発に効果的な制度であると言えます。
社員のスキルアップを促進するためには、研修やセミナーを開催して学習の機会を与えることも効果的な手段です。社員が業務に必要な能力を学ぶことは自身の成果向上を可能にするため、仕事により意欲的に取り組むきっかけとなります。
この項目では、リテンションにおける非金銭的要素の施策を以下の4つに分けてそれぞれの具体的な制度や取り組み例をご紹介しました。
社員の貢献度とエンゲージメントを向上させることに有効な施策であるので、組織で非金銭的要素の施策を実施できているかどうかを定期的に確認するとさらに人材確保を強化できるのではないでしょうか。
ここまででリテンションには金銭的要素と非金銭的要素があることが分かりました。その中でも非金銭的要素の施策は4つの要素に分けられ、それぞれの要素で具体的な取り組み例が数多くあります。
そのため、リテンション施策を行うにしても取り組み例が多く、人材を効果的に確保するためには何が1番効果的で何から取り組めばいいか分からないという企業も多いのではないのでしょうか。
リテンション強化に取り組む際におけるポイントは、
を行うことです。
会社内の離職率が高いという問題に対して、組織のどこに改善余地があるのか分からないまま課題に目星をつけてとりあえずリテンションを強化するために取り組むことは非効率的であると言えます。この事態を避けるには、課題把握を行い施策に優先順位をつけることが重要で、具体的にはアンケートやサーベイを用いるとよいでしょう。
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リテンションの1番の目的は現在所属している人材の確保です。人材が流出しないためには退職傾向の社員を把握することが大事ですが、退職傾向にあることを把握しても引き留めるのには手遅れな場合もあります。
従って、人材の流出を本当に防ぐためには、社員の不満が発生しないように先回りのケアを行うことが重要であると言えます。先回りのケアを行うためには社員のストレスとエンゲージメントを定期的に把握することが効果的で、社員のストレスレベルとエンゲージメントを把握するツールとしておすすめなのが「wellday」です。
本記事では、
ということが分かりました。
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